2014 Fiscal Year Annual Research Report
M1アミノペプチダーゼ機能異常と自己免疫疾患病態の分子機構
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25293083
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
辻本 雅文 帝京平成大学, 薬学部, 教授 (00281668)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高須 清誠 京都大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (10302168)
小川 裕子 帝京平成大学, 薬学部, 准教授 (30267330)
小川 健司 独立行政法人理化学研究所, ケミカルゲノミクス研究グループ, 専任研究員 (50251418)
服部 明 京都大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (50300893)
後藤 芳邦 帝京平成大学, 薬学部, 講師 (90455345)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 小胞体アミノペプチダーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
小胞体アミノペプチダーゼ(ERAP)1は、MHCクラスI分子が細胞表面に提示する抗原ペプチドを小胞体内腔で生成する。最近私たちは、マクロファージにおいてトール様受容体リガンド(LPSなど)の刺激に伴い本酵素が細胞外へと分泌されること、そして、細胞外ERAP1がマクロファージの貪食やNO産生を亢進することを明らかにした。今回、ERAP1分泌現象を個体レベルで確認すべく、LPS投与前後のマウス血中におけるERAP1動態を解析した。 LPS(1 mg/kg)を腹腔内投与したマウス(C57B6)から経時的に採血し、血清を調製した。次に、血清中のERAP1量をウエスタンブロットにより解析したところ、LPS投与前から投与後12時間まではERAP1がほとんど検出できなかったが、投与24および48時間後にはERAP1が確認できた。すなわち、ERAP1は個体レベルにおいてもLPS依存的に分泌されることが明らかになった。また、ERAP1の分泌が確認された時間には、血中一酸化窒素濃度は上昇から低下に転じていたことから、ERAP1は急性期後期もしくは急性期終了直後に分泌されることが分かった。さらに、LPS投与による血中のロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)活性を経時測定したところ、LAP活性はLPS投与後6時間以内に一端10%程度低下し、その後12-24時間の間に投与前レベルまで回復した。この回復期はERAP1の分泌時期と完全に一致した。そこで、分泌されたERAP1の血中LAP活性への寄与について確認するためにERAP1遺伝子欠損(ERAP1-/-)マウス由来血清のLAP活性を測定したところ、LPS刺激前には野生型およびERAP1-/-マウス由来試料のLAP活性には差が認められなかったが、LPS刺激24時間後にはERAP1-/-マウス由来血中LAP活性は野生型マウスの90%程度を示した。また、血中アミノ酸(LeuやArgなど)濃度もLAP活性同様にLPS刺激前では両者に変化がなく、LPS投与24時間後では遺伝子欠損による低下が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ERAP1は自己免疫疾患、血管新生、炎症反応など多様な病態と関連することが示唆されている。本研究において私たちは本酵素がマクロファージの活性化に関与する可能性を示した。また他のグループは私たちの結果を追試するとともに本酵素がナチュラルキラー細胞を活性化すると報告している。これらの結果は本酵素が自然免疫系の活性化に重要な役割を果たすという、これまでには想定されてこなかったまったく新しい機能の発見を示している。したがって本報告を基盤とした研究を進展させることは、本酵素の生体防御における役割の解明に資する重要な知見を提供するものと考えられる。 本研究の提案はERAP1と特定の病態との関連を明らかにしようとするものであり、必ずしも提案した内容すべてについて検討がすすんでいるわけではないが、ここで見出した機能を追求することで本酵素と癌などの疾患との関連が議論できるようになることが期待される。したがって本研究はおおむね順調に進展しているものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において新たに見出した、ERAP1によるマクロファージの活性化および一酸化窒素の産生亢進作用を個体レベルで追求していく。すなわちERAP1遺伝子のノックアウトマウスを用いて、1)細菌およびウイルス感染時におけるマクロファージの活性化を野生型と比較する。2)細菌およびウイルス感染時における一酸化窒素の産生量の比較およびその際の血圧の動態等を検討し、in vivoにおけるERAP1の機能について検討する。 またこれまでの検討でERAP1の阻害剤候補化合物を数種絞り込んでいる。今年度中にそれら候補化合物の評価をおこない、その有用性を確認していく予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度は前年度に作成したノックアウトマウスを使用した研究を開始したが、その過程でERAP1遺伝子欠損がマウスの行動に異常を惹起することを偶然見出した。そのために規模の大きな研究をセットせず、より慎重な実験を主に行ってきたため、予定していた消耗品の消費量には届かず、残余金がでた。今年度は規模を拡大するためこれらの資金が必要となると判断している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度が本研究課題の最終年であることから、研究成果のまとめ、発表する機会が増えることが考えられる。特にノックアウトマウスを使用した個体レベルの成果を確認するためには充分な費用が必要であり、今回繰り越した研究費は動物の維持、管理に充当する予定である。
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Research Products
(2 results)