熱帯林植物からの新規抗がん剤候補薬の探索研究

2013 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 25293024
• Research Category: Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
• Research Institution: Kanazawa University
• Principal Investigator: 後藤 享子 金沢大学, 薬学系, 准教授 (50180245)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 三宅 克典 金沢大学, 薬学系, 助教 (20597687)
• Project Period (FY): 2013-04-01 – 2017-03-31
• Keywords: 熱帯林植物産天然物 / 抗がん剤候補

Research Abstract

本研究目的は、消滅の危機に曝されている熱帯林産植物由来の天然物から、新規抗がん剤候補となるリード化合物の探索を行うことである。昨年度には、以下の2項目について研究を遂行した。
（１） 熱帯林植物抽出液から抗がん活性本体の単離と構造決定: 熱帯林に自生する希少植物由来の粗抽出液（米国の研究協力者より提供）を、ヒトがん細胞に対する細胞増殖阻害活性を指標に検定を行った。細胞増殖阻害試験は、特徴の異なる４種類の乳がんを含む７種類のヒトがん細胞を用いた。がん細胞増殖阻害半抑制濃度が10 ug/mL以下である強力な２種類の異なった植物由来粗抽出液を新たに見出した。これら２種の粗抽出液から、活性本体の単離・精製、構造決定に向けて、抗がん活性を指標に精製を続行中である。
（２）熱帯林産植物由来リード化合物の全合成と化学的修飾による最適化: リード化合物として既に手中にある新規抗がん活性天然物セスキテルペンラクトンについては、化学的修飾による最適化により数種類の有用な誘導体を見出し、現在国際特許の申請準備中である。さらに、シソ科植物から単離されたジテルペンについては、l-アビエチン酸を出発原料として合成を開始し、順調に進んでいる。本化合物の合成中間体も細胞増殖阻害試験に付しており、構造活性相関研究に役立てる。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

抗がん作用が見られる熱帯林植物抽出液の活性本体単離には多少の遅れがある。しかし、既にリード化合物として選択している2種のテルペノイドについては、順調に合成が進行しており、中でも前述のセスキテルペンラクトンに関しては特許の申請準備中である。従って4年間の研究期間の初年度として、概ね順調と判断できる。

Strategy for Future Research Activity

リサイクル分取用HPLCを導入したため、今後新規抗がん活性天然物の単離、構造決定に向けての更なる効率化が見込まれる。従って、本年度内には活性本体を見出すことが可能であると期待している。リード化合物の一つ、セスキテルペンラクトンに関しては、得られた活性誘導体について、生理活性機序の解明とin vivoでの検証を研究協力者と共に行っていく。ジテルペンに関しては、全合成達成まで数工程を残すのみであり、本年度内には最適化に向けた化学修飾と構造活性相関に着手できる予定である。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

単離操作、合成操作の効率向上に向け、プロジェクトメンバーを増員するにあたり、ロータリーエバポレーター一式を2台、次年度に追加購入する必要があるため。
上記理由により、ロータリーエバポレーター一式を2台購入予定である。カラムや合成に必要な有機溶剤、合成に必要な有機並びに無機薬、分離精製のためのカラム担体（順相、逆相等）、構造決定に必要なNMR用重水素化溶媒は、抽出液の単離・精製、並びに合成に必須である。細胞毒性試験には、ウシ胎児血清, RPMI-1640等の培地類や96-wellプレート、ピペットチップ類のプラスチック製品、生化学的アッセイ用試薬が必要となり、これらは非常に高価である。