2014 Fiscal Year Annual Research Report
免疫・造血・心血管系疾患関連遺伝子Lnk/Sh2b3による制御破綻と病態形成機構
Project/Area Number |
25293097
|
Research Institution | Research Institute, International Medical Center of Japan |
Principal Investigator |
高木 智 独立行政法人国立国際医療研究センター, 研究所, 免疫制御研究部長 (10242116)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 疾患関連遺伝子 / 自己免疫 / 骨髄増殖性疾患 / 免疫学 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
セリアック病や1型糖尿病などの自己免疫疾患、骨髄増殖性疾患、高血圧及び心血管障害の共通のリスクファクターとして、細胞内アダプター蛋白質Lnk/Sh2b3の多型や変異が同定され注目されているが、免疫寛容破綻や慢性炎症との関連は全く不明である。リスクファクターになりうる疾患群を考慮し、腸管組織障害や膵島障害の病態形成及び維持にLnk/Sh2b3の機能破綻がどのように関連するか検討を進めた。改良型GFPであるVenusをLnk/Sh2b3遺伝子座にノックインし、Lnk/Sh2b3発現をモニターできるレポーターマウスを樹立し、報告がなされていたB細胞や造血前駆細胞以外に末梢T細胞や樹状細胞でもLnk/Sh2b3発現を確認した。T細胞におけるLnk/Sh2b3欠損の影響を解析し、欠損マウスでは活性化CD8+T細胞が増加すること、この増加はIL-15反応性亢進に因ることを見出した。組織障害に着目して検討し、腸管組織でも活性化CD8+T細胞が増加し、小腸遠位部の絨毛萎縮を自然発症することがわかった。絨毛萎縮はLnk欠損CD44+CD8+T細胞をリンパ球欠損マウスに移入することで再現された。Lnk/Sh2b3機能障害がIL-15反応性亢進による活性化CD8+T細胞の蓄積から腸管障害を起こすこと、セリアック病の病態形成に繋がる可能性を初めて明らかにした。 さらに、免疫応答の発動に重要な樹状細胞における変化を解析した。Lnk欠損では樹状細胞が増加しておりGM-CSF やIL-15に対して感受性が亢進すること、様々な環境下においてIFN-γ産生性Th1細胞を誘導する機能が亢進することがわかった。IL-15反応性亢進により樹状細胞上のIL-12R鎖の発現が上昇しIL-12のオートクライン的な作用によりナイーブT細胞へのIFNγ供給が増強していること、GM-CSF反応性亢進によってレチノイン酸産生能が増強する結果TGFβ存在下に制御性T細胞が誘導される環境下においても IL-15とGM-CSFによってIFNγ産生性Th1細胞が誘導されることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、腸管での自己免疫様組織障害機構を明らかにしセリアック病モデルとしての可能性を提示した。Lnk欠損マウスでは、IL-15への反応性亢進によりCD44を高発現するメモリー型 CD8+T細胞が有意に増加していた。さらに回腸遠位部の絨毛萎縮が自然発症することを見出した。Lnk欠損CD8+T細胞を野生型CD4+T細胞とともにリンパ球欠損(RAG欠損)マウスに移入する事により再現され、絨毛萎縮にCD8+T細胞が大きな役割を果たしていることがわかった。Lnk欠損によるIL-15反応性亢進により、CD8+T細胞の活性上昇から腸管障害に繋がるかについて、IL-15欠損との交配により検討した。Lnk欠損IL-15欠損マウスでは腸管絨毛の萎縮はみられず、IL-15に対する反応性亢進が重要であることが判明した。 また、樹状細胞におけるLnk/Sh2b3の機能と免疫応答への影響について解析し、様々な環境下においてIFN-γ産生性Th1細胞を誘導する機能が亢進することを明らかにした。この分子機構についての詳細を明らかにし、Lnk欠損及び機能障害においては、樹状細胞によるプライミング時にIFNγ産生性Th1細胞が誘導されやすいこと、Th1免疫応答による感染防御に有利に働く可能性があり、一方で組織障害が起こりやすくなることを解明した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は糖尿病の病態形成におけるLnk依存性制御の破綻の影響と細胞標的を解析する。1型糖尿病とLnk/Sh2b3遺伝子のSNPとの関連が報告されているが、どの細胞のどのような反応性に影響し膵島障害のリスクとなるのか全くわかっていない。予備実験から、Lnk欠損マウスでは血糖値の上昇傾向がみられることが明らかになってきている。耐糖能やインスリン抵抗性を解析する。脂肪組織、膵臓組織に浸潤する血球細胞や組織構成細胞の変化をフローサイトメトリーや遺伝子発現解析によって解析する。RAG欠損マウス、IL-15欠損マウス、MyD88欠損マウスとの交配により、血糖値上昇の変化を解析する。さらに上記系統や交配で作成したマウスをドナーやレシピエントして用いて骨髄移植マウスを作製し、免疫系細胞が再構成された後にグルコース負荷試験、インスリン負荷試験を行い、耐糖能およびインスリン抵抗性を評価する。これらの解析により血糖値上昇をもたらす責任細胞を同定する。Lnk-GFPノックインマウスを用いた解析からはリンパ球以外にも、NK細胞、樹状細胞、マクロファージ等の細胞集団にもLnk発現が観察されている。それらの細胞集団についてもサイトカイン産生や活性化の変化を解析する。Lnk欠損マウスに高脂肪食を負荷した場合の転帰を検討する。交配に血糖値改善がみられる群、血糖値上昇がみられる群に分類し、腸内細菌叢の変化について検討する。Lnk機能変化と腸管感染抵抗性に関係がみられるか検討する。
|
Research Products
(6 results)