2015 Fiscal Year Annual Research Report
植物のストレス防御反応を利用した植物工場野菜の高付加価値化環境制御法の開発
Project/Area Number |
25292150
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
清水 浩 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50206207)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 施設園芸・植物工場 / 高付加価値 / 遺伝子発現 / 環境調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度はステビアを対象として光刺激を与えたときの生合成経路の酵素発現等について研究を実施した。ステビアはキク科の多年生植物で,ブラジル・パラグアイ原産のハーブの一種である.主に葉が甘味料として使用され,主要な甘味成分であるステビオール配糖体群 (SGs)は強い甘味を呈することが報告されている.糖尿病患者の食事療法として用いられ,近年では抗インスリン抵抗性・インスリン分泌促進・抗高血圧・抗肥満などの薬理効果も報告されている非常に有用な植物である.本年度ではSGsがGAと生合成を分かち合っていることに着目し,GA制御に関わる光質条件が,SGs関連遺伝子に影響を与えるか解析を行い,最終的にSGs量が増大するような光質条件の検討を行った. リアルタイムPCRの結果では,SGsとGA生合成経路で共通しているGTs酵素のKOと,SGsの生合成経路に関わる酵素UGT85C2,UGT74G1,UGT76G1の3つの遺伝子の発現量が,R/FR の低い条件区で,蛍光灯条件に比べ発現量が上昇した.これはR/FR が低くなることで引き起こされた避陰反応の影響と考えられる.避陰反応による茎長の伸長にはフィトクロム,GAが関与する.これまでの研究で,遠赤色光を照射することでフィトクロムのPr型が多くなる場合,ササゲにおいてはGA1量が上昇し,シロイヌナズナ・キュウリではGA1レスポンスが上昇することで茎の伸長が促されることが報告されている.ステビアにおけるSGsとGAの関係を調べた研究では,外生GA処理を行うことでSGs関連遺伝子に変化が起こることが報告されている.つまり,遠赤色光を多く含んだR/FR の小さい区画において,4つの遺伝子の発現量が上昇したのは避陰反応によりSGsと生合成経路を共有しあうGA量の変化が起こり,SGsの元になる基質が増加したためSGs関連遺伝子の発現量の変化が起こったと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、対象植物に光刺激や温度刺激を与えることで抗酸化物質などの有用成分の正合成を促進させ、そのプロセスに関与する酵素群の遺伝子発現量を定量化することを目的としていた。27年度はステビアを対象植物した。ステビオール配糖体(SGs)の中で最も含有率が高いのは,ステビオサイド (stev)で,収量は2.18% (w/w),次いでレバウディオサイドA (reb-A)が1.43% (w/w)になる.これらの二次代謝産物はスクロース2%に比べstevは約193倍,reb-Aは400倍甘味が強いと報告され,特にreb-Aはstevより苦味がなく強い甘味を呈する。SGsは植物の二次代謝産物であるジテルペンで,ジベレリン (GA)と生合成経路を部分的に共有しており、ent-kaurenoic acidまでGAと生合成を分かち合い,それ以降はステビオール基本骨格を持ち,主にβグルコースが付加されていく。 したがって、GAの生合成に影響を与える刺激によって、SGsの生合成も何等かの影響を受ける可能性が大きい。そこで、赤色、青色、遠赤色のLED光を刺激として与え、その際の関連酵素群の遺伝子発現量がどのように変化するのかを定量PCRを用いて測定を行った。その結果、予想通りに青色やR/FR比によってこれらの関連酵素群遺伝子の発現量が変化することが判明しメカニズムの一端が明らかとなり、研究全体の進捗は予定通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
GAの生合成に関与していると考えられる光受容体についてはフィトクロムとクリプトクロムがあり、これらはそれぞれ赤色・遠赤色および青色のセンサーとして働いている。本プロジェクトでのこれまでの実験結果ではR/FR比についてはこの比の値が1.22のとき、また単独光では青色での発現量促進効果が高かったが、これらを組み合わせたときの効果について調べる予定である。さらに関連酵素遺伝子の発現量だけではなく、甘味成分であるSteviosideやRebaudioside-Aの定量も実施する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度での実験用消耗品(試薬など)に経費がかかることが予想されたため、708288円を次年度に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
発現解析に必要な試薬を購入する予定である。
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