2013 Fiscal Year Annual Research Report
活性酸素シグナルによる精子幹細胞自己複製制御機構の解明
Project/Area Number |
25293067
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
篠原 隆司 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30322770)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 精子形成 / 幹細胞 / 活性酸素 |
Research Abstract |
体内に入った酸素は体の中でエネルギーを生み出す過程で、その一部が活性酸素に変化する。活性酸素は細胞内の情報を伝達するメッセンジャーとしての役割をもつと共に、その制御の異常は細胞膜に損傷を与え、細胞内の酵素を不活性化し、DNAの断片化を誘導する。そのため活性酸素は変成疾患を引き起こすになるのみならず、老化やがんの誘因として重要な役割を担っている。 生殖細胞においては、活性酸素による酸化ストレスは発生過程の卵子の染色体異常や受精後の細胞死に関与することが知られている。特に雄の生殖細胞では成熟した精子を含め、さまざまなステージの精子形成細胞にダメージをあたえ男性不妊症を引き起こす。これまでの研究で活性酸素は精子幹細胞に毒性をもち、細胞死を引き起こすと考えられていた。 今回の研究により、活性酸素の低下は試験管内で培養された精子幹細胞の増殖を抑制するのみならず、適度な量の過酸化水素の添加は幹細胞の増殖を促進する作用をもつことが分かった。更に、過酸化酸素で長期間培養された幹細胞からは正常な産子を得ることができた。生体内においても活性酸素の低下は精原細胞の増殖低下をおこし、活性酸素の産生に寄与するNADPH oxidase1 (NOX1) 分子欠損マウスでは幹細胞の自己複製能力が著しく低下していた。 従来、活性酸素は精子の運動率や機能を低下させる作用があることが知られており、男性不妊症の原因の一つとして考えられていた。しかしながら、今回の研究成果は活性酸素の低下が精子を作るもととなる幹細胞の増殖を低下させる作用があるということを明らかにすることができた。この結果は、不妊男性の活性酸素を低下させると幹細胞の能力が低下し、必ずしも精子形成全体には良い影響があるとは言えないことを示唆する。その点で我々の成果は不妊患者への治療のあり方を幹細胞のレベルから新たに見直す必要があることを示す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに活性酸素が精子幹細胞の自己複製に関与を明らかにすることができた。また、Nox1分子がその産生に大きな役割を果たすことも分かった。これは当初予想した以上の成果であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
計画書に記載されている残りの実験についても現在進行中であり、生体内におけるNox遺伝子の役割について更なる解析を行う。また試験管内におけるNox分子と活性酸素の関係についてもその自己複製シグナルとの関係を明らかにしていく予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1 1
|
Research Products
(6 results)