2014 Fiscal Year Annual Research Report
ブタ着床前発生胚におけるシーリングタンパク質クローディンの発現性と胚の発生能
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25292160
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
三宅 正史 神戸大学, 統合研究拠点, 名誉教授 (60093316)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原山 洋 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30281140)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 応用動物科学 / 着床前発生能力 / 胚盤胞形成 / クローディン / ブタ |
Outline of Annual Research Achievements |
claudin familyのmRNAとタンパク質発現を引続き分析した。CLDN 1~24の塩基配列を調べ,ブタでの配列が不明のCLDN 13, 21, 24以外のclaudinsのプローブを設計してmRNA発現を解析し,胚盤胞では,CLDN 1, 4以外に6, 7, 8, 9, 12, 14を発現していた。これらのclaudinsついて免疫蛍光法でタンパク質の分布を調べた。claudin 4, 6と 7はTJに局在し,8, 9, 12, 14は細胞質を中心に,核あるいは核周辺に存在し,すでに調べたclaudin 1同様にTJの構造と異なる分布を示しており,TJに直接関与しないことが示唆された。 将来,胚におけるclaudinsの発現性と胚発生の関係を調べるための基礎情報を集積した。Glucose (G)とFructose (F)がブタ胚の着床前発生に及ぼす影響を調べ,どの発生ステージの着床前胚もGを利用できるが,初期分割胚はFを利用できなかった。後期4細胞胚は,その後,炭水化物が無くても,発生率などに明確な差もなく胚盤胞に発生し,脂質やアミノ酸などをエネルギー源として利用できることが示唆された。ブタ胚は,タンパク質のO-GlcNAc基の修飾を行っており,4細胞以降の発生に, O-GlcNAcをタンパク質から除去する必要があった。 このようなデータの考察には,胚性遺伝子活性化(ZGA)時期が重要となる。本研究に単為発生2倍体を使っているので,単為発生2倍体におけるZGAを特定する必要がある。そこで,単為発生2倍体胚における新規合成RNAの検出とRNA polymerase IIのリン酸化を調べ,受精卵と同様に,2細胞に低いRNA合成を行った後,4細胞にはZGAに伴うRNAの合成を開始し,ブタ単為発生2倍体は受精卵の発生特性をZGAでも概ね再現されていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の核心部分を構成するclaudin family タンパク質のmRNAとタンパク質の発現解析について,平成25年度は,mRNA発現を確認しているclaudin 1と 4に対して,着床前発生期における発現性を明らかにした。その後26年度に,残りのclaudins(塩基配列が不明のclaudin 13,21,24を除く)についてmRNAの発現を解析した。その結果上記のように,CLDN 1, 4に加えて, 6, 7, 8, 9, 12, 14の発現を確認した。これらのclaudinsのタンパク質レベルの発現を免役蛍光法により解析し,claudin 4, 6, 7はTJに局在し,1, 8, 9, 12, 14はTJに対して異所性性の,細胞質を中心に分布することを明らかにした。一方,siRNA注入によるKD効果と、GFP結合CLDN mRNA注入によるclaudinの過剰発現が着床前発生に及ぼす影響を,claudin 1と 4で解析した(一部H25年)。claudin 1は異所性分布を示すが,KDによる結果は,初期分割に役割を持つことを示唆していた。典型的なTJ構造への局在を示すclaudin 4は,胚盤胞以降の発生において,TJ機能に重要な役割を持つことを示唆するだけでなく,初期分割期にも重要な役割を持つことも示唆された。 その他,将来的に,促進的/抑制的な発生条件のもとで,タンパク質レベルで発現するclaudinの局在性などの変化と発生能力の関係を調べる計画であるが,そのために,G, FとP+Lについて,初期分割や胚盤胞への発生が受ける影響の詳細な基本データの集積を完了し,さらに,初期胚では糖新生やGlcNAc修飾が機能していることも明らかになった。 このように,26年度までの実験は,計画を大幅に超えて進行し,おおむね収束の領域にまで達していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
「平成26年度の実績概要」,ならびに「現在までの達成度」に記載したとおり,本研究は平成26年度までに実施計画を大幅に上回って進められている。まだ,一部の実験計画については実施されずに残されている部分は存在するが,研究計画の主要部分はおおむね達成領域に至っている。 申請者には,研究協力者として2名の大学院生(博士前期課程1、博士後期課程1)が平成25, 26年度の実験計画の重要な部分を担当してくれていた。また,申請者は,平成25年度から農学研究科を離れ,学内研究施設の専任管理職として異動し,また,平成26年度末をもって定年退職を迎えている。この様な背景から,継続的に院生を指導することが困難になることを予測して,平成25年度から,新規の大学院生の担当を行えない環境にあった。したがって,それまでに研究指導を担当していた大学院生に対して,研究科の外部から研究指導を行い,研究協力者として本研究実施の支援を受けていた。26年度末に,最後の2名の大学院生が無事修了を迎えて就職も確定したことから,平成27年度からは実験の主要部分を精力的に実施することが困難となった。 したがって,研究期間の最終年度を迎えるにあたり,平成27年度は研究成果の整理と取りまとめを主に実施し,実験に関しては最小限度にとどめる予定である。したがって,主な経費は研究内容の発表に関する経費とした減額申請を行っている。
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Research Products
(6 results)