2014 Fiscal Year Annual Research Report
高CO2環境下におけるスギのCO2吸収機能および材形成へのオゾン影響の解明
Project/Area Number |
25292092
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
北尾 光俊 独立行政法人森林総合研究所, 植物生態研究領域, 室長 (60353661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飛田 博順 独立行政法人森林総合研究所, 植物生態研究領域, 主任研究員 (10353781)
矢崎 健一 独立行政法人森林総合研究所, 植物生態研究領域, 主任研究員 (30353890)
平岡 裕一郎 独立行政法人森林総合研究所, 林木育種センター, 室長 (50370862)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スギ品種 / 高CO2 / 高オゾン |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、化石燃料の消費により、大気中のCO2濃度上昇と同時に、大気汚染物質であるオゾン濃度の上昇が進行している。本課題では、野外に植栽したスギ苗木を対象として、開放型暴露施設を用いて高CO2とオゾンの複合ストレスを与え、光合成によるCO2吸収機能および材形成への影響を解明することを目的とする。 平成26年度は、開放型二酸化炭素オゾン暴露装置内に植栽したスギ6品種のクローン苗を対象として、高CO2、高オゾン環境が光合成特性と成長に及ぼす影響を調べた。高CO2処理は550ppmとなるように制御を行った。一方で、高オゾン処理については、大気オゾン濃度に対して2倍の濃度になるように制御を行った。筑波1号では光合成のポテンシャルを示すVc,max(ルビスコの最大活性)に処理による影響が見られなかったが、上都賀7号では高CO2処理によりVc,maxの有意な低下が見られた。このことは、上都賀7号において光合成のダウンレギュレーションが生じていることを意味する。高CO2・オゾンの複合ストレスがスギ品種の成長量へ与える影響を評価するために、D2H([根元径]2[樹高])を指標として用いた。生育2年目の10月の時点において、全体として、高CO2によるD2Hへの影響は認められなかったが、オゾン処理によりD2Hは増加した。各クローン毎に解析した結果、郷台1号を除く5クローンでは高オゾンによってD2Hが増加する傾向にあった。また、筑波1号のクローンでは高CO2によってD2Hが増加する傾向にあった。一方で、上都賀7号のクローンでは、高CO2・オゾンの複合ストレスにより、D2Hが低下する傾向が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、開放型二酸化炭素オゾン暴露装置内に植栽したスギ6品種のクローン苗を対象として、高CO2、高オゾン環境が光合成特性に及ぼす影響を明らかにした。平成27年度は、刈り取った苗木を対象として、乾物生産量および材形成への影響を評価することで、本課題の目的である高CO2・オゾンがスギのCO2吸収機能および材形成へ与える影響の解明が達成できると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、高CO2・オゾン環境で生育したスギ苗木について、クロロフィル蛍光反応測定により光阻害感受性を評価するとともに、スギ針葉での遺伝子発現の変化を解析する。また、苗木の刈り取り調査を行い、葉、枝、幹、根の乾物重比により光合成産物の分配の変化を調べる。幹に関しては、顕微鏡を用いた組織解剖学的手法によって主軸の構造解析を行い、材形成への影響を評価する。これらの結果を取りまとめ、高CO2とオゾンの複合ストレスがスギのCO2吸収機能および材形成に与える影響を解明する。
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Causes of Carryover |
開放型CO2・オゾン暴露装置の点検・校正費用に関して、効率的な予算執行が可能となったため当該助成金を繰り越すことができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
開放型CO2・オゾン暴露装置内の3次元オゾン濃度分布データを取得するために、オゾン濃度連続測定装置(496,800円)を購入予定である。
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