2013 Fiscal Year Annual Research Report
大災害からの農業復興に関する自助・共助・公助の連携理論と戦略的実践方策の解明
Project/Area Number |
25292134
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
門間 敏幸 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (30318175)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渋谷 往男 (澁谷 往男) 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (20557079)
杉原 たまえ 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (20277239)
山本 直之 宮崎大学, 農学部, 教授 (10363574)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自然災害 / 津波 / 口蹄疫 / 放射線 / 災害復興 |
Research Abstract |
研究初年度である平成25年度は,本研究の研究フィールドに予定している東日本大震災の被災地である福島県相馬市,東京都三宅島村をメンバー全員で調査した。共通調査では,大災害による有形・無形の被害の内容と広がり,災害前に構築した災害対策マニュアルの内容と有効性,復旧・復興対策の方法・組織とその効果・課題について,主として農業被害・農村社会システムへの影響に焦点を当てて調査を実施した。 特に相馬市では,未曾有の被害をもたらした津波・放射能汚染被害発生から1週間の緊急の取り組みの実態を関係者からヒアリングを行い,事前に作成した危機管理マニュアルが役に立たなかった実態,次々と発生する問題に対する臨機応変の対応が重要であることを確認した。また,こうした緊急事態では,市町村の役割が重要であり,緊急時の市町村の権限の拡大を行うことが課題であることを確認した。さらに,相馬市で研究代表者が実践している東京農業大学の震災復興プロジェクトのうち,津波被害水田の復旧・復興技術の特徴,新たな農業の担い手組織の特徴,農地1筆単位の放射性物質のモニタリングシステムの開発実態などを調査した。 また,放射能汚染がより深刻で全村避難をしている福島県飯舘村における避難時の対応,避難後の住民のケア,除染の実態などを調査した。さらに,福島県二本松市のNPO法人ゆうきの里東和における放射能対策の取り組みを調査するとともに,風評被害対策としての放射能測定による安全確認の意義と消費者に対する情報提供の徹底などの対策の重要性を確認した。 また,風評被害対策に関しては,独自の消費者調査を実施するとともに,放射能汚染の影響を受けた福島県の会津若松市,いわき市,伊達市等の行政の対応を調査した。さらに,生産者団体,NPO法人,企業などの支援の取り組みを調査し,風評被害克服のための対策の方向について整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定した研究内容については,想定した以上の研究成果を実現して,学会報告,研究論文発表,研究成果の社会的発信を行った。特に相馬市を研究フィールドとした研究では,研究代表者が2011年からプロジェクトリーダーとして支援活動を展開している復興支援プロジェクトの研究成果を,科研費の支援を得て集大成することができた。また,噴火時に避難住民の調査を行った東京都三宅村を再度訪問し,その後の農業復興の歩みを調査できたことは大きな収穫であった。 しかし,計画時に予定した宮崎県の家畜の口蹄疫の共同調査,雲仙普賢岳の共同調査については,メンバーの日程と現地との調整がつかず,平成26年度に実施せざるを得なかった。しかし,雲仙普賢岳については研究代表者である門間が,口蹄疫に関しては研究分担者である山本が日常的に調査を実施している。なお,研究分担者である渋谷は震災復興に関わるNPO法人や企業の役割に関する調査を精力的に行っている。 また,今回の調査で風評被害が被災地の農業の復興を大きく阻害していることが明らかになり,研究代表者が中心となって風評被害調査を新たな課題として設定し,研究を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,次の3つの研究課題の解明を集中的に実施する計画である。 1)大災害からの農業・農村復旧・復興における自助・共助・公助連携による動態的危機管理システムの開発---平成26年度以降は,平成25年度に実施した研究フィールドにおいて,①大災害による有形・無形の被害評価,②災害対策マニュアルの有効性の評価,③実践された復旧・復興対策の方法と組織間連携の有効性評価,に基づき大災害からの農業・農村の復旧・復興における自助・共助・公助連携による望ましい危機管理システムを解明する。 2)住民参加型での戦略的な農業復興・新生モデルと活動支援手法の有効性の実証と一般化---津波と放射線被害が深刻な地域における住民参加型の農業・農村の復興・新生モデルを開発する。さらに,これらのモデルに基づいて,新たな農業・農村創造を行政・JA・研究機関,NPOなどが支援しながら住民主体で実践する活動を組織化して実証するとともに,これらの支援活動の成果に基づいて,新たな農業・農村創造手法の有効性を総合的に評価し一般化するとともに,迅速に普及できるようにする。 3)風評被害克服対策の解明---放射能汚染地域の農業の復興を大きく阻害している風評被害の実態と克服対策を,①被災地域での取り組み,②正しい情報の発信方法,③消費地と生産地の連携,④企業などによる支援,という4つの視点から解明を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に予定していた宮崎の口蹄疫と長崎の雲仙普賢岳災害に関するメンバー全員での共同調査が,相手先との日程調整ができずに実施出来なかったことが理由である。 次年度は,前年度に調査出来なかった宮崎の口蹄疫と長崎の雲仙普賢岳災害に関するメンバー全員での共同調査を実施するとともに,3年目の研究成果のまとめに向けて現地調査の回数を増やす予定である。
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Research Products
(10 results)