2013 Fiscal Year Annual Research Report
植物のストレス防御反応を利用した植物工場野菜の高付加価値化環境制御法の開発
Project/Area Number |
25292150
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
清水 浩 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50206207)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 施設園芸・植物工場 / 高付加価値 / 遺伝子発現 / 環境調節 |
Research Abstract |
完全制御型植物工場における高品質ホウレンソウの栽培技術を確立するため,低温処理日数,養液温度とホウレンソウ中の成分含量との関係を定量化することを目的とし,ホウレンソウ根圏への異なるレベルの低温ストレスが地上部生体重,乾物率(生体重/ 乾物重),最大葉面積,そしてアスコルビン酸含量,硝酸イオン濃度および糖度に与える影響を評価した.ホウレンソウ(Spinacia oleracea L. cv. ‘Active’) の種子をウレタンスポンジに播種した一週間後,発芽した苗をチャンバー内に移植した.明期14時間(5:00-19:00),明期の光合成光量子束密度(PPFD)を200µmol m-2s-1に設定し,明期と暗期の室温をそれぞれ23,18℃,養液温度を18℃に制御した.以上のような環境条件に制御されたチャンバー内をControl区とし,全ての株をまずControl区へ移植して一定期間栽培した.その後,収穫前に根圏のみに低温ストレスを与えるため,養液温度が低温に制御されたチャンバー内(Low Temperature区)へと,栽培トレイごと移動した.Low Temperature区へと移動させる時期をずらすことで,異なる期間の根圏低温処理を与えた株を得た。各養液温度下での低温処理日数がアスコルビン酸含量に与える影響については,いずれの養液温度下でも,低温処理日数が長くなるほどアスコルビン酸含量は増加した.養液温度4℃では低温処理4日で,6℃では5日で,10℃では6日で,14℃では7日で,アスコルビン酸含量はそれぞれ有意に増加し,低温処理時の養液温度が低くなるほどアスコルビン酸含量が有意に増加するまでに必要な低温処理日数が短くなる傾向があることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度はホウレンソウを対象として根圏に低温ストレスを与えることで,アスコルビン酸と糖の含有量が増加し,逆に硝酸含有量が低減することを実験的に明らかとし,環境調節によってホウレンソウの高付加価値化が可能であることを示した。 また,アスコルビン酸の生合成系の前駆体を合成するのにかかわっている酵素の発現量が多くなればその生合成系は活性化され最終産物であるアスコルビン酸の合成量も増加するということになるので,これらの酵素の発現を調べるため,プライマーを設計した。 植物の主要な含有成分の生合成に関わる酵素の遺伝子配列は、データベースに登録されている可能性が高いが、同じ酵素でも植物によって多少異なるのが一般的である.そこで目的とする酵素を他の植物との相同性を利用してディジェネレートプライマーを設計し,これらのプライマーで発現解析を行う場合のPCR条件についても実験を行ない,初期変性温度・時間,最適アニーリング温度や伸長時間を特定した。これらの実施内容は当初の計画書に記載されたとおりであり,おおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
26年度は当初の計画通り,温度(低温,高温),光質(紫外線,紫~青色光,緑色光),強光,パルス光などのストレス要因に対するそれぞれの酵素群の発現量を定量PCRにより発現解析を実施する予定である。これまで国内外でレタスや薬用植物を対象として光や温度条件などが与える影響について報告されているが,植物の品目によって刺激に対する反応は多様であり,そのメカニズムも明かになっておらず,やってみなければわからないというのが現状である.そこで,これまで報告されている刺激を与えて,酵素群の発現量の解析を行う.刺激としては,具体的には温度では低温と高温,光質では紫外線,紫,青,緑,さらに光強度では通常の栽培条件より強い光,また自然界では存在しないパルス光である.ホウレンソウがある刺激をストレスと感じた場合,刺激を与えた場合と与えない場合で,ビタミン群の生合成に関与する酵素群の発現量に相違が認められるはずであり,それを定量PCRによって数値化する.
|