2013 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトアンジオテンシン受容体の構造情報に基づく血圧調節機構の理解から創薬へ
Project/Area Number |
25293068
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅田 秀基 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20399041)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白石 充典 九州大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00380527)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 構造解析 / GPCR / 膜タンパク質 |
Research Abstract |
平成25年度に予定されていた研究計画では、先行しているアンジオテンシン受容体2型(AT2)については結晶化を、1型(AT1)については安定化変異体の作製を行うこととであった。現状ではAT2については計画通り順調に進んでいるものと考えられる。しかしながらAT1については変異体の作製に問題があり必ずしも順調とは言えないのが現状である。 AT2については現在、細胞内第3ループに挿入しているT4リゾチームからアポ型チトクロームB562の変異体であるBRILを挿入する事で結晶化に成功した。これまでに検討していたT4リゾチームが挿入された変異体と今回新しく構築したBRIL挿入変異体と比較して、①昆虫細胞を用いた発現における生産量、②精製後の変異体サンプルにおけるゲル濾過の単分散性や熱安定性など、その性質に顕著な差は認められていない。しかしながら結晶はBRIL変異体でのみ得られている。この事は精製サンプルを用いた従来法による安定性の検討は必ずしも結晶のなり易さを反映するとは限らない事を示しているものと考えられる。 AT1については変異体の作製に時間を要しているのが現状である。AT2と異なり、AT1はN末端やC末端の欠損や細胞内第3ループへのT4リゾチームやBRILの挿入によって安定化していない。また、昆虫細胞を用いた発現、精製でも結晶化まで進んでいるAT2と比較して、ゲル濾過による単分散性の欠如や低熱安定性を示している。これはAT1の安定化が不十分である事が原因だと考えられる。以上のように現状ではAT1は結晶化を行えるようなサンプルは得られていない。しかし、得られたサンプルを基にAT1の安定化を目的とした特的抗体の作製が可能であるかどうかを検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度において、達成すべき内容はAT2の結晶化およびAT1の安定化変異体の作製であった。 AT2の安定化変異体単独での結晶化には成功していない。しかしながら、これまでの研究により得られていたAT2特異的抗体を結晶化バインダーとして用いる事でAT2の結晶性を飛躍的に増強出来る事が確認された。この結果、安定化AT2変異体の結晶化に成功した。この点において当該年度の目的は達成したものと思われる。また、この結果は本研究課題全体においても非常に有意義であると考えられる。一方、AT1については当該年度に予定していた安定化変異体の作製に至っていない。この原因としては、AT2と比較してAT1の本来の安定性が低い可能性が考えられる。また、N末端にBRILを挿入したGPCRの変異体で更なる高分解能の構造が解かれた。この結果は安定性がBRILの位置によって向上するかもしれないことを示している。次年度はこのような結果も考慮し安定化AT1変異体の作製を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針としては、まずAT2とその特異的抗体の共結晶化において得られた結晶が蛋白質の結晶であることをSPring8のマイクロフォーカスビーム(BL32XU)を用いて検討する。また、現在得られている結晶は10μm以下であり、このサイズでは高分解能の構造を決定する事は非常に難しいと予想される。そのため、結晶化条件の最適化を行い結晶サイズの伸長を目指す。 一方、AT1については前年度と同様に安定化変異体の作製を行う。これまでに様々位置におけるN末端やC末端の欠損、T4リゾチームやBRILの細胞内第3ループへの挿入を行う事でAT1の安定化を目指してきた。まだいくつかの組み合わせにおいて検討がなされていないので、これらの組み合わせにより安定化に成功するかどうかを見極める。さらに、BRILの挿入位置において、細胞内第3ループに挿入するよりもN末端に挿入する方が高分解能の結晶が得られる可能性が示されたので、この点についても様々な位置で欠損したN末端にBRILを挿入することで安定化するかどうかを検討する。 以上が現状における本年度の基本的な推進方針である、しなしながら、AT2の結晶から得られる反射が構造解析に資するような結晶ではない場合や結晶化条件の最適化にも関わらず得られる反射が改善しない場合、AT2変異体の作製から見直す必要がある。この場合、AT2の変異体作製にかなりの時間を取られることが考えられる。さらに、AT2とAT1の進捗状況を比較すると、AT2の構造解析に成功する可能性の方が遥かに高いと考えられる。また、新規GPCRの構造を明らかにする事自体が非常に難しいという現状を考えると、AT1の安定化変異体の作製と同時並行でなく、AT2の構造解析に専念した方が本研究課題全体の推進にとって最良である可能性もある。これら様々な可能性を考慮した上本年度の推進方針を決定する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
AT2の大量生産には非常に高価な培地が大量に必要であり、そのために物品費として多く予算を計上していた。これはAT2の発現量が低く、5Lの培養で精製最終産物であるAT2が1mg程度しか得られない事からの措置であった。しかしながら、発現法や精製法の改良等によりその量が最大で5倍にまで飛躍的に向上した。この結果により大量発現のコストが大幅に低下した事が次年度使用額が生じた理由である。 AT1の安定化変異体の作製やAT2の大量発現、精製、結晶化等、本研究課題の遂行に現在の人員では足りない可能性があるので、人件費として使用する予定である。これは平成26年度の交付申請書中の予算案として既に計上済みである。
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Research Products
(1 results)