2013 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜脂質の過酸化分解系の網羅解析に基づく青果物鮮度アセスメントシステムの確立
Project/Area Number |
25292155
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
中野 浩平 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (20303513)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
椎名 武夫 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所, 上席研究員 (40353974)
中村 宣貴 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所, 主任研究員 (50353975)
吉田 誠 神奈川県農業技術センター, 生産環境部品質機能研究課, 課長 (20503650)
曽我 綾香 神奈川県農業技術センター, 生産環境部土壌環境研究課, 主任研究員 (60503638)
黒木 信一郎 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00420505)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 農業工学 / ポストハーベスト工学 / 鮮度評価 / 青果物 / 脂質過酸化 / 遺伝子発現 / 揮発性化合物 / 水伝導係数 |
Research Abstract |
本研究では、細胞膜脂質の過酸化・分解系に着目した青果物の鮮度指標を開発するために以下の4つの試験を実施した。 「1. 細胞膜脂質の過酸化・分解に関与する酵素遺伝子群の発現変動解析」では、施肥条件の異なるキャベツについて、リアルタイムPCRを用いて収穫直後および保存後の膜分解関連酵素遺伝子の発現解析を行った。また、同じ試料の中から4サンプルを選定し、セイヨウアブラナのDNAオリゴマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析を実施した。 「2. 脂質過酸化レベルに基づく鮮度評価法の高精度化」では、貯蔵中のわさび菜の細胞膜を構成する各種脂肪酸含量をGC-FID法によって測定し、それらは骨格炭素数や不飽和度に依らず、貯蔵積算温度に対してほぼ同様の速度で減少することを明らかにした。このことから、総不飽和脂肪酸量に対する分解物量の割合に着目することで鮮度評価の高精度化が図れる可能性が示唆された。 「3. 鮮度マーカーとなる揮発性化合物の同定」では、貯蔵中のキャベツおよびレタスより放出される揮発性化合物をSPME-GC/MS法によって同定・定量した。3-Hexen-1-ol等の短鎖の炭化水素を骨格に持つ細胞膜脂質由来の物質群の放出を確認でき、鮮度マーカー物質検索のための基礎データが得られた。 「4. 細胞膜の水透過性を指標とした鮮度評価技術の確立」では、常温貯蔵されたキュウリ果実の果肉部、およびホウレンソウ葉において、貯蔵後経過日数の増加に伴って水伝導係数が増加することを明らかにし、水伝導係数の計測による青果物の鮮度評価の可能性を示した。一方、低温貯蔵されたキュウリ果実の水伝導係数の測定は困難であった。プロトプラスト単離プロトコールや細胞膜の選択的透過性などについての詳細な検討が必要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「1. 細胞膜脂質の過酸化・分解に関与する酵素遺伝子群の発現変動解析」の研究は、マイクロアレイを用いた網羅的遺伝子解析を実施するところまで研究が進んでおり、目標に向けて着実に進行している。「2. 脂質過酸化レベルに基づく鮮度評価法の高精度化」の研究は、今年度の目標であった脂質クラスの分別定量までは至らなかったものの、脂肪酸組成の面から鮮度評価の高精度化に向けた考察が進んだ。「3. 鮮度マーカーとなる揮発性化合物の同定」ではGC-MSによる膜脂質過酸化・分解由来の揮発性成分を捉えることに成功し、また、「4. 細胞膜の水透過性を指標とした鮮度評価技術の確立」では、水透過性測定のための実験系が構築され、いずれも鮮度低下との関わりについて議論するための基礎データが得られ計画どおりに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、「1. 細胞膜脂質の過酸化・分解に関与する酵素遺伝子群の発現変動解析」では、膜分解関連酵素遺伝子の発現量を経時的に測定する。そして、環境要因と各遺伝子の発現変動との関係性を定量的に解析し、発現変動のダイナミズムを明らかにする。「2. 脂質過酸化レベルに基づく鮮度評価法の高精度化」では、HPLC法によって各脂質クラスおよび脂質過酸化の中間・最終生成物質を捉えるための実験手法を確立し、鮮度評価法の高精度化を目指す。「3. 鮮度マーカーとなる揮発性化合物の同定」では、貯蔵条件を変動させた農産物より生成される揮発性化合物の消長をGC-MSによって分析し、 鮮度マーカーとなる物質あるいは物質群を検索する。さらに、GC-MS分析ではヘッドスペース法やSPME法等、より有効な測定方法を検討する。「4. 細胞膜の水透過性を指標とした鮮度評価技術の確立」では、各種貯蔵条件下における水伝導係数と鮮度リファレンスデータとの関係性について検討する。これにより、膜脂質の過酸化・分解が膜の物理的特性に与える影響について評価し、細胞膜の水透過性を指標とした鮮度評価技術の妥当性を検証する。
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