2014 Fiscal Year Annual Research Report
大災害からの農業復興に関する自助・共助・公助の連携理論と戦略的実践方策の解明
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25292134
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
門間 敏幸 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (30318175)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 直之 宮崎大学, 農学部, 教授 (10363574)
杉原 たまえ 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (20277239)
渋谷 往男(澁谷往男) 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (20557079)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自然災害 / 津波 / 口蹄疫 / 放射線 / 災害復興 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究2年度であるため,研究メンバー相互の連携を深めるため,以下の共同調査を実施した。 口蹄疫災害調査:口蹄疫災害調査は,平成22年7月31日~8月1日に実施した。宮崎県庁を訪問し,口蹄疫の発生から収束までの国と宮崎県の取り組みプロセスと相互の連携をヒアリング調査した。また,口蹄疫の発生が全町に及んだ川南町では,口蹄疫発生に伴って噴出した数々の問題を如何にして一つ一つ克服していったか,役場の責任者からヒアリングした。 火山災害調査:本調査は,宮崎県の新燃岳と三宅島と2カ所で実施した。新燃岳は,宮崎県高原町において特に町の対応を中心に調査した。三宅島は今回が2回目の調査であり、三宅島噴火から全島避難,そして帰村までの一連の災害対策プロセスを中心となって推進した三宅島役場と東京都三宅出張所の取り組みについて調査した。 共同調査以外に参加メンバーが個別に実施した研究内容は,以下の通りである。 門間:放射能汚染地域の営農再開を支援するため,放射能汚染農地1筆毎の放射能汚染実態把握と除染支援のためのモニタリングシステムの開発。この研究成果については,ほぼ完成し実用に供されている。また,風評被害実態の解明のために,日本都市センターと共同で,風評被害克服のための対策を整理した。さらに,チェルノブイリ原子力発電所事故後28年が経過した時点での風評被害の実態を整理した。山本:口蹄疫被害を受けた農家の事故後の経営再開プロセスと農家意向を把握し,営農再開支援対策の効果と課題を整理した。杉原:三宅島での2回の共同調査の結果をとりまとめ,火山災害時のリスク管理のあり方,帰島後の迅速な営農再開の方法についてとりまとめ中である。渋谷:津波被害地域で新たに設立された農業法人の活動をトレースするとともに,その経営管理のあり方,今後の営農の展開方向について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(理由) 東日本大震災に関わる研究成果については,以下の顕著な成果を実現し被災地の復興に大きく貢献している。1)圃場1筆単位の放射能モニタリングシステムの開発。この成果については,具体的な除染作業の決定場面で活用されるとともに,迅速な農業経営の再開に大きく貢献した。特にモニタリング結果を耕作農家にフィードバックすることにより,放射能汚染実態の正しい理解に基づく放射能吸収抑制技術の合理的な選択が可能となり,作物に対する放射能の移行が効果的に抑制できるようになった。風評被害については,風評克服のために以下の4つの対策が重要であることを整理した。①消費者と生産者の日常的な信頼関係を構築すること(関係性マーケティングの実践),②農産物・食品に対する放射能に対する新たなリスク管理システムの構築,③買いたたき等,モラルハザード対策の展開,④正しい情報の提供。チェルノブイリ事故28年後の風評の実態調査からは,現在でも放射能による健康不安が深刻な社会問題となっている。この問題に付いては,専門家の間でも意見が大きく異なっており,そのことが人々の不安を高めている。 なお,東日本大震災,三宅島火山噴火,口蹄疫のいずれの災害調査においても,被害収束後の農業の再開において,高齢農家,兼業農家を中心に2~3割程度の農家は,農業から離脱している。こうした農業からの農家の離脱が,残った農家の経営規模拡大に結び付いているのは,東日本大震災の津波被災地域,口蹄疫発症地域である。しかし,放射能汚染地域や三宅島などでは,高齢者中心の農業が営まれているため,災害発生を契機に農業から多くの農家が離脱し,復元した農地もその後耕作放棄されてしまう危険性が大きいことが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は研究の最終年度に当たるため,全ての課題でこれまでの調査結果をとりまとめて,大災害からの復興のための関係組織の連携理論を整理するとともに,災害からの復旧・復興における関係機関による実践的な支援活動のあり方を明らかにする。各課題ごとのとりまとめのポイントは,次の通りである。 津波被害・放射能災害からの復旧・復興-津波被害からの復旧・復興で最も重要なのは,被災した市町村のリーダーシップである。特に,新しい農業・営農システムの構築を目指しながら,災害復旧対策を迅速に展開する必要がある。こうした市町村を中心としながら県,農協,普及,研究者の望ましい連携のあり方を,災害復旧・復興のステージごとに整理する。放射能災害からの復興では、除染を担当する国,営農再開を支える県とともに,柔軟な活動が展開できるNPO,さらには適切な情報の提供主体となりうる研究者などの活動が重要である。最終年度は,こうした連携のあり方を整理する。 口蹄疫・火山災害からの復旧・復興-口蹄疫災害の克服では,被害の蔓延を迅速に抑止するための国,県,市町村の連携がとりわけ重要である。その役割分担のあり方を中心にデータを解析して成果をとりまとめる計画である。火山災害からの復旧・復興では、避難指示の場面では国,県,市町村の役割が重要であるが,災害収束後の営農の再開においては,多様な営農の再開を様々な角度から支援できる柔軟な資金の活用と,営農指導体制の確立が重要である。そのため,ここでは災害復興のための基金制度のあり方,営農指導のあり方を中心に検討する予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、研究代表者である門間が東京農業大学が実施している震災復興プロジェクトのリーダーとして研究活動を実施したため、研究代表者の研究費が大学から提供されたために、次年度使用額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究代表者である門間は、平成27年3月31日に東京農業大学を定年退職になり、震災復興プロジェクトのリーダーの役も降りた。そのため、次年度はすべて科研費の予算で研究活動を行う予定である。なお、次年度はこれまでの研究成果を集大成したいと考えているので、成果公表のための予算を多く使いたいと考えている。
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Research Products
(4 results)