2014 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトアンジオテンシン受容体の構造情報に基づく血圧調節機構の理解から創薬へ
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25293068
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅田 秀基 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20399041)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白石 充典 九州大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00380527)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Gタンパク質共役受容体 / X線結晶構造解析 / アンジオテンシン受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度に予定されていた研究計画では、現在得られているアンジオテンシン2型受容体(AT2)とその特異的抗体の共結晶を大型放射光施設SPring-8のマイクロフォーカスビーム(BL32XU)においてタンパク質の結晶であることを検討する、および1型受容体(AT1)の安定化変異体の作製を行うことであった。 AT2の結晶化において、前年度までに得られた結晶の再現性は非常に良く、安定してX線回折実験を行うことができた。しかしながら、その分解能は構造解析に至る程ではないことが確認された。そこで本年度は、更なる結晶性の向上を目指してAT2変異体の作製およびリガンドの変更を行った。具体的には、AT2の細胞内第3ループに挿入されている細菌由来の親水性タンパク質であるbRILの挿入位置を変えることによる結晶性の変化を検討した。その結果、現在bRILを挿入している位置を変えると結晶の質がむしろ低下することが明らかとなった。さらに、AT2の精製・結晶化に用いるリガンドによる結晶性の変化を検討した。前年度までに用いていたリガンドはPD123319という低分子アンタゴニストであったが、Sarileというペプチドアンタゴニストによる結晶化を行った。AT2の変異体作製およびリガンドの変更を行った結果、昆虫細胞による生産量および精製純度に変化は見られなかったが、結晶化においては従来よりも結晶性の改善が認められた。そこで、この新しい結晶をBL32XUで回折実験を行ったところ、最大分解能が4Åで、空間群がI222、結晶格子がa = 95Å、b = 154Å、c = 415Å、α = β = γ = 90°であることが明らかとなった。 一方、AT1の安定化変異体の作製は非常に難航しており、現在までに結晶化に資するサンプルの調製までに至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度において達成すべき内容はAT2の結晶をSPring-8にてタンパク質の反射があるかを確認する、およびAT1の安定化変異体を作製することであった。 AT2において、得られたAT2とその構造特異的抗体の共結晶はタンパク質のものであるということが、SPring-8のマイクロフォーカスビーム(BL32XU)をもちいることで明らかとなった。さらに本年度の更なる結晶の最適化により、その分解能が向上し、最大分解能が4Å、空間群がI222、結晶格子がa = 95Å、b = 154Å、c = 415Å、α = β = γ = 90°であることが分かった。この点においては当該年度の目的は達成したものと考えられる。一方、AT1については当該年度に予定していた安定化変異体の作製には残念ながら至っていないのが現状である。この点においては残念ながら当初の目的を達成できていない。しかしながら、GPCRの構造解析の難しさを考慮すると全体としては概ね期待通りと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は本研究課題の最終年度であるので、AT2の構造解析に集中し、その構造を明らかにすることとする。現状では、AT2と抗体の共結晶化において、その結晶性は向上しており、またそれに伴い最大分解能の向上も認められた。しかしながら未だ構造解析にまでは至っていない。この原因として、①構造解析を行うために必要なデータを収集しきれていない、②最大分解能が足りないことが考えられる。これらの問題点は結晶化に問題があるものと考えられる。そこで本研究年度では、結晶化条件の最適化を行う。また、最低化の効果を実際にマイクロフォーカスビーム(1~10μm x 1~10 μm)を用いた回折実験によりその確認しながら進めて行く。また、現状得られている結晶のX線回折データの解析結果から結晶格子のc軸側が非常に長く、これが分解能に影響を与えている可能性が考えられる。現在使用しているAT2特異的構造認識抗体はFab化しているが、Fabは50kDa程の分子量であり、これはAT2とほぼ同じ分子量である。このことが結晶格子を大きくしている主要因であると考えられる。そこで、抗体のFv化を行う。FvはFabよりさらに小さい分子であり、ほぼ抗原認識部位のみで構成されている。このFvが AT2との共結晶化に用いることができれば結晶格子をこれまでより小さくすることができると考えられる。さらに、少しでも分解能が高い結晶を得る為にAT2の変異体作製を継続する。現在までの結果から、bRILの挿入位置の違いによる結晶性の向上は見込めない。従って、N末端およびC末端の欠損位置の検討を主に行う予定である。 以上のように、最終年度である本年度は現状得られている結晶の最適化およびAT2特異的構造認識抗体のFv化とその共結晶化によりAT2の構造を明らかにしたい。
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