2014 Fiscal Year Annual Research Report
亜鉛シグナルによる記憶障害から視たアルツハイマー病克服に向けた戦略的新展開
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25293032
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
武田 厚司 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (90145714)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / アミロイドβ / 細胞外Zn2+ / 記憶 / 海馬歯状回 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病の発症機構には、発症前より細胞外に分泌されるアミロイドβ(Aβ)の蓄積に起因するというアミロイド仮説が認知されている。可溶性のAβオリゴマーは、記憶形成の分子メカニズムとされる海馬の長期増強(Long-term potentiation: LTP)を抑制し、記憶を障害することが多数報告されている。一方、Zn2+にはAβのオリゴマー化を促進する作用がある。本研究では、Aβの神経毒性は内因性Zn2+を介して発現するとの考えを検証することを目的に、ラット海馬歯状回領域にAβを投与し、LTPおよび記憶の障害に対するシナプスZn2+の関与を検討した。Aβ1-42を歯状回に投与して1時間後、LTPは生食投与群に比べ減弱した。この減弱は、AβとZnCl2の同時投与で増強された。Aβ投与によるLTPの減弱は、細胞外Zn2+キレーターCaEDTAおよび細胞内Zn2+キレーターZnAF-2DAの同時投与で回避された。歯状回へのAβ投与1時間後に物体認識記憶は障害されたが、この障害はCaEDTAまたはZnAF-2DAの同時投与によって回避された。一方、Aβ投与4時間後にはLTPならびに記憶の障害は観察されなかった。これらの結果より、Aβ投与によるLTPおよび記憶の一過性の障害に細胞外および細胞内のZn2+が関与することが示唆された。そこで、Aβをラット歯状回に投与し、歯状回顆粒細胞内Zn2+レベルを測定したところ、細胞内Zn2+レベルは有意に上昇し、この上昇は細胞外グルタミン酸シグナルに依存しないことが明らかとなった。以上より、細胞外Aβ1-42はZn2+と結合してZn-Aβオリゴマーを形成すること、形成されたオリゴマーは歯状回顆粒細胞に取込まれ、細胞内Zn2+レベルを上昇させ、一過性に記憶を障害することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究実績をPLoS One, Expert Opin. Ther. Tar.等の国際学術雑誌に掲載することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
アミロイドβ(Aβ)による一過性短期記憶障害のメカニズムをZn-Aβオリゴマーを介した細胞内Zn2+の増加から解析するとともに、獲得した記憶の消失に対するZn-Aβオリゴマーの作用についても追究し、当初の研究計画を推進する。
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Research Products
(15 results)