2014 Fiscal Year Annual Research Report
ナラ枯れにおける防御物質と毒素による樹木と病原菌の相互作用の解明
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25292097
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
市原 優 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, グループ長 (10353583)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山路 恵子 筑波大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (00420076)
升屋 勇人 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, チーム長 (70391183)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 林学 / 菌類 / 植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナラ類を大量に枯死させる「ナラ枯れ」は、落葉性のコナラやミズナラだけでなく、常緑のシイ、カシ類にも被害を及ぼしている。これらのブナ科樹木には病原菌の侵入によっても枯死しない樹種があり、ナラ枯れに対する抵抗性の程度に樹種間で差異がある。一方、病原菌の「ナラ菌」には同一種内の菌株によって病原力に差異がある。このような抵抗性と病原力の差異を背景として、本研究では、抵抗性に関与する防御物質と、病原力に関与する毒素の化学物質に着目して、化学物質のもつ病害抵抗性因子と病原力決定因子としての役割を評価し、樹木と病原菌の相互作用系を解明すると共に、ナラ枯れ抵抗性選抜のための基礎知見として寄与することを目標とする。本年度は、感受性のコナラに認められた抗菌活性物質2,6-dimethoxybenzoquinone、syringaldehyde、scopoletin、vanillin、および3,4,5-trimethoxyphenolについて、より感受性のミズナラにおける濃度変動を測定した結果、ナラ菌接種に対してミズナラ辺材で濃度が高まったことから、ミズナラにおいてもナラ菌の侵入に対して防御物質として機能していると考えられた。さらに、ナラ菌が生成する毒素を分離精製し、毒素活性を認め、構造を再確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
感受性のナラ類における防御物質の同定と濃度の変動は予定通り進展しているが、抵抗性のカシ類における防御物質の精製と同定が予定よりも遅れいている。一方、病原菌のナラ菌の毒素については、毒素の精製と分子構造決定を再度行うことができ、確実な同定ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに明らかにしたミズナラの防御機構における防御物質の寄与を明らかにするために、被陰等により防御能力を低下させたミズナラと健全個体間で、防御物質の変動を測定することによって、ミズナラの防御機能における抗菌物質の寄与を明らかにする。また、これまでに収集したナラ菌の菌株を培養し、毒素産生力を菌株間で比較することによって、毒素産生能の差異を明らかにする。
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Causes of Carryover |
実験室での作業を増やし、サンプル作成のための旅費使用が減ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験室での作業増加が続くため、人件費として用い、効率よく作業を進める。
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Research Products
(1 results)