2014 Fiscal Year Annual Research Report
結核菌肺感染局所へのT細胞ターゲッティング機構の解明と新規ワクチン開発への応用
Project/Area Number |
25293105
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
松崎 吾朗 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (30229455)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅村 正幸 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (90359985)
大原 直也 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70223930)
新川 武 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (50305190)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 細菌 / 結核 / 感染 / 免疫 / 生体防御 / ケモカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
肺結核に対する防御免疫では、結核菌抗原特異的インターフェロン(IFN)-γ産生CD4+T(Th1)細胞の感染局所への誘導が重要である。このTh1細胞は、結核菌感染マクロファージの活性化と殺菌能増強に働くとともに、結核菌を排除できないマクロファージの拡散を防ぎ病原体を封じ込める肉芽腫形成にも必須である。このTh1細胞を効率よく肺感染局所に誘導することができれば、現行の抗結核ワクチンであるBCG接種の効率を飛躍的に向上させることが可能と考えられるが、その誘導のメカニズムは現時点では不明瞭である。この点を解明するために、白血球の感染局所への誘導に中心的な役割を果たすと考えられるケモカイン/ケモカインレセプター群の発現について検討を続けている。特に感染初期の免疫応答を明らかにするため、安定した数の菌の接種が可能なMycobacterium bovis BCG肺接種モデルマウスを用いて、獲得免疫が成立した直後の感染28日目を中心に解析を行った。 感染肺に誘導されるTh1細胞が高レベルに発現するケモカインレセプターをフローサイトメトリー(FCM)法で検討したところ、CXCR3, CCR4, CCR5が同定された。これらのリガンドとなるケモカインの遺伝子発現も感染後に増強していたため、これらのケモカインレセプターがTh1細胞の肺への遊走に関与すると推定された。この点をさらに明確にするため、抗CXCR3抗体で前処理した感染肺由来CD4+T細胞(Ly5.2+)を肺感染させたレシピエントマウス(Ly5.1+)に養子移入し、その肺への誘導を検討したところ、肺から分離されるドナー由来Ly5.1+細胞はほぼ半減しており、CXCR3がTh1細胞の肺への誘導に少なくとも部分的関与することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の申請の際に、その目的の中心を3つ設定した。すなわち、1)肺結核感染局所へのT細胞ターゲッティングを規定する分子の同定、2)上記の分子の発現を誘導する免疫応答条件の決定、3)遺伝子組換えBCGなどによる新規肺ターゲッティングワクチン戦略の開発、である。そのうち、最も基盤となる第1点については、ほぼ今後の方針が明確になってきた。また、今回同定したCXCR3は肺への誘導に関与したものの、他の臓器の炎症部位に遊走する際にも重要であることから、臓器特異性を決定するとは考えがたい。従って、CXCR3は炎症臓器へのTh1細胞への動員に関与するが、そこから感染マクロファージの局在する肺微小環境へ遊走するにはCCR4またはCCR5が重要であるとの作業仮説を設定して、現在、これを検証している。この考えから、複数のケモカインレセプター発現の組み合わせが適切な結核菌感染肺へのTh1細胞誘導に重要であると推定されるため、この所見を基に速やかに第2、第3の点に研究を移すことが可能である。また、ワクチン戦略として、多様な機能を有する免疫アジュバントを収集中であり、これを用いた肺ターゲッティングワクチンの検討を準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、本研究プロジェクトの最終年度として、以下の点について研究を進めていく。 1.マイコバクテリア感染肺へのTh1誘導に関与するケモカイン/ケモカインレセプターの確定:これまでの研究結果に基づき、感染肺に誘導されたTh1細胞が発現するケモカインレセプターCXCR3、CCR4、CCR5が規定する感染肺内の誘導のパターンを、抗体による中和ならびに組織学的な解析により確定する。また、新規肺組織培養法LOC-FIT法によるその確定実験を試みる。さらに、本研究で解明される肺誘導型ケモカインレセプター発現の意義をより明確にするため、各ケモカインレセプターのリガンドであるCCL5、CCL8、CCL22、CXCL9、CXCL10の局在を組織学的に明らかにする。 2.肺誘導性ケモカインパターンを決定する環境の検討:上記1で確定する、肺へのTh1細胞動員に必要なケモカインレセプターの誘導に必要な条件を、結核菌抗原特異的トランスジェニックT細胞とBCG感染樹状細胞の共培養系に各種サイトカインを加える培養系で検討する。 3.肺誘導性ケモカインパターンを発現するTh1を誘導するワクチン戦略の検討:現在収集している各種細菌由来あるいは自然抽出物由来アジュバント候補を用いて、結核菌抗原とともにマウスに投与し、これにより誘導されるTh1細胞のケモカインレセプターのパターンを検討することにより、肺誘導型ワクチン候補の第1次スクリーニングとする。このスクリーニングで効果が期待されるものが見出されたら、ワクチン接種後に結核菌を肺接種し、菌排除能の増強効果を検討する。
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