2014 Fiscal Year Annual Research Report
重大外傷をアウトカムとした転倒リスクアセスメントの多施設共同研究による有用性検証
Project/Area Number |
25293157
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
鳥谷部 真一 新潟大学, 危機管理本部, 教授 (20227648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
兼児 敏浩 三重大学, 医学部附属病院, 教授 (30362346)
鈴木 明 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (30322142)
安田 あゆ子 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (30402613)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 医療事故 / 医療安全 / 転倒 / 転落 |
Outline of Annual Research Achievements |
医療機関内で発生する転倒・転落事故(以下、転倒)はもっとも頻度が高い医療事故の一つであり、そのうちの数パーセントに骨折や頭蓋内出血などの重大外傷を合併する。重大外傷の発生は、転倒への対応において医療機関が最も苦慮する点である。本研究では、ある患者が転倒した場合に重大外傷が発生する恐れがあるかどうか予測できるような、転倒後重大外傷発生リスクアセスメントツールの作成を目指している。具体的には、研究代表者が所属する医療機関で開発したツールが、他の医療機関でも使用できるか、多施設共同研究を行っている。 これまでに研究代表者が所属する医療機関を含めて4施設で共同研究を開始した。各医療機関内の倫理審査委員会で研究計画への承認も得られたため、平成26年度は患者背景に関わるデータや、転倒に関わるデータを電子的に収集し、解析を開始した。 転倒後重大外傷発生リスクアセスメントは、転倒自体のリスクと、重大外傷発生リスクの両者を用いるが、転倒リスクのアセスメント方法は各医療機関で異なる。また、全入院患者を対象として、重大外傷とくに骨折リスクのアセスメントを行っている医療機関はほとんどない。そのため、医療機関の枠を越えて共通のアセスメント方法で転倒リスクおよび骨折など重大外傷発生リスクを評価し直すこととした。国際的に頻用されているSTRATIFYツールで再評価したところ、いずれの医療機関においてもSTRATIFYで転倒高リスクと評価された患者群は、低リスクと評価された患者群よりも高率に転倒が発生していた。重大外傷発生リスクも再評価し、重大外傷発生リスクアセスメントツールが、4医療機関のいずれにおいても妥当であることがほぼ確認できた。次年度はこの結果をまとめて、学会や国際雑誌への発表を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に予定していたのは、1.研究協力医療機関から必要なデータを電子的に収集する、2.収集したデータを用いて、共通のリスクアセスメントツール(STRATIFYなど)を用いて転倒リスクおよび重大外傷発生リスクを再評価する、3.再評価した転倒リスクによるリスク層別化が医療機関によってどの程度異なるかを調べる、4.経時的な転倒発生頻度が医療機関によってどの程度異なるかを調べる、5.各医療機関において、再評価した転倒リスク層別によって転倒発生が異なるかを確認する、という点であった。当初の予定通り、電子的なデータ収集と解析は進んでいる。STRATIFYによる層別は医療機関によってかなり差異があり、転倒発生率も医療機関で異なっているにもかかわらず、いずれの医療機関においても、STRATIFYによって転倒高リスク群と低リスク群が層別できることがわかった。結果の一部は関連学会で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.新たなアセスメントツールの有用性の検証: 研究代表者が所属する医療機関のデータを用いた結果からは、転倒リスクアセスメントツールと重大外傷発生リスクアセスメントツールを組み合わせることで、効率よく転倒後重大外傷の発生を予測できた。また、時間を空けた2ポイントでの検討でも、再現性を持って有用性が確認できた。同様の結果が、規模も患者背景も異なる他の3医療機関でもあてはまるかどうかを検証する。 2.研究結果の発表: すでに平成26年度に検討した結果については、関連学会に発表している。この研究成果は他に報告がない新たな知見であることから、学術論文の形でまとめる。また、上記の転倒後重大外傷予測に係る新たなアセスメントツールの開発についても、他には報告がみられない新たな知見である。関連学会での発表と、学術論文の形での発表を目指す。
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Causes of Carryover |
本研究は多施設共同研究であり、研究協力機関のそれぞれにおいてデータ収集、データ保管、研究代表者へのデータ移送が必要になる。それぞれに係る作業は現在も進行しており、そのための費用を次年度に持ち越すこととした。また、4医療機関から研究代表者のもとに集まるデータは膨大であり、そのデータ管理(情報セキュリティを確保したデータストレージ)、データクリーニング(データクリーニングを行う人件費など)、データ解析(大規模データを解析できるデータベースおよび統計解析ソフトウェアや、パーソナルコンピュータなど)に係る費用を見込んだ。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度も引き続き各医療機関からデータ収集を行うので、そのための物的・人的コストを見込んで、各医療機関の研究分担者に研究費を配分する。また、研究代表者のもとで、データ管理(情報セキュリティを確保したデータストレージ)、データクリーニング(データクリーニングを行う人件費など)、データ解析(大規模データを解析できるデータベースおよび統計解析ソフトウェアや、パーソナルコンピュータなど)に係る費用を見込んでいる。
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Research Products
(4 results)