2013 Fiscal Year Annual Research Report
アワノメイガ属における食性進化と性フェロモンとの関連性の解明
Project/Area Number |
25292204
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
安河内 祐二 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫ゲノム研究ユニット, 主任研究員 (50355723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 幸男 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (60125987)
佐原 健 岩手大学, 農学部, 教授 (30241368)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 嗅覚受容体 / 食性 / 性フェロモン / アワノメイガ / 遺伝子重複 / 種分化 / 次世代シーケンシング |
Research Abstract |
25年度は、ゲノムワイドでの嗅覚受容体遺伝子の探索を可能にするため、次世代シーケンサーHiSeq2000を用いて、アワノメイガ・オス蛹1個体のゲノムDNAを100bpペアエンド解析を行った。その結果、総サイズ約511Mbの概要ゲノム配列が得られ、遺伝子のエクソン部分は網羅していると考えられた。 これらのゲノム配列から、RNA-seq解析により触角で発現している嗅覚受容体をコードすると考えられるcDNA配列とほぼ同一か、有意な相同性を有する配列を検索したところ、51個の新規嗅覚受容体遺伝子様配列を見出すことができた。これらの遺伝子候補について、それぞれ特異的なプライマーを設計してアワノメイガフォスミドライブラリーをPCRスクリーニングしたところ、51個中41個を単離することができた。さらに同じプライマーでヨーロッパアワノメイガとアズキノメイガのBF1集団を用いてマッピングを試みたところ、約半数の座乗染色体を明らかにすることができ、特定の染色体上の部位にクラスタリングしている遺伝子群も見出された。 また、ヨーロッパアワノメイガのBACクローンとアワノメイガ・ウスジロキノメイガのフォスミドクローンについて、次世代シーケンサーGS-FLXを用いた塩基配列決定を行った。その結果と補足的なサンガーシーケンシングにより、アワノメイガ・ヨーロッパアワノメイガ・ウスジロキノメイガのフェロモン受容体とフェロモン結合タンパク質遺伝子領域全体のゲノム塩基配列を決定した。このうちフェロモン受容体遺伝子クラスターについては、3種間で遺伝子構成に違いがあり、遺伝子重複により生じた遺伝子コピーに欠失や不活化が進んでいることが示唆された。 さらに、BAC・フォスミドクローンをプローブとしたFISH解析を行い、全染色体を網羅したアワノメイガ属の高精度な細胞遺伝学的地図を作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代シーケンシング技術の普及と低廉化により、基準となるアワノメイガのゲノム構造と遺伝子発現の解析は計画以上に進んでいる。また、解析の基盤となるFISHによる細胞遺伝学的地図も作製できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、アワノメイガとは食性と性フェロモン成分の異なる近縁種の解析を進めて、アワノメイガとの相違点を明らかにし、表現型の違いをもたらしている遺伝子の解明を進める必要がある。しかし、野外昆虫を対象にするため種内の遺伝的多様性も大きいことが予想される。したがってゲノム構造の比較に当たっては、種を代表する特定の個体同士の比較ではなく、充分な個体数を確保した集団をリシーケンシングするなどして、集団間で共通してみられる違いを見出すとともに、種分化に先行して起きる遺伝子の変化がみられないかを確認する。 また、性フェロモン成分が食草から予想されるものとは異なる個体など、興味深い表現型を示す個体については、個体ごとに詳細な遺伝子型の調査を行う必要がある。野外昆虫の遺伝的解析は困難を伴うので、ある程度まで候補遺伝子を絞りこんでから行う必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度以降において、アワノメイガ以外の種の解析が本格化することによる経費の増大が見込まれたので、25年度中に行う実験内容を精選して、必要な経費の留保に努めたため。特に、次世代ゲノムシーケンシング受託解析費用は逓減傾向にある上、解析規模が拡大するほど単価が下がるので、小規模な解析を五月雨的に行うよりは解析試料を十分に蓄積してから一括して解析する方が費用対効果が高まるので。 アワノメイガ以外の種の解析を加速化するために、集中的に次世代ゲノムシーケンシング解析を行う。
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