2014 Fiscal Year Annual Research Report

カスタム育種デザインのためのブタ遺伝子発現調節領域の多様性の解明

Research Project

Project/Area Number	25292190
Research Institution	National Institute of Agrobiological Sciences
Principal Investigator	上西博英独立行政法人農業生物資源研究所, 家畜ゲノム研究ユニット, 主任研究員 (80391556)
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha)	中島郁世独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所, 主任研究員 (60355063) 小川智子独立行政法人農業生物資源研究所, 家畜ゲノム研究ユニット, 主任研究員 (90466011)
Project Period (FY)	2013-04-01 – 2016-03-31
Keywords	ゲノム / プロモータ / 多型 / ブタ
Outline of Annual Research Achievements	本年度は、ブタの脂肪合成・代謝及び脂肪細胞の分化に関わる遺伝子の発現に影響を与える因子の探索のために、Gene Ontologyデータベースに基づく脂肪合成・代謝に関連するとみられる遺伝子群、及びブタ皮下脂肪由来の脂肪前駆細胞で脂肪細胞への分化誘導を行った際に発現の変化が観察される遺伝子群の転写開始点上流4kb（及び転写開始点下流100bp）について、昨年度に設計したゲノムDNAから濃縮を行うプローブセットを用い、46頭のブタ及びイノシシのゲノムDNAの該当領域の濃縮と次世代シーケンサーを用いた配列解読を行った。昨年度に解読を行った3頭を加えて、49頭についてブタゲノムリファレンス配列（Sscrofa10.2）を用いた多型解析を行った。49頭の内訳はバークシャー種等西洋種30頭、梅山豚等東洋種11頭、ニホンイノシシ等野生種8頭であった。ゲノム濃縮を行ったおよそ10Mbの領域中にSNPはおよそ14万箇所存在した。転写調節因子データベースJASPARを用いて何らかの転写調節因子が結合する可能性の高い箇所に存在するSNPはおよそ88,000個であった。その内、ほぼすべての西洋種と東洋種で保有するアリルが異なっている（次世代シーケンサーリード中の対立アリルの配列出現頻度5%以下）ことが確認されたSNPは1,496個であった。KEGGのパスウェイ情報において脂肪細胞分化や脂肪合成等に関連すると考えられる転写調節因子の結合部位に限定すると、10,684個のSNPが抽出された。内、西洋種と東洋種でアリルが異なっていたものは172個であり、これらは東洋種・西洋種個体での遺伝子発現量に与える影響の比較を行う対象の候補となり得ると考えられた。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason カスタムプローブを用いたゲノムDNAからのプロモータ領域の濃縮と、濃縮したゲノム領域の次世代シーケンサーを用いた解読については、予定通り完了させることができた。また、SNPの抽出とアノテーション、転写調節因子の結合領域を予測、さらに予測された領域に存在するSNPを抽出するパイプラインについても構築を完了し、実際に運用して結果を得るところまで達成している。プロモータ変異のレポーターアッセイによる評価については機器運用の問題等もありまだ結果は得られていないが、方法論としては確立しているので最終年度にデータベースの作成まで含めて達成することに問題はないと想定している。
Strategy for Future Research Activity	プロモータ領域中で転写調節因子が結合すると推定された場所に存在が検出された多型について、西洋種及び東洋種のブタ、及びイノシシでの分布を明らかにするとともに、ブタの脂肪組織における発現量の検討、豚脂肪前駆細胞を用いたプロモータ活性のレポーターアッセイによる解析を行い、品種改良の素材としての利用可能性についての検証を行う。また、主要商用西洋品種や東洋種のブタ、及びイノシシで検出されたプロモータ多型について、品種内、品種間での分布、想定される転写調節因子の結合位置、実際にプロモータ活性に与える影響等を、既に開発しているブタ発現遺伝子データベースと関連づけて提供できるシステムの構築を行う。
Causes of Carryover	プロモータ多型の遺伝子発現に与える影響を検証するためのレポーターアッセイについては、今年度は多型の抽出、アノテーション及び検証システムの確立に注力したため、実際の検証を行うために想定した助成金の一部は使用を行わなかった。次年度（最終年度）にはレポーターアッセイに関連して効果的に活用されるものと考えている。
Expenditure Plan for Carryover Budget	レポーターアッセイのための発光試薬、及び大量のサンプルを用いたレポーターアッセイを円滑に行うためのプレートリーダーの付属機器（インジェクションシステム）に充当することを計画している。