2013 Fiscal Year Annual Research Report
高病原性鳥インフルエンザ疫学調査におけるDNAバーコーディング法の応用
Project/Area Number |
25292172
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
伊藤 壽啓 鳥取大学, 農学部, 教授 (00176348)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 鳥インフルエンザ / DNAバーコード / 疫学 / 鶏 / 野鳥 |
Research Abstract |
本研究では、生体材料のミトコンドリア DNA 上にある特定領域の塩基配列を決定し、それを既存の生物の配列情報と照合することによって、生物種の同定を行う“DNA バーコーディング”という手法を用いて、高病原性鳥インフルエンザウイルスの感染経路や野生動物の流行実態の解明等、様々な疫学情報を入手することにより、本病の国内発生予防対策確立のための一助とすることを目的としている。 まず本年度は野鳥の糞便を用いた DNA バーコーディング法による種の同定について実施した。すなわち2006~2012 年に申請者らが採取した野生水禽の糞便からDNAを抽出し、PCRによって特定領域を増幅した。増幅が認められない場合には二次増幅(Nested PCR)も検討した。その結果、最初のPCRでは、60検体中23検体に目的遺伝子の増幅が認められたが、残りの37検体で増幅は認められなかった。そこでNested PCRを行ったところ、58検体で増幅に成功した。これらの塩基配列を決定し、リファレンスライブラリおよびDNAバーコード同定ツールを用いて、それらの相同率からそれぞれの鳥種を決定した。 さらに過去の発生養鶏場周辺で採取された糞便、骨、羽毛等についても同様にDNAバーコーディング法を用いて、本病発生時に養鶏場周辺に生息していた動物種の同定を試みた。その結果、ある発生農場の鶏舎周辺で採取された糞便が猫の糞便であることが特定された。防疫作業時にこの猫は行方不明となり、直接本ウイルス感染を証明することは出来なかったが、今回の成績からこの猫が本病発生当時も、鶏舎内外を移動していたことが明らかとなり、ウイルス侵入経路の可能性の一つと考えられた。 次年度も引き続き各種疫学材料を精査し、本ウイルスの国内侵入経路ならびに農場内あるいは鶏舎内へのウイルス侵入ルートの推定を試みる計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はまず野鳥の糞便等を用いたDNAバーコーディング法による種の同定を実施し、2006~2012 年の間に鳥インフルエンザウイルスが分離された国内野鳥の糞便60検体を調べることで、本手法の実用性を明らかにすることができた。ごく一部の検体で、シークエンスの波形が重複しており、同定が困難なものが認められたが、その原因については次年度以降でさらに分析を進める計画である。また、過去の発生養鶏場周辺で採取された糞便、骨、羽毛などの疫学材料について、同様にDNAバーコーディング法を応用し、本病発生時に養鶏場周辺に生息していた動物種を明らかにする点に関しては、1例ではあるが、限られた材料をもとにして、本病発生当時、鶏舎内外を移動していた動物種を特定することができた。 以上の点から本研究は当初の計画に従って概ね順調に進展しているものと考えられる。 ただし、レファレンスライブラリーに存在しない鳥種のDNAの塩基配列を決定し、登録することに関しては、年度内にそのような材料入手の機会がなかったため、引き続き次年度以降もその機会を待つこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では引き続き野鳥の糞便等を用いたDNAバーコーディング法による種の同定を実施する計画である。この点に関しては、今後比較的新鮮な材料も入手可能であり、計画通り推進出来るものと考えられる。一方、本年4月に熊本県で3年ぶりの高病原性鳥インフルエンザの国内発生が認められたことから、防疫作業最優先の観点からかなりの困難は予想されるものの、可能な限り現地周辺の疫学材料を入手し、それらに対するDNAバーコーディング法を用いた解析を進めたいと考えている。また、次年度から新たに始める猛禽類や哺乳動物の消化管内容物(被食動物)の同定に関しては、過去の野外感染死亡個体を分析するとともに、感染実験後の死亡個体からの材料についても解析を進める計画である。以上のように、今後の研究方針については現時点で特段変更の必要性はなく、概ね当初の計画通り推進できるものと考えられる。
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Research Products
(1 results)