2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25292120
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Research Institution | Meguro Parasitological Museum |
Principal Investigator |
小川 和夫 公益財団法人目黒寄生虫館, その他部局等, 館長 (20092174)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 博 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (70261956)
白樫 正 近畿大学, 水産研究所, 講師 (70565936)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | クロマグロ / 種苗生産 / クドア / 住血吸虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
陸上水槽で育成されたクロマグロ種苗を8月下旬に沖出し後,定期的にクドア属粘液胞子虫の寄生動態を調査した。脳寄生Kudoa yasunagaiとK. prunusiは9月上旬から血液と脳内にPCRにより遺伝子が検出され,前者は11月上旬,後者は10月下旬に,検鏡でシストが観察された。一方,心臓寄生K. shiomitsuiは9月下旬にはシストが心臓に確認された。筋肉寄生K. hexapunctataは10月中旬から12月上旬まで血液での検出率はほぼ60%であったが,筋肉では11月上旬には100%に達した。また,K. yasunagaiとヒラマサをモデルとした試験では,UV処理水,砂ろ過水,無処理海水で7週間飼育したヒラマサの寄生率はそれぞれ0,50,100%であった。沖出し後の発症率もUV処理区では3.5%だったのに対し,砂ろ過区,無処理区では 9.0と13.2%と高く,陸上飼育中の寄生予防によってその後の発症も軽減できることが示された。 クロマグロに寄生する住血吸虫に関しては,網生け簀に付属するロープ,フロート等からフサゴカイ類を採集し,中間宿主を探索した。その結果,2種のフサゴカイ,Nicolea gracilibranchis(和名:フタエラフサゴカイ)とNeoamphitrite sp.の体腔内から吸虫の幼生期であるスポロシストとセルカリアを発見した。遺伝子解析の結果,それぞれCardicola orientalisとC. fosteriであることが示された。この結果,日本の養殖マグロ(タイヘイヨウクロマグロ)にはC. orientalis, C. opisthorchisに加えてC. forsteriも寄生していることが示唆され,3種ともフサゴカイ類を中間宿主とする生活環が解明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
クロマグロ種苗におけるクドア属粘液胞子虫4種の初期の魚体内感染動態に関するデータを初めて得ることができた点については,計画通りである。しかし,感染直後には血液に存在し,その後,標的器官に移動してシスト形成すると仮定すると時系列的に説明できない部分もあった。感染時期を推定するためには,魚体内での初期ステージを検出するだけでなく,海水中における感染ステージ(放線胞子)の検出も併用する必要があるが,今年度は達成できなかった。クドアの防除については陸上飼育用水のUV処理が重要であるという事が確認できたが,必要最低照射量についてはさらに検討する必要がある。以上を考慮すると,クドアに関して,研究の達成度は「おおよそ予定通り」といえる。 住血吸虫に関する研究では,今年度はクロマグロの養殖生産上の都合から,種苗生産後のプラジクアンテル投薬による住血吸虫の駆虫スケジュールを策定するための実験を行えなかった。一方,これまで知られていなかったCardicola forsteriの寄生が示唆されたこと,不明であったCardicola orientalisとC. forsteriの生活環を解明できたことは,今後の研究の発展に大きく寄与することが予想される。以上を考慮すると,住血吸虫に関して,研究の達成度は「おおよそ予定通り」といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
クドアの魚への感染時期を推定するため,感染海域の海水をろ過することで水中の感染ステージの密度を定量PCR法により測定する。また,前年度に調べたクロマグロ種苗の群を引き続いて調査し,魚体内におけるクドアの発育動態を胞子密度の測定および病理組織学的な観察により追跡する。以上より,クロマグロ種苗に感染する時期を特定すると同時に,その後の動態を明らかにすることで,魚への病害性について検討する。また,クドア防除に必要な最低UV照射量を明らかにし,陸上飼育中の防除法を確立する。 住血吸虫については,前年度に実施できなかった種苗生産後のプラジクアンテル投薬による住血吸虫の駆虫スケジュールを策定するための実験を行う。クロマグロに寄生する3種の住血吸虫の中間宿主がすべて特定されたことによって,中間宿主における寄生に関する知見を集積する。すなわち,主に中間宿主における寄生頻度の高かったC. orientalisについて,養殖場に棲息するフサゴカイにおける寄生状況を定期的に調査して,養殖場内における中間宿主の垂直分布や寄生の季節性を明らかにし,感染ゴカイのセルカリア産生能力,セルカリアの水中への放出時期を推定する。また,セルカリアの海水中における生残やin vitroにおけるマグロ組織への侵入能力を判定する。 研究の最終年度に当たり,これまで3年間に集積した知見をもとに,種苗生産期やその後の養殖期のクロマグロの住血吸虫およびクドア感染の診断・防除マニュアルを作成する。
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Causes of Carryover |
今年度までに日本のクロマグロの住血吸虫は3種存在することが明らかになり,それらすべての中間宿主が特定された。そのため,最終年度には中間宿主のフサゴカイ類に関する調査・研究,特にフィールド調査が多くなることが想定されるため,予算の一部を残すことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主としてクロマグロ住血吸虫の中間宿主に関する研究のためのフィールド調査費,調査によって得られた吸虫のスポロシストやセルカリア幼生を用いた実験に使用予定である。
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Research Products
(5 results)