2014 Fiscal Year Annual Research Report
日本住血吸虫中間宿主貝のゲノム情報プラットフォームの整備
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25293099
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
太田 伸生 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10143611)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊谷 貴 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40369054)
丸山 治彦 宮崎大学, 医学部, 教授 (90229625)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Oncomelania nosophora / 日本住血吸虫 / 中間宿主 / ゲノム情報 / 次世代シーケンサー / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は山梨県で野外採集したOncomelania hupensis nosophoraを一定期間実験室内で維持したものからDNAを抽出して山梨県産ミヤイリガイの核ゲノムおよびミトコンドリアゲノムの解析に着手した。野外採集サンプルであることから様々な微生物遺伝子の混入が予測されたが、貝の中腸と腹足を除いてDNAを抽出することにより、精度の高いサンプルが得られた(Mean Quality Score=36-37).このことを確認してゲノムサイズを推定したところ、1.47G baseであった。ヒラマキガイを参考に推定したが、それと比してはるかに巨大であった。これを10の8乗レベルのリードで解析を試みたが、結果としてはゲノムサイズに比してリードが量的に十分でなく、Hisecを用いたショートリード長解析においてもN50値が500以下と少なかった。次年度には用いるリードを約3倍に増加して解析を進め、より正確な解析資料とすることの必要が明らかになった。 ミトコンドリアゲノムについては今年度の解析で山梨県産Oncomelania属貝について全長を明らかにすることができ、N100値が16000以上でカバーすることができている。今後の系統解析に重要な資料として用いることができるデータを得ることができた。 中間宿主貝での宿主・寄生虫相互作用解析については、日本、中国、フィリピンの3つの地域について比較した感受性に関するチェッカーボード解析がほぼ完了し、Oncomelania属貝の日本住血吸虫幼虫の感受性解析に向けた基礎資料は整理がすんだ。これをもとに遺伝子発現データの比較を行って感受性の責任遺伝子解析に進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本住血吸虫の中間宿主であるOncomelania属貝として山梨県産のミヤイリガイからのDNA抽出の解析をくり返した結果、野外生息地由来の貝サンプルを使うことのために当初懸念された様々な微生物混在による解析の困難はなく、一定期間実験室内で維持した貝サンプルを使えば、十分に満足すべき高い精製度のゲノムDNAが取れたと判定できた(% of Q30 Bases=93-94))。今年度の解析の結果、ミヤイリガイのゲノムサイズについての推定値は1.47G baseと巨大であり、それに比して用いたリードが少な過ぎたことは反省点であるが、これほどの巨大ゲノムサイズであることはヒラマキガイとの比較からは予測できなかった。また年度計画にあげていたミトコンドリアゲノムについても日本産ミヤイリガイについては遺伝子構成の確認まで進めることができた。またゲノム全体のGCバイアスについてのデータも得られたことなど、核ゲノムの解析について当初の目標にほぼ沿って知見が得られつつある。 日本住血吸虫の中間宿主でOncomelania属貝の住血吸虫寄生による貝の宿主応答の検討も課題としてあげていたが、日本、中国及びフィリピンに分布する日本住血吸虫と日本及び中国のOncomelania属貝の寄生適応性の検討を進め、地理的分布を異にする日本住血吸虫とOncomelania属貝に関するチェッカーボード解析データをほぼ完成させた。 一方で、ミトコンドリア遺伝子を指標とした日本国内(山梨と木更津)および中国産Oncomelania属貝の系統解析は、ミトコンドリア遺伝子の解析を山梨産の貝で先行してきたので、他の地理分布の貝については次年度に持ち越した。しかし、そのデータの整備は困難ではないので、次年度には十分にカバーできると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本事業の2年めを終了して、今後さらに解析を進めることができる3つの項目が明らかになった。第一にはOncomelania属貝(ミヤイリガイ)核ゲノムの正確な解析、第二にミヤイリガイミトコンドリアの全配列の決定、第三にミヤイリガイと日本住血吸虫の相互作用を貝遺伝子のトランスクリプトームとして解析することである。そのうち最も重要なことはミヤイリガイ核ゲノムの正確な解析であるため、さらに解析のためのリードを増やして詳しい解析に進めていく。現状のミヤイリガイサンプルで現状の方法論で解析が十分に可能であることが確認できたことによる。この解析は将来的にはOncomelania属貝の亜種の比較にも不可欠な情報となり、系統解析がさらに進むことになる。比較的負担の少ない解析として、ミヤイリガイに日本住血吸虫ミラシジウムを感染させた場合の貝の側の応答を解析することを計画しているが、Oncomelania属貝の日本住血吸虫適応性の分子レベルでの解析が進めば中間宿主レベルでの宿主寄生体相互作用の解析に新たな展開が広がるほか、従来から議論がある貝と住血吸虫の共進化についても情報が得られる可能性がある。ミトコンドリアの全ゲノム解析も、日本国内に点在したミヤイリガイの地理分布ごとの特徴を解析するのに重要であり、いわゆるミヤイリガイstrainをミトコンドリアゲノムの情報と共に整理することができると、ミヤイリガイの地理分布の違いによる生物学的差異の解析に指標の一つとなりうる。
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[Journal Article] A new surveillance and response tool: risk map of infected Oncomelania hupensis detected by Loop-mediated isothermal amplification (LAMP) from pooled samples.2015
Author(s)
Tong QB, Chen R, Zhang Y, Yang GJ, Kumagai T, Furushima-Shimogawara R, Lou D, Yang K, Wen LY, Lu SH, Ohta N, Zhou XN.
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Journal Title
Acta Tropica
Volume: 141
Pages: 170-177.
DOI
Peer Reviewed
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