2014 Fiscal Year Annual Research Report
糖鎖による脳神経機能調節の分子基盤の解明とその破綻による疾患
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25293016
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
遠藤 玉夫 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 副所長 (30168827)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 糖鎖 / O-マンノース / 筋ジストロフィー / 脳の発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
O-マンノース型糖鎖の異常は先天性筋ジストロフィー症の一種であるα-ジストログリカノパチーの原因となる。α-ジストログリカノパチーは中枢神経障害を伴うことから、脳発生過程におけるO-マンノース型糖鎖の重要性が示唆されている。本年度の研究において以下の成果を得た。 我々はこれまでに、神経突起伸長などに働く、受容体型プロテインチロシンホスファターゼ(RPTPβ)上のO-マンノース型糖鎖はその非還元末端にHNK-1などの特徴的な構造を有していることを報告している。本年度の研究により、RPTPβのO-マンノース型糖鎖にはLewis X[Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc]構造も付加されていることを明らかにした。Lewis Xは脳の発生段階初期において発現が高い糖鎖構造である。POMGNT1欠損マウスの脳ではLewis Xがほぼ消失していた。また、野生型マウスのLewis XがN結合型糖鎖分解酵素によって切断されなかったことから、脳においてLewis Xは主にO-マンノース型糖鎖上に存在すると考えられた。また、抗Lewis X抗体による免疫沈降では、RPTPβが共沈してきた。そこで、組み換え型RPTPβを大腸菌で作製し、POMTによりマンノースが転移されるか調べたところ、RPTPβは基質となることが確認された。さらに、野生型マウスとPOMGNT1欠損マウスのRPTPβの分子量が大きく異なることから、RPTPβには多数のO-マンノース化サイトが存在することが推測された。以上より、RPTPβのO-マンノース型糖鎖にはLewis X構造も付加されていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、RPTPβのO-マンノース型糖鎖にはHNK-1構造に加えてLewis X構造も付加されており、O-マンノース型糖鎖が多様性をもつことを明らかにした。 実績報告には記載していないが、fukutin、FKRPを中心に未だ機能がわかっていない関連分子について酵素活性を同定し、O-マンノース型糖鎖の生合成機構を明らかにするための研究も同時に進めた。特に本糖鎖の多様性をもたらす分岐構造の合成に関わるPOMGNT1、GTDC2、B3GALNT2、SGK196の基質特異性の解析を進めると同時に、POMGNT1については構造解析など酵素の性状や機能について詳細な解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの研究によりHNK-1やLewisX構造など非還元末端側の多様な構造が明らかになってきた。引き続きPOMGNT1、GTDC2、B3GALNT2、SGK196の性質について詳細な解析を進めることで、本糖鎖の多様性の根幹である分岐構造の合成を制御するメカニズムの解明を目指す。さらに、ポストリン酸構造から伸びる糖鎖の合成に関わると推測されるfukutin、FKRP、TMEM5の機能について解析し、O-マンノース型糖鎖の生合成経路の全容解明を目指す。 POMT1、POMT2の糖供与体であるドリコールリン酸マンノース(Dol-P-Man)の合成酵素DPMがPOMT1-POMT2複合体と相互作用している可能性をこれまでに見いだしている。DPMは3つのサブユニットDPM1、DPM2、DPM3からなる複合体であり、α-ジストログリカノパチー様の症状を呈する先天性糖鎖異常症の原因遺伝子である。特にDPM3の変異によってO-マンノース型糖鎖の異常が顕著に現れることが報告されている。一方、Dol-P-Manの利用に関わる分子としてMPDU1が存在するが、その機能は不明である。MPDU1変異ではN型糖鎖異常による症状が見られることが知られている。これらのことより、DPMs、MPDU1が、Dol-P-ManをO-マンノース型糖鎖合成とN型糖鎖合成のどちらに使うのかの選択に関わっている可能性が考えられる。そこで、POMT1-POMT2複合体とDPM複合体の相互作用の実態と意義について解析する。
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Causes of Carryover |
2014年の年末に、高速遠心機が故障したが、購入手続きの都合上2015年度に購入することになったため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
高速遠心機の購入に使用する
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Research Products
(23 results)
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[Journal Article] Major glycan structure underlying expression of the Lewis X epitope in the developing brain is O-mannose-linked glycans on phosphacan/RPTPβ.2015
Author(s)
Yaji, S., Manya, H., Nakagawa, N., Takematsu, H., Endo, T., Kannagi, R., Yoshihara T., Asano M., Oka S.
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Journal Title
Glycobiology
Volume: 25
Pages: 376-385
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] An aberrant sugar modification of BACE1 blocks its lysosomal targeting in Alzheimer’s disease.2015
Author(s)
Kizuka, Y., Kitazume, S., Fujinawa, R., Saito, T., Iwata, N., Saido, T.C., Nakano, M., Yamaguchi, Y., Hashimoto, Y., Staufenbiel, M., Hatsuta, H., Murayama, S., Manya, H., Endo, T., Taniguchi, N.
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Journal Title
EMBO Mol. Med.
Volume: 7
Pages: 175-189
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Structural and biochemical characterization of O-mannose-linked human natural killer-1 glycan expressed on phosphacan in developing mouse brains.2014
Author(s)
Morise, J., Kizuka, Y., Yabuno, K., Tonoyama, Y., Hashii, N., Kawasaki, N., Manya, H., Miyagoe-Suzuki, Y., Takeda, S., Endo, T., Maeda, N., Takematsu, H., Oka, S.
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Journal Title
Glycobiology
Volume: 24
Pages: 314-324
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Analysis of protein O-mannosyltransferase complex formation in the endoplasmic reticulum.2014
Author(s)
Endo, T., Yamada, T., Takahashi, T., Akasaka-Manya, K., Manya, H.
Organizer
9th International Symposium on Glycosyltransferases (Glyco-T 2014)
Place of Presentation
Porto, Portugal
Year and Date
2014-06-18 – 2014-06-21
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