2013 Fiscal Year Annual Research Report
水稲根圏におけるメタンの動態に関わる微生物食物連鎖の構造と機能の解析
Project/Area Number |
25292207
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村瀬 潤 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (30285241)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅川 晋 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (50335014)
渡邉 健史 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (60547016)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 水稲 / 根圏 / 微生物食物連鎖 / 原生生物 / メタン |
Research Abstract |
本研究では、水田におけるメタン動態のホットスポットである水稲根圏に焦点をあて、野外調査、室内実験によってメタンの動態に関わる微生物食物連鎖の構造を解析する。また、微生物食物網が水稲根圏におけるメタン生成古細菌、メタン酸化細菌群集の構造と機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。 本年度は、まずは微生物食物連鎖を構成する原生生物群集に焦点をあて、PCR-DGGE法による根圏の原生生物群集の解析手法を確立した。水稲体由来の18S rRNA遺伝子の増幅を特異的に抑制するLNA(locked nucleic acids)の開発により、根圏に生息する真核微生物を効率的に検出することが可能となった。野外の水田圃場より生育時期の異なる稲体を採取し、本研究で確立した方法で根圏土壌中の真核微生物群集の解析を行なった。その結果、水稲根圏の真核微生物群集構造は周辺の土壌とは異なっていること、塩基配列情報の解析により水稲根圏に特異的なアメーバが生息することが示唆された。ポットでのイネ栽培実験では、RNAを対象として根圏で活性を有する真核微生物群集の解析を行い、繊毛虫やアメーバなどの原生動物が根圏で活性を有していることが示された。また、ガラス製のミニ根箱による水稲根圏の観察を行なった結果、根端部を中心に多数の原生動物の生息が認められた。 以上の結果は、湛水状態にある水稲の根圏域で微生物食物連鎖が機能していることを強く示唆するものであり、来年度はメタンの動態と微生物食物連鎖の関係を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画した初年度の研究はすべて着手し、一定の成果が挙がっている。一方で、野外試料の解析は、異なる圃場で今後さらに検討する必要がある。また、ポット実験によりRNAレベルでの真核微生物群集の解析では、嫌気的な水稲根圏環境については十分な知見が得られたが、メタン酸化が活発な水稲生育中期の好気環境についての情報を再度収集する必要があると考えられた。さらに本年度はDGGE法による解析にとどまっており、特徴的な試料についてpyrosequencingによる大量データの取得を行なう必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、圃場レベル、ポット実験での根圏微生物群集の解析をすすめる。また、安定同位体炭素で標識したメタン、二酸化炭素を利用した安定同位体プロービング法により、メタンの酸化および生成と微生物食物連鎖の関係を明らかにする。ミニ根箱から根圏に多数生息する原生動物を分離し、同定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ポット実験によるRNAレベルでの真核微生物群集の解析では、嫌気的な水稲根圏環境については十分な知見が得られたが、メタン酸化が活発な水稲生育中期の好気環境についての情報収集ができなかった。また、真核微生物以外の微生物の群集構造解析が課題として残された。 次年度使用額分については、新たなポット実験や真核微生物以外の微生物群集の解析など、当該年度の研究計画の未終了課題の遂行に充当する。
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