2013 Fiscal Year Annual Research Report
非経済的要因を組み込んだ青果物消費構造モデルの構築と検証
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25292137
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
大浦 裕二 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター農業経営研究領域, 主任研究員 (80355479)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 史 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター農業経営研究領域, 契約研究員 (30621627)
森尾 昭文 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター農業経営研究領域, 主任研究員 (50292511)
櫻井 清一 千葉大学, 園芸学研究科, 教授 (60334174)
霜浦 森平 千葉大学, 園芸学研究科, 助教 (40372354)
木立 真直 中央大学, 商学部, 教授 (10224982)
茂野 隆一 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (60292512)
中嶋 晋作 明治大学, 農学部, 講師 (00569494)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 家計調査個票 / 食行動記録システム / 需要体系モデル |
Research Abstract |
1.「食行動記録システム」を用いた食品の購入から調理、摂取までの行動の把握:関東及び関西の子供を持つ女性48人を対象に食行動記録調査を実施した。それらの調査により収集したデータは、食事ごとにメニュー数、青果物利用の有無・品目数、カット野菜・惣菜等の利用の有無等についてコーディング等の処理を行った。 2.家計調査個票データを用いた需要体系モデル(AIDS)による弾力性の計測:価格・支出弾力性については、自己価格弾力性をみると、もやしの自己価格弾力性が他の品目より低く、交差価格弾力性については、サラダに対する価格弾力性に着目すると、レタスと代替関係にあることが明らかになった。さらに、支出弾力性については、5品目に対する支出額で弾力性を評価すると、家計調査の分類上、相対的にキャベツとトマトが選択的支出、もやしとサラダが基礎的支出に分類される。続いて、属性別に見ると、収入の需要弾力性については、家計の収入が高いほど、キャベツの需要が減少し、サラダの需要が増加する傾向がみられた。また、世帯員数の需要弾力性については、家計における世帯員数が多いと、キャベツの需要が増加し、トマトやサラダへの需要は減少する傾向にあり、さらに、年齢の需要弾力性については、家計の代表者の年齢が高いほど、キャベツ、レタス需要は減少し、もやしの需要が増加する傾向がみられた。 3.国内および欧米の流通、小売、及び消費者への聞き取り調査:フランスにてパリ市民数名に聞き取り調査を実施し、若い年代においても買い物行動及び利用する食品について価値観の影響が強いこと、小売店の利用が多いことなどの知見が得られた。また、店頭観察調査により、フランス、イタリアでもカット野菜およびカットフルーツなどの青果物の簡便化商品販売がさまざまな業態(小売店、コンビニ、スーパー、百貨店)で見られたことが知見として得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つの大きな課題に分かれて研究を進めており、課題間で進捗状況は異なるものの、全体的にはほぼ計画通りに進んでいる。具体的な進捗状況は次の通りである。 1.「食行動記録システム」を用いた食品の購入から調理、摂取までの行動の把握:「食行動記録システム」で得られた現在48人分の食事ごとにメニュー数、青果物利用の有無・品目数、カット野菜・惣菜等の利用の有無等についてのコーディング作業において、入力ミスの再確認やメニューの分類の再検討、さらには分析枠組みの検討に時間を要しているが、ほぼ研究計画通り進捗している。 2.家計調査個票データを用いた需要体系モデル(AIDS)による弾力性の計測:家計調査個票データを用いて需要体系モデルを構築し、そのモデルを用いて自己価格弾力性、交差価格弾力性及び属性別の弾力性の計測することにより、主要野菜5品目の商品特性が明らかになった。本研究課題は、属性別の特徴や野菜の商品特性を明らかに出来たことから、次年度の研究計画に繋がる主要成果として位置づけることができること可能であり、予定以上の進捗状況にある。 3.国内および欧米の流通、小売、及び消費者への聞き取り調査:フランス及びイタリアの流通、小売、及び消費者への聞き取り調査を踏まえて、欧州の流通、小売、及び消費の実態を大まかではあるが捉えることができた。しかし、国内の流通、小売の調査については、カット野菜及びカットフルーツの動向は調査が進んでいるものの、青果物全体の流通・小売・消費動向については、やや遅れている状況にある。したがって、本課題は、3つの課題の中ではやや遅れている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、初年度のデータ収集及び青果物の販売動向及び消費の概要把握から、さらに下記4つの項目について詳細なデータ解析を進め、最終年度に向けた仮説構築を行う。 1)前年度実施した「食行動記録システム」データを用いて、食品の購入から調理、摂取までの行動を詳細に把握する。さらに、前年度実施した深層面接調査データをもとに、各品目の購入理由や食事の選択理由を詳細に聞き取り、青果物の購入・消費に対する意識・価値観、文化的背景、状況(TPO)、調理技術などの影響について分析する。さらに、各品目の購入量や食事での利用回数と、世帯属性や意識との関係について集計するとともに、自由記入欄(食事内容等の選択理由)及び深層面接結果のテキスト分析により、食事における青果物の利用と各食事のTPO や構成メンバー、意識・価値観、文化的背景、調理技術との関係を定性的に把握し、青果物消費を規定する非経済的要因及び要因間の関係を整理する。 2)家計調査個票を用いて、青果物の主要品目を対象に需要関数を計測し、品目別の消費量(消費支出)の規定要因を把握する。その際、幼児や食べ盛りの子ども、高齢者の有無など、個票により把握可能となる世帯属性や所得の影響に注目して分析を行う。 3)複数の要因の因果関係を表す青果物消費構造モデルを仮説的に構築する。その際、より妥当性の高いモデルとするため、他のグループを交えて検討を行う。また、構造モデルの検証に向けてプレアンケート調査(約1200 人)を行う。 4)栄養・健康面から食生活改善の取り組みの歴史が長いアメリカと、味覚教育・食育等を積極的に展開してきたフランスを対象とし、青果物摂取に関わる取り組みや近年の流通実態を把握する。
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