2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25292127
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中尾 実樹 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50212080)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杣本 智軌 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40403993)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 栓球 / 魚類 / 免疫 / 血液凝固 / 白血球 / 食作用 / コイ / 補体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては、栓球の血液凝固作用と食作用、自然免疫活性化調節作用を媒介する細胞表面レセプター分子および分泌タンパク質の発現変動について、網羅的mRNA発現解析の結果を基に、タンパク質レベルでのより詳細な機能解析を目指した。mRNA発現解析の結果、興味深いことに、栓球が他の食細胞やBリンパ球と同様に、抗原提示に重要な役割を果たす主要組織適合性遺伝子複合体の産物(MHC class II)を高いレベルで発現することが判明した。さらに、自然免疫のエフェクター因子である補体系を構成する成分の幾つかの発現も認められた。特に、補体第2経路の活性化を促進するプロパージンと、細胞膜上での過剰な補体活性化を抑制するCD46のホモログも有為に発現することが判明した。 プロパージンの機能をタンパク質レベルで精査するために、組換えコイプロパージンを大腸菌で調製し、抗コイプロパージン抗体をウサギで作成した。この抗体を用いたウエスタンブロッティングにより、コイプロパージンは分子量約30万の6量体構造をとること、補体の活性化に伴いグラム陽性・グラム陰性細菌表面に結合すること、その結合は菌体への直接結合でなく、おそらくC3bなどの補体成分を介した、間接的な結合であることが明らかとなった。 CD46の機能についてもタンパク質レベルでの解析を進めた。抗コイCD46モノクローナル抗体および各種コイ補体成分に対する特異抗体を用いたフローサイトメトリーおよび細胞傷害試験により、コイCD46はC3bおよびC4bの沈着を阻害すること、および補体による細胞傷害を有為に抑制することを突き止めた。 以上の結果より、栓球は、免疫応答調節作用を担う多様な分子を発現し、魚類の自然免疫において重要な防御反応を担うことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
栓球の防御機能の一翼を担う分子のタンパク質レベルでの機能解析を進めることができた。ただし、プロパージンやCD46の機能に関しての学会発表、論文発表が未完である。
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Strategy for Future Research Activity |
栓球の生体防御機能において重要な役割を果たすと示唆されるプロパージンやCD46の反応機構については、平成28年度に開催される補体に関する国際会議で発表予定である。 MHC class IIを介した抗原提示など、栓球の獲得免疫応答における役割については、新たな研究プロジェクトとして立案・計画を進める予定である。
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