2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25292118
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
坂本 崇 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (40313390)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ウイルス / 耐病性 / 遺伝子 / ゲノム / 育種 / ヒラメ / マーカー選抜育種 / MAS |
Research Abstract |
(1)リンホシスチス耐病性遺伝子座ゲノム領域(約930kb)からの新規遺伝マーカーの開発 既に塩基配列情報を得ているリンホシスチス耐病性遺伝子座を完全に網羅する領域(約930kb)から、約50kb間隔で遺伝マーカー(マイクロサテライトマーカー: MSもしくは一塩基多型マーカー:SNP)を開発した。 (2)リンホシスチス人為感染実験と各個体の耐病性形質評価 (1)で述べたように、解析家系において遺伝マーカーとリンホシスチス耐病性形質との関連性を連鎖解析により遺伝的組み換え個体を明らかにすることで、遺伝マーカーとリンホシスチス耐病性遺伝子間の遺伝的距離を推定することができる。そこで、本研究では、雄親が耐病性遺伝子座をヘテロ接合体で保持する個体を用い、感受性個体(耐病性遺伝子座を持たない個体)と実験交配し、解析家系(88尾)を作出した。この解析家系に、リンホシスチスウイルスを人為的に暴露し、人為感染実験を行った。人為感染実験後に、解析家系の各個体における罹患状況を評価し、罹患した個体は耐病性遺伝子座を持たない感受性個体(36尾)、罹患しなかった個体は耐病性遺伝子座を保持する耐病性個体(52尾)とした。 (3)連鎖解析法によるリンホシスチス耐病性遺伝子座の限局化 人為感染実験後、罹患した個体(耐病性遺伝子座を持たない感受性個体)、罹患しなかった個体(耐病性遺伝子座を保持する耐病性個体)からゲノムDNAを抽出し、(1)で開発した遺伝マーカーを用いた連鎖解析を行った。各個体における耐病性遺伝子座保有の有無と各遺伝マーカーとの関連性を連鎖解析し、関連性が最も高かった遺伝マーカー(Lod score = 16.0)を明らかにした。その結果、リンホシスチス耐病性遺伝子座は物理距離で134kb、遺伝的距離で1.1cMまで限局化することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)リンホシスチス耐病性遺伝子座ゲノム領域(約930kb)からの新規遺伝マーカーの開発、(2)リンホシスチス人為感染実験と各個体の耐病性形質評価、(3)連鎖解析法によるリンホシスチス耐病性遺伝子座の限局化と予定していた研究項目が全て順調に進み、その結果として、リンホシスチス耐病性遺伝子座は物理距離で約134kb、遺伝的距離で1.1cMまで限局化することが出来た。本研究は、非常に順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)リンホシスチス耐病性遺伝子座ゲノム領域(約134kb)内に存在する遺伝子の発現解析 平成25年度に使用した解析家系の一部について、人為感染実験中にサンプリングを行い遺伝子の発現解析に用いる。耐病性遺伝子座(約134kb)に存在すると推定された遺伝子について、耐病性形質との関連性を検討するため、各遺伝子内にPCRプライマーを設計しRNAサンプル(白血球、脾臓、腎臓など)を用いて、人為感染実験中の遺伝子発現動態を解析する。人為感染実験中にサンプリングした個体については、ゲノムDNAを用いて遺伝マーカーによる解析を行い、耐病性遺伝子座を保持する個体(耐病性個体)と耐病性遺伝子座を保持しない個体(感受性個体)を識別し解析に用いる。これにより、人為感染実験中の遺伝子発現動態だけでなく、耐病性個体と感受性個体との間の比較遺伝子発現解析も可能になる。これらの解析により、リンホシスチス耐病性遺伝子座ゲノム領域(約134kb)内に存在する遺伝子とリンホシスチス耐病性形質との関連性を検討する。 (2)リンホシスチス耐病性遺伝子座ゲノム領域(約134kb)内に存在する遺伝子配列およびゲノムDNAの塩基配列比較解析 平成25年度において、耐病性遺伝子座(約134kb)に存在すると推定された遺伝子の各遺伝子内に設計したPCRプライマーを用いて、神奈川県水産技術センターで保有するリンホシスチス耐病性系統と感受性系統間の塩基配列比較を行い、遺伝子翻訳領域内の変異と耐病性形質との関連性を検討する。また、次世代シーケンサーを用いてリンホシスチス耐病性系統と感受性系統間のゲノムDNAの塩基配列比較を行い、ゲノム領域の変異を探索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究を実施するための実験室がある建物が、急遽、年度内に改修工事を行うことが決定した。本研究課題は、非常に順調に進展し、成果を得ることが出来た。当初の計画通りの成果が順調に得られたため、次年度以降のための準備を進めることを考えたが、人為感染実験による形質評価の高精度化のための実験装置の設置は、改修工事ため出来なかった。また、次年度以降に予定している次世代シーケンサーによる解析のための準備についても、仮設実験室では十分な取り組みが難しいと判断したため、経費の必要となる次年度以降に実施することとした。 予定通り、実験装置を設置し人為感染実験による形質評価の高精度化を行う。また、次世代シーケンサーによる解析についても、予定通り推進する。
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