2013 Fiscal Year Annual Research Report
重大外傷をアウトカムとした転倒リスクアセスメントの多施設共同研究による有用性検証
Project/Area Number |
25293157
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
鳥谷部 真一 新潟大学, 危機管理本部, 教授 (20227648)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 医療事故 / 医療安全 / 転倒 / 転落 / アセスメント |
Research Abstract |
本研究では、院内での転倒・転落事故(以下、転倒)で重大外傷が発生する恐れがある患者をより高率に予測できるような、転倒後重大外傷発生リスクアセスメントツールの作成を目指している。信頼性のあるツールを作成するために、他医療機関に協力を求めて多施設共同研究を行う。当該年度ではまず多施設共同研究に参画する研究協力医療機関のリクルートから開始した。6医療機関に協力を呼びかけて、研究計画が実施可能かどうか個別に協議した結果、必要なデータのうち電子的に供与できないデータがあるという理由から、3医療機関は参画が困難であることが判明した。そのため本院を含む4医療機関で研究を開始することとした。次に、各医療機関において、研究計画全般に関して倫理委員会での審議と承認を求めた。研究計画では患者および職員個人情報は削除して非連結匿名化を行うこととしているが、調査研究の内容は医療事故に関わることであることから、繊細な扱いを必要とする。そのため、各医療機関でそれぞれ倫理審査を受ける必要があると考えた。これまでのところ、4医療機関すべてにおいて、倫理委員会の承認が得られている。次いで、研究に必要なデータ項目の抽出を、各医療機関で開始した。研究に必要なデータは、一定期間に入院していたすべての患者のデータであり、リスクアセスメントに用いる様々な患者背景に関わるデータや、転倒した患者については、転倒イベントに関わるデータが必要である。医療機関によって病院情報システムのベンダーが異なることから、各医療機関でデータ構造にも差異がある。今後は各医療機関の担当者からそれぞれの医療情報部門に照会してもらいながら、データ構造を調査する予定である。そのため、次年度では、研究協力機関にそれぞれ研究分担者を置いてデータ構造の調査とデータ収集を行う予定とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に予定していたのは、1.調査研究を遂行するにあたって、どのようなデータ項目を調べるかの絞り込みを行い、2.研究協力医療機関への協力要請を行い、3.本研究に参画する各医療機関において研究計画全体に関して倫理審査を受け、4.可能であればデータ収集を開始する、という計画だった。1のデータ項目の絞り込みについては当該年度内で終えることができた。2の研究協力医療機関への協力要請については、6医療機関に協力を依頼した。その結果、3医療機関では必要なデータが電子的に抽出できないことが判明し、本研究への参画を断念した。また、大学病院以外の急性期病院も本研究への参画を求めたが、やはりデータの電子的な抽出が難しいことが判明して断念した。結果として、本院を含めた4医療機関で共同研究を始める見込みが立ったため、概ね順調に進展していると考えられる。3の倫理審査については、研究協力機関のいずれにおいても倫理委員会の審査の結果、研究計画が承認されており、当初の予定以上に計画が進展した。4のデータ収集は一部開始していることから、予定通りに推移している。以上まとめると、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.データ収集の継続:引き続きデータを収集する。 2.リスク再アセスメント: 転倒リスクアセスメントは病院によって異なるツールを用いているのが現状である。病院間の差異をなくするため、得られた患者背景データから、海外で標準的に用いられているツール(STRATIFYなど)で再度アセスメントを行う。骨折リスクアセスメントにはWHOのFRAXを用いる。 3.データ解析: 1) 転倒後重大外傷発生のリスク因子の再現性チェック: 本院における解析では、転倒後の代表的な重大外傷である骨折も、頭蓋内出血も、その発生は転倒リスクだけではなく、骨折リスク(FRAXで評価)と密接に関連していた。この結果が、他大学病院や経営母体が異なる他の急性期病院でも再現されるかどうかを確認する。転倒のリスク因子に関する内外の研究では、専ら転倒発生までの時間を考慮しない解析方法(χ自乗検定、多重ロジスティック回帰分析)が用いられている。しかし、在院日数が長い日本の状況を考え、発生までの時間を考慮した解析も併用する(ログランク試験、Cox回帰分析など生存時間分析)。 2) 新たなアセスメントツールの有効性検証: 本院における先行研究では、転倒リスクスコアと骨折リスクスコアを組み合わせることで、骨折に限らず転倒後重大外傷を効率よく予知できた。しかも、時間を空けた2ポイントで再現性を持って有効性が確認できた。この結果が、規模も経営形態も異なる他病院においてもあてはまるかどうかを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は多施設共同研究であり、研究協力医療機関のそれぞれにおいてデータ収集を行い、最終的には、研究代表者がデータを集約・保管し、解析を行う計画としている。当該年度は、研究協力医療機関の選定、各医療機関における研究計画全般に関する倫理審査、データ項目の照会を行った。しかし、各医療機関においてもっとも物的・人的コストを要するデータ収集は、本格的に始めるには至らなかった。そのため、これらの作業に要すると見込んでいた研究費は次年度に持ち越すこととした。 次年度では各研究協力医療機関において本格的なデータ収集を行うことになるので、そのための物的・人的コストを各医療機関へ供与する必要がある。各医療機関それぞれに研究分担者を置き、研究費を分与して、データ収集を行う予定である。また、各医療機関から得たデータを、研究代表者が集約して保管し、解析に入る予定である。各研究分担者に分与する研究費分と、これらデータの収集・保管・解析に要する費用を見込んでいる。
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Research Products
(1 results)