2014 Fiscal Year Annual Research Report
高病原性鳥インフルエンザ疫学調査におけるDNAバーコーディング法の応用
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25292172
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
伊藤 壽啓 鳥取大学, 農学部, 教授 (00176348)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 鳥インフルエンザ / DNAバーコード / 疫学 / 鶏 / 野鳥 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生体材料のミトコンドリア DNA 上にある特定領域の塩基配列を決定し、それを既 存の生物の配列情報と照合することによって、生物種の同定を行う“DNA バーコーディング”という手法を応用して、高病原性鳥インフルエンザの疫学調査、すなわち国内発生時における感染ルートの究明や野鳥および野生ほ乳動物等の流行実態の把握に努め、もって将来の高病原性鳥インフルエンザの国内発生予防対策確立のための一助とすることを目的としている。 本年度は、前年度に引き続き、糞便によるウイルス保有状況調査を実施するとともに、ウイルス陽性糞便からDNAを抽出し、その感染宿主の同定を試みた。また、12月から1月にかけて、国内の養鶏場でH5N8亜型の高病原性鳥インフルエンザの発生が確認されたことから、発生農場で採取された材料(主に糞便)についても解析を試みた。 また、2011年2月~3月にかけて、H5N1高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染して死亡した野生猛禽類(ハヤブサおよびクマタカなど)の食道、そ嚢、腺胃、筋胃、十二指腸、空回腸、結直腸、総排泄腔から採取した内容物を用いて、被食動物の種の同定を試みた。 その結果、2011年2月11日宮崎県西都市および2011年2月17日愛知県春日井市で発見されたH5N1亜型鳥インフルエンザウイルス感染ハヤブサ2羽のそ嚢内容物から、それぞれツグミおよびカワラバトとヒドリガモの遺伝子が検出され、ハヤブサが死亡前にこれらの鳥を捕食したことが明らかとなった。ツグミやハトはH5N1ウイルスに感受性があり、また養鶏場近辺で観察されることもあることから、これらの鳥種がハヤブサにウイルスを伝播した可能性が考えられた。 以上の成績からDNAバーコーディングテクニックは種々の鳥インフルエンザ疫学調査において応用可能であることが実証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年度に引き続き、比較的新鮮な野鳥の糞便等を用いて、DNAバーコーディング法による種の同定に成功し、本手法の有効性をさらに証明することができた。本年度はまた当初の計画に則って、猛禽類の消化管内容物の抽出DNAを用い、被食動物の種の同定にも成功した。以上の点から本研究は当初の計画に従っておおむね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度であることから、引き続き野鳥の糞便等を用いたDNAバーコーディング法による種の同定を継続する予定である。一方、猛禽類消化管内容物の同定に関しても、ストッププライマーを用いた、より検出感度および特異性の高い手法の改良を試みる。 さらに、それまで得られた成績を総合し、わが国への高病原性鳥インフルエンザウイルスの感染経路ならびに農場内あるいは鶏舎内へのウイルス侵入ルートの推定を試みる。 また、得られた成績は材料の提供を受けたそれぞれの機関等にフィードバックするとともに、生産者の方々にも積極的に情報公開する。 以上のように今後の研究方針ついては現時点で特段変更の必要性はなく、概ね当初の計画通り推進できるものと考えられる。
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Causes of Carryover |
当初、研究期間内に高病原性鳥インフルエンザの国内発生が認められた場合、その発生農場に出向いて、サンプルを採取するための旅費を計上していたが、本年度の国内発生時には、農林水産省あるいは発生県の疫学調査チームが現地でサンプルを採取し、それらを鳥取大学まで送付してもらったことから、上記の旅費が不要となった。 一方、今年度、本病の国内発生が5農場で確認され、予想に反して多くのサンプルの解析が必要となったことから、その旅費分を次年度のサンプル解析に必要な消耗品費として計上する必要が出てきたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の消耗品費に変更する今年度残額はすべて、不足が予想される発生農場サンプルの解析に用いるDNAバーコーディング法用の試薬類に使用する計画である。
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Research Products
(1 results)