2013 Fiscal Year Annual Research Report
終末糖化産物受容体阻害アプタマーの開発と心血管病、癌への応用
Project/Area Number |
25293127
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
山岸 昌一 久留米大学, 医学部, 教授 (40281026)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | AGE / アプタマー / RAGE / 酸化ストレス |
Research Abstract |
近年、糖尿病に伴う血管障害に終末糖化産物(Advanced Glycation End Products、以下AGE)の産生、蓄積の亢進が関わることが明らかになってきた。さらに、 AGE が、AGEを認識する受容体(Receptor for AGE、以下RAGE)に結合することで、情報伝達系が活性化され、様々な臓器合併症をひきおこすことも知られてきた。本研究では、AGEを認識し、病的シグナルを伝達する細胞表面受容体RAGEに特異的に結合し、その作用を阻害するDNAアプタマーを開発し、糖尿病モデル動物や担癌動物に投与することにより、当該アプタマーの糖尿病性大小血管症、心血管リモデリング、癌への有効性を検証し、将来の臨床応用への可能性を模索することを目的とする。平成25年度、我々は、(1)RAGEの可変領域を含む可溶型RAGE蛋白発現ベクターを構築し、可溶型RAGE蛋白を大量に精製した。(2)既報のSELEX法により(Microvas Res 2007,74,65-69)、可溶型RAGE蛋白の可変領域に結合する高親和性のアプタマーを探索した。(3)ついで、候補アプタマーの中から、RAGE阻害機能を有するアプタマーを絞り込んでいった。具体的には、まず、固相化したAGEに対する可溶型RAGEの結合を阻害できるRAGEアプタマーの中から、高親和性のアプタマー(Kd=1nM)をELISA法で選択し、当該アプタマーがRAGEと結合することでAGE-RAGE相互作用をブロックすることをQCMにて確認した。さらに、当該アプタマーが、100 μg/mlのAGEにメサンギウム細胞を4時間暴露させた時に生じる酸化ストレス産生(DCFDA法で計測)と炎症性サイトカインや接着因子の遺伝子(RAGE, ICAM-1)発現の誘導(定量性RT-PCR法で計測)を完全に抑制することが見いだされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度は、RAGEに特異的に強固に結合し、かつ、AGEの生物作用をブロックできる安定化させたDNAアプタマーを探索することが当初の実験計画だった。上記、研究実績の概要にもあるように、Kd値1nMのRAGE阻害アプタマーを複数個(10個)、同定することができ、計画は予定通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年初頭から動物実験を開始する。6週齡のSprague-Dawley(SD)ratにストレプトゾトシンを投与して、糖尿病モデルラットを作製する。このラットにRAGE-アプタマーあるいはコントロールアプタマーを投与し、経時的に(約5ヶ月間)以下の項目について評価し、非糖尿病コントロールラットと比較検討する。 ①網膜血管へ接着した白血球数及び血管透過性亢進の程度を定量化する(1,3ヶ月目)。②VEGFやICAM-1の発現をreal-time PCRならびにwestern blotにより解析し、両因子発現に及ぼすRAGE-アプタマーの影響について検討する(1,3ヶ月目)。③ 腎機能、腎重量、血圧、尿中微量アルブミン量、蛋白尿ならびに尿中ネフリン排泄や尿細管障害マーカー排泄に及ぼす影響を測定する(1,3,5ヶ月目)。④ 酸化ストレスマーカーの尿中排泄量や腎組織におけるVEGF、MCP-1の発現をELISA法やreal-time PCRならびにwestern blotを用いて検討する(1,3ヶ月目)。⑤ 組織学的に糸球体硬化症や尿細管間質病変、ポドサイトロスの程度や足突起の癒合に及ぼすAGE-アプタマーの効果について検討する。(3,5ヶ月目)。⑥ 糖尿病ならびにコントロールラットにバルーン傷害モデルを作製後、RAGE-アプタマーあるいはコントロールDNAアプタマーを投与し、障害部位血管における血管リモデリングの抑制を組織学的に検討する。⑦ 次いでマクロファージの浸潤や平滑筋細胞の増殖・遊走について組織学的な検討と、real-time PCRならびにwestern blotによるVEGFやMCP-1の発現の検討をおこなう。あわせて組織でのAGEや RAGEの発現およびNADPHオキシダーゼの発現やNF-κBの活性化の抑制についても検討する(2,4週目)。
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