2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25292200
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
高松 大輔 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所細菌・寄生虫研究領域, 主任研究員 (60414728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芳山 三喜雄 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所家畜育種繁殖研究領域, 主任研究員 (10510258)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 昆虫病原微生物 / 養蜂 / ヨーロッパ腐蛆病 / Melissococcus plutonius |
Outline of Annual Research Achievements |
ヨーロッパ腐蛆病は蜂群の崩壊につながるミツバチ幼虫の致死性伝染病で、家畜伝染病予防法で法定伝染病に指定されている。原因菌であるMelissococcus plutoniusは、約100年前からその存在が知られているものの、人工培養すると急速に病原性が失われると考えられおり、本病の発病機構は全く明らかになっていない。ところが、近年、研究代表者らは、日本には人工培養を繰り返しても病原性が失われず、実験感染系でミツバチ幼虫に確実にヨーロッパ腐蛆病を再現可能なM. plutonius株(非典型株)が存在することを発見した。そこで本研究では、人工培養を行っても病原性が失われない非典型株を詳細に解析することにより、原因菌の発見から1世紀経った今も全くの謎に包まれているヨーロッパ腐蛆病の発病機構を明らかにし、将来的な本病の予防法開発に資する情報を得ることを目的とする。本年度は、 1、ヨーロッパ腐蛆病の発病機構をより深く理解するために、M. plutonius非典型株のDAT561株をセイヨウミツバチ幼虫に経口感染させ、感染幼虫の病理組織学的解析を行った。その結果、M. plutoniusの菌細胞自体は基本的に囲食膜に囲まれた中腸腔内にとどまっているが、抗M. plutonius血清に反応する菌由来の何らかの分子が幼虫体内に拡散し、幼虫に悪影響を与えている可能性が示唆された。 2、上記の病理解析に用いたM. plutonius DAT561株を親株として用いて、病原性への関与が疑われる計6種類の遺伝子(Fur family transcriptional regulator遺伝子、Cro/CI family transcriptional regulator遺伝子、エンハンシン遺伝子、ソーテース遺伝子、細胞壁結合タンパク質遺伝子、キチン結合タンパク質遺伝子)の欠失変異株の作出に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、予定していたM. plutoniusの遺伝子欠失株の作出や感染幼虫の病理組織学的な解析がおおむね終了したため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度までに非典型株から作出した合計6株のM. plutonius遺伝子欠失株を用いて、セイヨウミツバチ幼虫の感染実験を行い、欠失させた遺伝子がM. plutoniusの病原性に関与しているか否かを確認する。感染実験の結果、病原性の低下が認められた遺伝子欠失株については、欠失した遺伝子を再び導入した相補株の作出を行う。また、必要に応じて、大腸菌等のタンパク質発現系を用いて、機能解析のためのレコンビナントタンパク質の作出と精製を試みる。
さらに、本年度のM. plutonius非典型株感染幼虫の病理解析では、感染初期の幼虫組織の状態や菌の動態が観察できていなかったため、この時期の発病機構をより詳細に解明するために、非典型株感染後72時間以内のセイヨウミツバチ幼虫を継時的に採材し、各種病理組織学的解析を行う。特に、抗M. plutonius血清を用いた免疫組織化学的解析を行うことにより、菌体そのものだけでなく、抗血清に反応する菌由来の分子が、感染初期にどのように幼虫体内に拡散していくのかを観察する。
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Causes of Carryover |
ミツバチは、女王蜂が盛んに産卵する春から夏にかけての時期を逃すと、多数の幼虫を用いる実験の遂行が困難である。本年度は、ミツバチ幼虫体内でのM. plutoniusの動態解明のため、経口感染させた幼虫の経時的なサンプリングを行ったが、実験に用いる健康な蜂群の確保と適切な感染条件の確立ための予備実験に多くの時間を費やすこととなった。そのため、一部の幼虫のサンプリングおよび病理解析が間に合わなくなり、その解析に必要な試薬・消耗品を次年度に購入することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度分として請求した研究費の直接経費および次年度使用額の合計2,694,228円は、平成27年度に計画しているM. plutonius株の感染試験や研究成果の発表などのため、物品費(2,044,228円)、旅費(50,000円)、人件費(600,000円)として使用予定である。 特に、次年度繰越し分は、物品費として、本年度にサンプリングできなかったミツバチ幼虫の感染実験および病理解析に必要な試薬・消耗品の購入に使用する予定である。
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