2014 Fiscal Year Annual Research Report
中心体周囲物質から見た神経変性症原因分子とHAP1の形態機能の関係解明
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25293045
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
篠田 晃 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40192108)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
國分 啓司 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00432740)
柳井 章江 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20284854)
藤永 竜太郎 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30335723)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 斑点小体 / アンドロゲン受容体 / アタキシン / PCM1 / HAP1 / 脳 |
Outline of Annual Research Achievements |
蛍光標識PCM1cDNA,huntingtin(Htt)cDNA,アンドロゲン受容体(AR)cDNAを作成した。ただしATX3cDNAは細胞内発現するものは得ていない。複数のPCM1抗体,Htt抗体、HAP1抗体等を作成・購入した。ATX3抗体は培養細胞で有効でも組織染色に使えるものが見つからなかった。 Neuro2A培養細胞内で、PCM1及びHttの局在は中心体周囲に星雲状集積しており、ATX3は細胞質と核内に散在していた。STB/HAP1cDNA導入で内因性PCM1とATX3はSTB/HAP1に局在し、Httは散在性に細胞質に広がった。GFP-PCM1cDNAの細胞内導入でHAP1のないSTB様構造ができ、HAP1cDNAの二重導入でPCM1はSTB/HAP1に局在した。GFP-ARcDNAをsteroid-freeでHAP1発現のない細胞への導入でARは細胞質に散在性に広がり、HAP1cDNA導入でSTB/HAP1に吸着された。HAP1の有無にかかわらず、androgen添加でARは核内移行した。GFP-HttcDNAの細胞内導入でHttは細胞質に散在性に広がり、HAP1cDNAとの二重導入でSTB/HAP1に局在が移った。脳内ではSTB/HAP1が発現する領域でPCM1はSTBに局在し、発現しない領域では散在性であった。どの領域でもHttは細胞質に散在性に、ARは核内に局在が見られた。 細胞周期は、Hela細胞にHAP1cDNA導入するとコントロールに比べ、間期が長くなる結果が得られ、分裂期のG2/M期やG1/G0期に対してS期が増える様子が観察された。HAP1発現の細胞ストレスへの影響は、現在、熱ショックストレス、小胞体ストレス、 proteasome/ubiquitin阻害ストレス、酸化ストレスの評価系を確立している段階にあり、同時にデータ採取も開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳内においてPCM1の局在の詳細が解明され、HAP1を発現する部位としない部位でその局在が異なることが明らかにされ、HAP1cDNA導入培養細胞でもSTB/HAP1にPCM1が局在するという発見がなされたことは大きい。またin vitroの実験でも内因性PCM1とHttがHAP1cDNAの導入で局在を変えるというHAP1の中心体機能修飾を強く示唆するデータが得られた。またHAP1cDNA、PCM1cDNA、HttcDNAプラスミドの作成ができ、PCM1cDNA単独細胞内導入でSTB様構造が出るという予想外の新たな発見データを得た。これらの点では計画以上の進展かもしれないが、細胞内発現を期待するataxin3cDNAができておらず、また培養細胞化学にも脳の免疫組織化学にも使える有効なataxin3抗体ができず、また見つからず、ataxinの解析が遅くれている。また、PCM1cDNA単独細胞内導入でSTB様構造が出たことは、同時にHAP1によるSTB形成誘導に疑問を投げかけ、PCM1やHAP1のノックダウンの実験を始め、予定が少し遅れている。 Hela細胞にHAP1cDNAを細胞内導入したものはコントロールに比べ、間期が長くなっている様子が観察された。さらに細胞周期G2/M期やG1/G0期に対してS期が増えている様子が観察された。このことは大きな発見にも繋がるので、いろいろな角度から慎重に進めているため時間を要している。種々のストレス実験も、42度1時間による熱ショックストレス、テュニカマイシンやタプシガルジンによる小胞体ストレス、MG132やラクタシスチン負荷によるproteasome/ubiquitin阻害ストレス、亜ヒ酸負荷による酸化ストレスの評価系を確立するのに時間を費やしている。 進展した内容と遅れている内容があるが、全体としてはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
HAP1を発現する部位としない部位でその局在が異なるという脳内PCM1の局在の詳細結果は重要なデータであり、HAP1cDNA導入培養細胞でもSTB/HAP1にPCM1が局在するという発見がなされたことは大きいと思われるので,論文発表をしたい。またin vitroの実験でも内因性PCM1とHttがHAP1cDNAの導入で局在を変えるというHAP1の中心体機能の修飾を強く示唆するデータが得られたので、さらに他の中心体関連分子の状況も検討した上で,論文発表を行う予定である。細胞組織化学的解析に有効なataxin3cDNAとataxin3抗体については継続的に作成を試みるが、PCM1やHtt,アンドロゲン受容体の研究を深める方向で集中する方が有効かもしれない。またPCM1cDNA単独細胞内導入でSTB様構造が出る発見データは、PCM1やHAP1のノックダウンの実験では確実でない可能性もあるので、HAP1KOマウスやHAP1トランスジェニックマウスを使った決定的な研究への発展を試みたい。 HAP1cDNA細胞内導入で間期が長くなり、細胞周期G2/M期やG1/G0期に対してS期が増えるデータは、形態学的アプローチに加え、他の生化学的アプローチを加え,慎重に進めたい。ストレスに対するHAP1の効果は、種々のストレス実験の結果を踏まえ、HAP1が有効に働くと思われるモデル系を見つけ、この系でアポトーシス誘導に際する中心体周囲物質の形態変化を解析する。
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Causes of Carryover |
HAP1cDNA、PCM1cDNA、HttcDNAプラスミドが作成でき、in vitroの実験でこれらの細胞内導入実験が進行し、細胞内PCM1cDNA単独導入でSTB様構造が出るという予想外の新たな発見データや、HAP1cDNAの導入で内因性PCM1とHttが局在を変えるという重要なデータを得た一方で、有効なATX3抗体やATX3cDNAができず、これに関する実験に研究費を使わなかったことがある。また、十分にSTB/HAP1を発現している神経細胞としていない細胞が見つからず、HAP1cDNAの強制導入した細胞を使った実験で代用したことで、これらに関連する実験に研究費を使わなかったことがある。また細胞死を誘導する実験系が十分始まっていないため関連する実験に研究費を使っておらず、タイムラプスイメージングの研究が数時間置きの写真撮影で代用したこと等で、次年度使用金額が出来た。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ATX3cDNAや抗体、HAP1を十分発現する細胞ラインを購入し、関連する実験を始める。これに加え、①HAP1の有無でPCM1とHttの局在が変化したデータを基に、他の中心体周囲の関連物質についても検討を加える。②PCM1cDNA単独細胞内導入でSTB様構造が出現し、同時にHAP1によるSTB形成誘導メカニズムとの関連にも興味があり、PCM1やHAP1のノックダウンの実験データを収集する。③PCM1やHAP1のノックダウン実験で確実でない場合、作成中のHAP1KOマウスやHAP1トランスジェニックマウスを使った決定的な研究への発展を試みる。④HAP1cDNA細胞内導入でS期が増え間期が長くなるので、他の生化学的アプローチ等でも確かめる。⑤様々なストレスによる出来るだけ多くのアポトーシス誘導系の確立を試み、これらに対するHAP1の効果とその際の中心体周囲物質の形態変化をスクリーニングする。
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Research Products
(8 results)