2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25293139
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
尾内 善広 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30360522)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 遺伝分子疫学 / 川崎病 / 巨大冠動脈瘤 / 頻回再発例 |
Outline of Annual Research Achievements |
[川崎病巨大冠動脈瘤合併症例の遺伝学的解析] 研究対象となる川崎病巨大冠動脈合併症例を全国の医療機関の協力を受け収集するため,昨年度に引き続き第16回~22回川崎病全国調査における症例登録医療機関に対する協力の呼びかけと,協力可能の回答を得た施設に対する倫理申請のサポートを継続して実施した.昨年度末時点よりあらたに6施設から協力可能の回答を得ることができ,合計43施設から試料の提供を見込めることとなった.倫理委員会での承認の後,順次試料及び臨床情報の提供を受け,平成27年3月末時点で合計26例の収集が実施できている.このうち6例についての全エクソームシークエンス解析を終了した. [川崎病頻回罹患症例家族の遺伝学的解析] 3回以上川崎病を発症した既往を有し,通常とは異なる高い罹患感受性を有すると考えられる川崎病頻回罹患症例を非既往者を含む家族とともに遺伝学的に解析し,患児の罹患感受性の背景にある遺伝子の変化を探索し新たな罹患感受性遺伝子を特定することを目指している.平成25年度内に1家族(患児2名と両親の4名)の全ゲノムシークエンス解析が終了し,それぞれが有する一塩基置換,ゲノムコピー数の多型,挿入・欠失多型などの情報を得た.それらの一般集団内における頻度,家族内での共有の状況,遺伝子の発現やタンパク機能に及ぼす影響のコンピュータ上での予測などを組み合わせ,原因の候補となる遺伝子変異の抽出を実施した.もう1家族(患児2名,未既往同胞1名,両親の5名)については患児1名のみ平成25年度内に試料の収集と全ゲノムシークエンス解析が終了していたが,今年度,追加で3人の試料収集を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
巨大冠動脈瘤症例は目標としていた30例に近い26例の収集を行うことができ,全エクソーム解析を開始することが出来たが,頻回再発例の1家族については患者本人ではなくその家族(父親)の医療機関への来院の都合がつかず,試料採取が遅滞している.
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Strategy for Future Research Activity |
巨大冠動脈瘤症例26例分の全エクソーム解析を進めると同時に,新たな巨大冠動脈瘤症例の収集に務め,収集し得たものについては随時全エクソーム解析に追加で実施する.未収集試料のある頻回罹患症例家族については,患児の診療を行っている医療機関に対し収集の見込みについて確認を行い,27年度前半までの収集が困難と判断される場合には収集済みの家族試料のみの全ゲノムシークエンス解析を先行させ,遺伝学的解析から可能な限りの情報を抽出する予定である.巨大冠動脈瘤症例の全エクソーム解析,頻回罹患例家族の全ゲノムシークエンス解析により,塩基置換や挿入・欠失,ゲノム構造の変化等が症例毎に多数見出されるが,それらの中から遺伝子の機能や発現量に影響を及ぼす可能性の高いものを抽出し,さらにそのような変化が生じた遺伝子が共通して属する分子パスウェイの特定を試みる.次にパスウェイ上の遺伝子のSNPと既に収集済みの一般的な川崎病患者の罹患感受性や重症化との関連を解析する.関連が確かめられたSNPに関し遺伝子機能への影響をin silicoで予測,またin vitro実験にて検証する.また日本人川崎病患者で得られた知見について他人種における関連の再現性を海外の共同研究者と共同で検証し,最後に本研究で得られた知見を取りまとめ,学術雑誌や学会等で報告する.
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Causes of Carryover |
頻回罹患例家族4人分(同胞2名と両親)の全ゲノムシークエンス解析を26年度に予定していたが,研究の効率を考慮し試料未収集の1名からの協力を待った結果,年度内の解析に至らなかった.巨大冠動脈瘤症例に関しても試料収集のための諸手続きに多くの時間を費やし,26例の全エクソーム解析の開始まで到達したが,その解析結果を受けたin silico解析, in vitro実験の開始は27年度に持ち越された.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額340万円および請求した60万円の補助金のうち216万円を頻回再発例家族4人分(同胞2名と両親)の全ゲノムシークエンス解析に充てることを予定している.巨大冠動脈瘤症例および頻回再発例の解析やそれに続くパスウェイ解析等により見出された川崎病の罹患感受性および重症化の関連遺伝子の新たな候補に対して行うSNPの関連解析,SNPや遺伝子機能の解析に必要な機器,試薬等の購入に約124万円,国内外の学会参加や試料提供機関との打ち合わせの出張のための旅費として約60万円を充てる予定である.
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