2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25293139
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
尾内 善広 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30360522)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 遺伝分子疫学 / 川崎病 / 巨大冠動脈瘤 / 頻回再発例 |
Research Abstract |
【川崎病巨大冠動脈瘤合併症例の調査】川崎病巨大冠動脈瘤合併患者の発生は年間30名程度と,頻度は決して高くなく,かつ症例は全国に散在している.そのため,まず該当する患者が通院する医療機関を把握するため,過去の川崎病全国調査の記録の中から巨大冠動脈瘤の報告を行った施設の情報を抽出した. 【医療機関に対するアンケートの送付】第16回~22回全国調査(1999年~2012年)成績から263症例に関する報告医療機関の情報を得た.これら,あるいは研究協力者の追跡調査により判明している,報告医療機関とは異なる患者の現在の通院先(合計117施設)に対し,患者家族への協力要請の文書を発送した. 【試料・診療情報提供のための準備】ご家族からの研究協力の内諾の有無を施設からFAX回答用紙にて受け取り,協力可能と回答のあった施設(37施設)に対しては研究代表者らが国内で組織している川崎病の遺伝学的多施設共同研究「川崎病遺伝コンソーシアム」への参加と「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」に準じた研究計画の倫理委員会への申請を依頼した.今年度は14施設から遺伝コンソーシアムへの参加申し込みを受け,現在までに4施設において倫理委員会での承認が得られた. 【川崎病頻回罹患症例家族の遺伝学的検討】川崎病の再発率は約3%であり,その殆どが2回罹患である.だが稀に3回以上頻回に発症し,極めて強い罹患感受性を示す症例が存在する.再発例は致命率が約3倍高いことが過去の疫学調査から知られており,このような頻回再発例の検討により罹患・重症化に強く関連する新たな遺伝要因を特定できる可能性がある.そこで本研究での検討に頻回再発症例も含めることとし,6回発症例および3回罹患例をそれぞれ含む2家族の全ゲノムシークエンス解析を外部委託により開始した.1家族(同胞3名と両親)と別の家族のうちの1名のシークエンスが済んでいる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は目標症例数(30例)の収集と全エクソーム解析の実施を目標としていたが,全国調査における巨大瘤症例報告施設からの新た症例の収集開始には残念ながら至らなかった.その理由としては,初期の計画では試料収集開始までに要する時間を過小評価していた点が最も大きいと考える.川崎病患者の外来通院は数ヶ月~1年に一度であることが多い.各医療機関が該当患者の受診時に研究協力に関しての打診を行い,その結果を受けて倫理申請のための書類作成に着手し,直近の研究倫理委員会にて審査・承認を受け,さらに承認後最初の患者受診時に試料提供を受けるという流れが非常に順調に進んでも数ヶ月、多忙な小児科医の状況を考慮すれば依頼状の発送から試料提供の開始まで半年から1年程度の時間を要することも十分予想出来たからである.
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Strategy for Future Research Activity |
25年度に引き続き川崎病の巨大冠動脈瘤合併症例および頻回再発症例およびその家族のDNA試料収集を行う.巨大冠動脈瘤合併症例については試料提供予定施設に対し適宜郵便や電子メール等で状況の確認に務め,可能な限り早期の目標症例数への到達を目指す.また倫理委員会への申請書類の作成を積極的にサポートすることで,スピードアップを図る予定である. 今回の目標症例数を設定根拠は費用面上の理由が最大であったが,研究の目的からすれば一例でも多く解析することが望ましい.そこで全エクソーム解析は国内の次世代シークエンサー保有施設との共同研究で実施することとした.外部委託と比較して解析コストを削減され,目標数以上の収集が得られた場合にも対応可能とし,研究費の最大限の有効活用を図る. さらに川崎病遺伝コンソーシアム参加機関に対し頻回再発症例に関しての協力も要請し、試料収集にも務める. 全エクソーム解析や全ゲノムシークエンス解析の結果見出された新規の非同義置換(変異),データベースに登録があるが稀な非同義置換をバイオインフォマティクスや遺伝学的解析により絞込み有力な候補遺伝子を見出す.それらの遺伝子が関与するパスウェイに属する遺伝子群について,一般的な川崎病患者の罹患感受性や重症化に関するSNPの関連解析を,これまでの研究で収集した川崎病患者および健常対照者を対象とし順次行う.関連が確かめられたSNPに関し遺伝子機能への影響をin silicoで予測,またin vitro実験にて検証する.また日本人川崎病患者で得られた知見を台湾・韓国・米国の研究者と共同でそれぞれの所有する川崎患者DNA試料および臨床情報を解析し検証する.最後に本研究を通じ得られた知見を取りまとめ,学術雑誌や学会等で報告する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試料の収集に想定したより時間がかかっていることにより,収集した試料の解析を25年度に実施することが出来なかったことによる. 次年度使用額470万円および請求した60万円の補助金のうち216万円を頻回再発例家族4人分(同胞2名と両親)の全ゲノムシークエンス解析に充てることを予定している.また巨大冠動脈瘤症例および頻回再発例の解析やそれに続くパスウェイ解析等により見出された川崎病の罹患感受性および重症化の関連遺伝子の新たな候補に対して行うSNPの関連解析,SNPや遺伝子機能の解析に必要な機器,試薬等の購入に約250万円,国内外の学会参加や試料提供機関との打ち合わせの出張のための旅費として約60万円を充てる予定である.
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