2013 Fiscal Year Annual Research Report
脾臓間葉系幹細胞の同定ならびに再生治療への応用基盤の確立
Project/Area Number |
25292194
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
後飯塚 僚 東京理科大学, 生命医科学研究所, 教授 (50301552)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 再生医療 / 間葉系幹細胞 / 脾臓 / ニッチ / 造血 |
Research Abstract |
間葉系幹細胞は3つの主要な間葉系細胞系列(脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞)に分化できる細胞集団であり、再生医療への幅広い応用が期待されている。脾臓は免疫応答の場として機能するだけでなく、老化した赤血球の除去や貧血時の髄外造血を支持する造血微小環境である。脾臓においても、その器官形成に必須の転写因子であるTlx1を高発現し、3種の間葉系細胞系列にin vitroで分化可能な間葉系幹細胞が存在する可能性が示唆されているが、その性状や分化能については明らかになっていない。そこで、我々はTlx1遺伝子座にCreERT2-ires2-Venus遺伝子をノックインした新規レポーターマウスを用いて、新生仔脾臓におけるTlx1発現間葉系細胞の性状および機能について解析を行った。その結果、脾臓Tlx1発現間葉系細胞は間葉系前駆細胞マーカーを発現し、Platelet-derived growth factor receptor-α (PDGFR-α)を発現する一群の細胞は脂肪細胞への分化能を有することが明らかになった。また、本マウスをレポーターマウスやジフテリア毒素受容体発現マウスと組み合わせることにより、成体における脾臓間葉系細胞の細胞系譜追跡や細胞除去を行うことで、脾臓微小環境について解析を行った。その結果、成体Tlx1発現間葉系細胞は様々な脾臓ストローマ細胞へ分化する能力を有し、さらに、Flk1およびCD31陽性の血管内皮細胞へ間葉内皮分化転換しうることが明らかになった。現在、脂肪細胞への分化能を有する間葉前駆細胞の性状について、細胞表面抗原の発現ならびに組織分布の観点から、より詳細に解析を行い、他の間葉系細胞である軟骨芽細胞や骨芽細胞ならびに血管内皮細胞への分化能について解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脾臓におけるTlx1陽性細胞は、細胞表面マーカーの発現解析から、成熟マーカーを発現していない未熟な細胞群であり、骨髄における間葉系幹細胞と類似した表現型を示すこと、少なくとも培養系で脂肪細胞への分化能を有することから、間葉系幹細胞である可能性が強く支持される所見を得ており、今後、予定通りに研究を遂行することにより、脾臓の間葉系幹細胞の同定とその組織修復や再生能力について明らかにできると考える。ただ、現状で進行が遅れている点は、マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析であり、これはTlx1発現細胞が少数であることに起因している。本来ならば、平成25年度に終了予定の計画であったが、本遺伝子解析については、平成26年度中に終了させる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.脾臓Tlx1発現間葉系細胞の生体組織へのホーミング、局在ならびにその性状の解明 Tlx1-CreERT2-ires2-Venus; Rosa26-stop-tdTomatoマウスを作製する。本マウス由来細胞を移植に用いれば、Tlx1を発現する細胞とそこから分化してきた子孫細胞の移植ホストでの各組織(骨髄、脾臓、脂肪組織など)へのホーミングならびに局在を追跡可能である。 さらに、免疫組織化学、フローサイトメトリー解析などと組み合わせることで、移植前の脾臓Tlx1発現細胞との細胞性状の変化について解析を行う。具体的にはタモキシフェン投与後のVenus陽性tdTomato陽性脾臓細胞を単離し、放射線を照射したホストマウスに投与する。4, 8週後に肺、肝臓なども含む生体組織への移行・定着をVenusならびにRFPの蛍光で解析し、特に脾臓、骨髄についは、定着細胞の組織における局在(脾臓:被膜、白脾髄、赤脾髄、骨髄:骨内膜、血管周囲など)について免疫組織化学的解析を行い、細胞表面抗原の発現についてはフローサイトメトリー解析を行う。 2.Tlx1発現間葉系細胞ならびにそれに由来する細胞の生体における機能の検証 組織修復能が観察されたモデル系では、それが間葉系細胞の移植によることを検証するために、移植後にTlx1発現細胞ならびにそれに由来する子孫細胞の除去を行い、症状の再発を検討する。具体的には、ジフテリア毒素とその受容体を用いた細胞欠損誘導系を作製する。本マウスにタモキシフェンを投与することで、脾臓におけるTlx1発現間葉系細胞にDTRを発現させ、それを疾患モデルマウスに移植する。移植後、一定時期にジフテリア毒素を投与することで、移植したTlx1発現細胞ならびにそれに由来する細胞の除去を行い、コントロールマウスとの組織修復の違いを解析する。移植後の細胞除去という本解析結果により、Tlx1発現間葉系細胞の生体での組織修復における役割を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現状で進行が遅れている点は、マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析であり、これは、1)サンプルを採取可能な胎仔、マウスサンプルが不充分であったこと、2) Tlx1発現細胞が少数であったことに起因している。 マイクロアレイによる遺伝子解析については、遺伝子発現解析に充分なサンプルを採取するために、遺伝子改変マウスの繁殖などを計画的に行い、平成26年度中に終了させる予定である。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Homeodomain transcription factor Meis1 is a critical regulator of adult bone marrow hematopoiesis.2014
Author(s)
Ariki, R., Morikawa, S., Mabuchi, Y., Suzuki, S., Nakatake, M., Yoshioka, K., Hidano, S., Nakauchi, H., Matsuzaki, Y., Nakamura, T. and Goitsuka, R
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Journal Title
PLOS ONE
Volume: 9
Pages: e87646
DOI
Peer Reviewed
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