2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25292127
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中尾 実樹 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50212080)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杣本 智軌 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40403993)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 栓球 / 魚類 / 免疫 / 血液凝固 / 白血球 / コイ / 食作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては、栓球の凝固作用や食作用を媒介する細胞表面受容体タンパク質、凝固・貪食刺激による細胞内でのタンパク質発現の違い、これら栓球刺激によって起こる魚類免疫系の活性化・制御作用を解明することを目的として、栓球の食作用に及ぼす各種活性化因子の作用機序の解明を遺伝子・タンパク質レベルで試みた。その結果、栓球が活発な食作用として機能するために、補体などのオプソニンを認識する受容体(インテグリンCD18/CD11、CD46)や抗原提示用の主要組織適合性抗原MHC Class IIなどを発現することを発見した。さらに興味深いことに、この食作用活性が栓球単独では起こらず、LPSやポリI:Cなどの病原体分子パターンによって他の白血球が活性化されると初めて、栓球の食作用も活性化されることが判明した。他の白血球による栓球の活性化は、他の白血球から分泌される可溶性因子によって媒介されることも明らかにした。おそらく、この可溶性因子はサイトカインの一種であろうと考えれれるので、そのサイトカインの同定を目指し、貪食によって活性化される栓球および他の白血球において発現が上昇する遺伝子の網羅的同定をRNAseq法によって進めた。現在のところ、明確に栓球の貪食活性を上昇させるサイトカイン候補遺伝子の同定には至っていない。これにはタンパク質レベルでのアプローチも必要であり、検出可能な量の活性化因子を得るために必要な、栓球および末梢血白血球の大量調製法の確立にも着手した。その結果、モノクローナル抗体を用いた磁気ビーズ法に若干の改変を施して、栓球および栓球を含まない末梢血白血球をこれまでの10倍量調製することに成功し、タンパク質レベルでの機能解明に繋がる方法論を確立することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した実験を実施することができた。ただし、RNAseqによる包括的な発現解析によって、栓球の活性化や栓球による自然免疫の活性化に関わる因子を網羅的に同定することを目指していたが、予想以上に発現変動を示す遺伝子が多く見つかり、各種活性化院試を明解に同定することはできなかった。 これにはタンパク質レベルでの同定と機能解析が不可欠であるとの結論に達し、そのために必要な大量の試料調製などに関する方法論の確立を目指し、次年度の研究の基盤となる知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
タンパク質レベルでの栓球の活性化因子および栓球による自然免疫活性化因子の同定を目指す。栓球や栓球以外の白血球を末梢血から効率よく大量に調製する方法が確立できたので、これらを病原体特異的分子パターン物質で刺激して、栓球の食作用活性化や形態変化を指標に活性を評価し、活性化因子の特定を目指すこととする。
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Causes of Carryover |
本年度に推進する予定であったRNAseqによる解析では、研究のゴールに迫れない公算が高くなってきたので、タンパク質レベルでの解析に研究をシフトさせる必要性が生じた。本年度では、タンパク質レベルでの解析に必要な試料調製法の確立に注力したので、予定した程の予算は必要とならなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、本年度確立した手法により、栓球や栓球を除く末梢血白血球を大量調製して、タンパク質レベルでの栓球の機能解明に迫る。そのためには、各種高速液体クロマトグラフィー用マイクロカラムなどを新たに揃える必要があり、主にサイトカイン類の微量精製と機能解析に予算を多く使用する必要がある。また、本年度には国際比較免疫学会で研究成果を発表する予定であり、そのための外国旅費も必要となる。
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[Presentation] 魚類栓球の異物分解・殺菌作用2014
Author(s)
長澤貴宏, 中易千早, Aja M. Rieger, Daniel R. Barreda, 杣本 智軌, 中尾 実樹
Organizer
平成26年度日本水産学会春季大会
Place of Presentation
東京海洋大学
Year and Date
2014-04-01 – 2014-04-01