2013 Fiscal Year Annual Research Report
化学物質の胎生期エストロゲンシグナル修飾が与える脳神経系構築及び行動への影響
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25293031
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
永瀬 久光 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (40141395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 剛 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (50303988)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エストロゲン / 性分化 / 脳 / 胎生期影響 / 臨界期 |
Research Abstract |
本研究では、申請者らが独自に作製してきた胎生期エストロゲン過剰暴露モデルマウ(ArE-TGマウス:胎盤特異的にヒトアロマターゼとEGFPの融合蛋白質(ArE)を発現するマウスで、胎生期のみエストロゲンを暴露することができる)やエストロゲン応答レポーターマウス(E-Repマウス:エストロゲンに応答してc-mycタグ付ホタルルシフェラーゼを発現するレポーターマウス)を用いて、脳の性分化におけるエストロゲンシグナル(Eシグナル)の神経内分泌学的意義や行動学的意義を解明するとともに、エストロゲン様化学物質の胎生期暴露における発達神経毒性発現機構の解明とリスクアセスメントへのフィードバックを行うことを最終目標としている。本年度は脳の形態学的に性差を示す神経核(性的二型核)の形成に与える胎生期Eシグナルの影響を検討するために、繁殖期のArE-TG雌雄マウスの性的二型核の組織像について解析を行った。マウスの代表的な性的二型核である前腹側脳室周囲核や分界条床核の組織像を検討したところ、雌性ArE-TGマウスの前腹側脳室周囲核の神経核の大きさ(容積)、構成ニューロン数が雄様に変化していた。さらにアンドロゲン誘導性の攻撃行動についても解析を行った。通常の雄性マウス(雄型の脳)はアンドロゲン依存的に攻撃性が増すが、雌性マウス(雌型の脳)ではそのような反応が見られない。しかし雌性ArE-TGマウスにアンドロゲンを投与すると、攻撃行動が有意に上昇した。これらの結果は、雌性ArE-TGマウスでは脳が一部雄化していることを示すとともに、脳の性分化の臨界期が胎生期から始まっていることを示唆していると考えられた。またE-Repマウスを用いた検討でも、エストロゲンを投与すると脳の性的二型核でEシグナルが検出できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
雌性行動試験、特に性行動試験は予想したよりもかなり時間を要する上、ArE-TGマウスの繁殖も予定通りに進まなかったため、今年度は予備的な検討しか行うことができなかったが、それ以外の検討はほぼ予定通りに進行している。計画当初心配されたE-Repマウスの検出感度についても、免疫組織学的解析では雌雄差が明確に検出できるほどの感度で、本研究に十分使用できることが明らかとなっており、次年度以降の成果に期待が持てると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、雌性ArE-TGマウスの性行動のみならず、雄性ArE-TGマウスの行動試験も行い、胎生期Eシグナルの脳の性分化への関与を検討する。また胎生期のEシグナルが脳内でどのように投射されるのかをトレースするために、我々が独自に作成したE-Repマウスを用いて解析を行う。 具体的には、ArE-TGマウスとE-Repマウスを交配し、同腹の野生型および ArE-TG胎仔の脳について組織標本を作製し、エストロゲンシグナルの投射部位や強度を in vivoイメージングや免疫組織化学的解析により比較検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ArE-TGマウスは純系のBALB/cマウスを遺伝的背景として維持しているため、繁殖力が弱く、思うように繁殖できないという問題がある。そのため行動試験を十分に行うためのマウスを確保することができず、実験動物費用が予定していたほど必要なかったことが一因と考えられる。またイメージング解析も期待したほどの感度ではなく、むしろ免疫組織学的解析の方が高感度だったため、イメージング解析に必要だったはずの試薬代が不要になったことも原因であると考えている。 今後も精力的にArE-TGマウスの繁殖を進め、円滑に実験できるように最善を尽くすととも に、イメージング用試薬費用として予定していた予算を、免疫組織学的解析に必要な試薬代等に充てて、研究を進める予定である。
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Research Products
(12 results)