2014 Fiscal Year Annual Research Report
網膜疾患治療薬送達に向けた血液網膜関門カチオン性薬物輸送機構の解明とその実証
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25293036
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
細谷 健一 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (70301033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤沼 伸乙 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (30467089)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 血液網膜関門 / カチオン性薬物 / P-糖タンパク質 / Influx / ベラパミル / 血液脳関門 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は血液網膜関門(BRB)に存在するベラパミル認識型促進的輸送機構を明らかにし、さらに本機構を応用することで脳へと移行させず、網膜へと選択的かつ効率的な薬物送達を実現させることを目的としている。ベラパミルはP-糖タンパク質(P-gp)の輸送基質であり、このP-gpはBRB及び循環血液と脳とを隔てる血液脳関門(BBB)に発現し、網膜及び脳への薬物移行を制限することが報告されている。本年度はP-gpを欠損しているMdr1aノックアウトラットを用いたin vivo透過解析にて、BRBベラパミル輸送へのP-gpの影響を明らかにすることを目的とした。総頸動脈投与法にてP-gp欠損ラットにおける循環血液から網膜への化合物移行を評価した結果、受動拡散透過型化合物の移行性は野生型と比較し大きく変化しなかったことから、P-gp欠損によるBRBの構造的破綻は無いことが示唆された。ベラパミルに加え、P-gpの基質として報告されているキニジン及びジゴキシンの網膜移行性について、ジゴキシンについてはP-gp欠損マウスにおいて網膜移行性が野生型と比較し上昇したものの、ベラパミルとキニジンについて変化は観察されなかった。一方、脳移行性を同様に評価したところ、上記3化合物すべてについて野生型と比較し、P-gp欠損ラットにおいて移行性の上昇が観察された。本結果はBBBにおいてP-gpはこれら薬物の移行性に影響を与えるものの、BRBに発現するP-gpはベラパミルとキニジンの網膜移行性に影響を大きく与えないことを示唆している。さらに、P-gp欠損ラット網膜へのRI標識ベラパミル移行は非標識ベラパミル及びビンブラスチンによって低下したことから、循環血液からBRBを介した網膜へのベラパミル移行にinflux輸送担体が関与することが示唆され、本influx機構解明の重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ベラパミルを含めたカチオン性薬物輸送機能についての詳細を昨年度までに明らかにし、今年度は一般に中枢神経系組織におけるカチオン性薬物への移行を妨げるP-gpの影響を解明したという点で、計画通りに研究は遂行されてきている。 平成27年度は、(1)霊長類におけるBRBベラパミル認識型輸送機構の存在を検証、(2)このinflux輸送担体の分子実体の特定を計画しており、これらについても予備的検討と分子実体特定に向けた分子ライブラリー構築も進めており、最終年度までにはこれらについても一定の成果が望めるものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
研究推進方策として、現状として大きく研究計画を変更せざるを得ない事象は発生していないことから、当初の計画通りに研究を遂行する。具体的には以下の2点を平成27年度には取り組む。 (1)霊長類における網膜への薬物到達へのベラパミル輸送機能の有意性評価 アカゲザルへ [11C]ベラパミル(プローブ薬物)と共に薬物物性クライテリアを満たした薬物を投与し、後眼部への移行性に与える影響を評価する。一部の薬物について、[11C]及び[18F]標識が現実的であれば、投与後の網膜移行性を評価する。薬物投与後の静脈内濃度も並行して測定し、「薬物静脈内濃度」と「[11C]ベラパミル網膜移行性」を各種薬物について標準化し、ラットの検討にて明らかにした、物性クライテリアが霊長類においても適応するか検証する。 (2) BRB有機カチオン輸送システムのクローニング及び本分子を用いた薬物選定系の確立 申請者が見いだした分子、そしてそのサブタイプのopen reading frameを単離し、候補分子を発現したアフリカツメガエル卵母細胞(翻訳後修飾等の影響を加味する必要が考えられた際にはHeLa細胞等の哺乳類細胞)を構築する。本細胞を用い、[3H]ベラパミルをプローブとして取り込み輸送機能を評価する。また、in vitro BRBにおける輸送の寄与を、BRBモデル細胞遺伝子ノックダウン法によって評価する。以上の解析を通じ、本候補分子のinner BRB及びouter BRB両関門におけるベラパミル輸送への関与を明らかにする。さらに、候補分子BRB発現局在パターンをウサギとモルモットを用いて作成した、特異的ポリクローナル抗体を用い、免疫組織化学的に明らかにし、輸送の方向性を考察する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額として2,044円発生しているが、これは、平成26年度の計画研究を遂行する上で各種必要消耗品などを購入した際に、余り金として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度において購入・使用予定の消耗品 (薬物・培養器具など)や動物に使用する予定である。本年度は最終年度であるため、基本的に余り金が生じないよう、計画的に使用させて頂きます。
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Research Products
(27 results)