2015 Fiscal Year Annual Research Report
手術中の医療者の疲労,ストレスの客観的評価,リアルタイム測定法の研究
Project/Area Number |
25293158
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤原 道隆 名古屋大学, 医学部附属病院, 准教授 (70378222)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 健策 名古屋大学, 情報連携統括本部, 教授 (10293664)
小寺 泰弘 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10345879)
安田 あゆ子 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (30402613)
田中 千恵 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (50589786)
田中 由浩 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90432286)
藤井 努 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60566967)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 医療・福祉 / 外科 / 手術 |
Outline of Annual Research Achievements |
手術中の術者の疲労やストレス状況の評価に関してはごく限られた知見しか得られていない.本研究は,術者の生体情報,音声,動作などから,術者のストレスや疲労を客観的に測定する方法がないかどうかを検討する探索的な研究である. 生体情報に関しては,循環系は変化が乏しく,発汗は,イベントによっては発汗量の増加が認められたが,長時間測定がむずかしく迅速なフィードバックもむずかしいことがわかった.音声は,手術中に術者の音声を記録し,音圧,音声周波数を取得した.一定幅で高速フーリエ (FFT)解析を行い,得られたパワースペクトルから第1フォルマントすなわち最大のパワー(Max Power)と,最大のパワーを示す周波数(第1フォルマント周波数)を算出し時系列に並べた.また,一定時間の音圧波形からRoot-mean-square (RMS)を算出し,時系列に RMSを順次求め,移動平均の微分値のピークを検出し,この個数を近似的な音節数とみなした.RMSが閾値以上を発語とし, 1回の発語の中の音節数を求めた(話す早さを反映).一定時間のうちRMSが閾値以上の時間の率を発話率とした.以上のような周波数および音節解析の時系列データと,手術ビデオと比較検討して関連を検討した. 周波数解析では,ストレス状況下では通常時にくらべてMax Powerと第1フォルマント周波数の両者が高値のプロットが多い(強く高い音声が多い)傾向を得た.疲労に関しては周波数上の特徴は見られなかったが,音節解析で会話が遅く,発話率が少ない傾向が見られた. 詳細はさらなる検討が必要であるが,手術中の術者の疲労やストレス状況を,ある程度音声の解析によって測定することが可能とわかった.これらのパラメータは,手術時に計算することが可能で,手術時にフィードバックするシステムにつながると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
過去に類似の研究が無く,ほとんどが手探りだったので,計測ウインドウ幅(bin)設定や周波数帯フィルタリングの設定など,試行錯誤が多くて時間を要した.当初,循環系,発汗,音声,動作分析をすべて測定する予定であったが,実際の手術時にすべて行うのは,術者の診療行為への影響が少ないとは言えず,安全のため,パイロットスタディとしては,分けて測定をせざるを得なかった.また,循環系(脈拍)は,手術を通じて明らかな変化が無く,ストレスや疲労を見るパラメータとしては有用でないことがわかった.発汗も手術時間全体にわたって測定することが技術的に困難であったので,改良型測定装置を発注して測定システムの安定化を図ったが,発汗量変化が手術進行の上でのストレス場面や疲労との関連が必ずしも明確でない場面が多いのと,リアルタイムにフィードバックするのはむずかしい,という問題点があるとわかった.疲労度の測定に有用と考えていた動作解析については,解析方法の検討を進めたが,実用的な方法が確立できていない.したがって,本研究の目的には音声測定・解析が最も有用と考え,平成26-27年度は,音声解析に重点を置いた.平成26年度に周波数解析を行い,出血などのストレス状況下では,強く高い音が相対的に増加することがわかったが,疲労に関しては音声周波数には特徴を認めなかった.平成27年度に音節解析法を開発した結果,疲労状態で発語が遅く少ないことがわかった.周波数と音節解析を組み合わせることにより,本研究の目的であるストレスおよび疲労状況をある程度測定することが可能とわかった.現在,ストレス状況をAroraらの分類にもとづいて細分し,さらに詳細に検討を加えているところである.
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Strategy for Future Research Activity |
より細かなストレスおよび疲労状況と音声解析結果の検討が必要である.これまで,出血などのテクニカルな問題,器材の問題を中心に検討していたが,Aroraらの分類の患者因子,チーム因子,教育との関連についても検討し,各種のストレス状況における音声分析を行う.平成26年度までの研究では,音声解析では疲労と関連する因子を見いだせなかったが,音節解析により疲労状況も測定できる目処がたったので,動作解析(術者の動きの加速度変化で疲労状況が測定できるのではないかと考えていた)に関しては,音声解析結果との関連を調べる方針とする.動作解析の方法としては,術者にマーカーを貼付し術中映像記録をとり,マーカー領域を抽出,ラベリング処理し,マーカーに含まれるピクセル画像の重心を算出して,その速度ベクトルを求める測定系を考案している.予定より遅れたが,平成28年度に同測定を行い,音声解析から示される疲労状況と動作解析から得られる術者の利き手の動きの加速度の関連を検討する. リアルタイムなストレスおよび疲労状況測定に関しては,技術的に音声解析のみで行うのが現実的と考えられ,各パラメータの重みづけを行い,リアルタイムにストレスや疲労状況をフィードバックできないか検討する.
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Causes of Carryover |
音声解析の方法の確立に時間を要し,実際の手術場面の検討をまだ十分に行えていない.また,術者の疲労を測定する方法が,固まらなかった.疲労に応じて術者の利き手の動きの加速度が変化する可能性があると考えて,動作解析方法の検討を進めてきたが,手術中の術者に障害とならずに解析する方法は,最終的に迅速にフィードバックしたい,という目的に応じた適切な方法が見いだせなかった.このため,この費用が執行できず,次年度に繰り越すことになった.しかし,音声解析で疲労に関しても測定できることがわかったので,動作解析は音声の補助ですむので,術者に関節部にマーカーを貼付した映像記録から加速度解析して音声データと比較検討する方針とした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に作成した音声解析ソフトウェアを使用して,多数の手術におけるストレス,疲労場面にいける音声変化の特徴を調べる. 動作解析は,手術中の術者のいくつかの箇所に何らかのマーカーを貼付し,ビデオ撮影記録して,マーカー領域を抽出,ラベリング処理し,マーカーに含まれるピクセル画像の重心を算出して,その速度ベクトルを求め,手術中の動作の加速度などを測定する.特に術者の疲労状況に関して,音声解析結果と動作解析結果を比較検討する.リアルタイムなストレスおよび疲労状況測定に関しては,音声解析で得られた各パラメータの重みづけを行い,リアルタイムにストレスや疲労状況をフィードバックできるシステムについて検討するために使用する予定である.
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Research Products
(2 results)