2013 Fiscal Year Annual Research Report
レセプトデータ分析による糖尿病患者の受診状況と医療サービス利用及び血糖との関連
Project/Area Number |
25293160
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
馬場園 明 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90228685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 治久 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30572119)
畝 博 福岡大学, 医学部, 教授 (40122676)
今任 拓也 福岡大学, 医学部, 講師 (20368989)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 医療管理学 / 疾病管理 |
Research Abstract |
福岡県国民健康保険団体連合会に電子請求された2009年4月から2010年9月診療分の医科レセプトデータのうち、その期間内に入退院しており、福岡県内に居住し、糖尿病の傷病が付されており、人工透析を行なっていない者を対象とした。対象者の2009年4月から2010年3月診療分の外来レセプトと突合した後に、年6回以上の糖尿病外来受診の有無を要因として、糖尿病合併症(虚血性心疾患、脳血管疾患、心不全、末梢血管疾患、腎症・腎不全、ケトアシドーシス・昏睡)による入院、死亡に関するオッズ比の推定を行った。次に、ロジスティック回帰分析によって、性、年齢(65歳未満と65歳以上に区分)、インスリン使用の有無を調整し、年6回以上の糖尿病外来受診の有無を要因とした糖尿病合併症に関する入院のオッズ比の推定を行った。なお有意水準はP=0.05とした。ロジスティック回帰分析の結果、オッズ比[95%信頼区間]はそれぞれ、糖尿病合併症による全入院:0.857[0.627-0.776]、虚血性心疾患:0.827[0.736-0.928]、脳血管疾患:0.926[0.802-1.069]、心不全:0.911[0.739-1.124]、末梢血管疾患:0.842[0.665-1.065]、腎症・腎不全: 1.166 [0.869-1.565]、ケトアシドーシス・昏睡:0.639[0.200-2.034]、死亡:0.601[0.522-0.691]であった。外来受診をしている者では、受診していない者に比べて、合併症による入院のリスクが13.5~14.3%程度低く、死亡のリスクが224.4~39.9%程度低いことが明らかになった。疾患別の入院リスクでは虚血性心疾患で外来受診していると入院リスクが18%程度低い傾向にあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
福岡県に所在する健康保険組合の被保険者本人及び被扶養者であり、2009年度の健康診断を受診した6813名を対象とし、調査終了時点で40歳から74歳であり、2009年度時点でHbA1cが6.1%以上もしくは経口糖尿病薬、インスリンを使用している者を健診受診の翌年のレセプトデータを突合することで、1年間の診療内容を追跡し、継続受診群、非継続受診群、未受診群の3群に分類できた。2009年度の健診情報から検査項目(身長、体重、BMI、腹囲、最高血圧、最低血圧、GOT、GPT、γ-GTP、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、空腹時血糖、HbA1c、赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット値)及び問診票項目を収集した。2010年度のレセプト情報のうち、傷病情報から糖尿病合併症(糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害)の有無、診療及び調剤情報から少なくとも3ヶ月おきの医療機関でのHbA1c測定の有無、年1回以上の眼底検査の有無、年1回以上の尿中アルブミン測定の有無、血清クレアチニン測定の有無、生活習慣病管理料の算定の有無、インスリン及び経口糖尿病薬の調剤の有無、経口糖尿病薬の調剤間隔、調剤日数及びジェネリック医薬品の処方状況を収集した。さらに、2011年度から2012年度の健診情報及びレセプト情報のうち、診療及び傷病情報から糖尿病関連疾患による一般病棟への入院の有無を収集した。したがって、研究は計画通りに進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
データベースに2013年度と2014年度の健康情報及びレセプト情報を追加する。次に、糖尿病関連疾患による一般病棟への入院の有無及び2年間の総医療費、総診療日数、HbA1c変化量を目的変数とする統計解析を行うためのデータベースの整理を行う。利用可能な独立変数は身長、体重、BMI、腹囲、最高血圧、最低血圧、GOT、GPT、γ-GTP、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、空腹時血糖、HbA1c、赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット値、特定健康診査の標準的な問診票項目22項目である。そのなかから、性、年齢、勤務地域、BMI、高血圧の有無、脂質異常の有無、肝機能異常の有無、貧血の有無、併存疾患及び生活習慣に関する項目等を独立変数とする。なお、対象の健康保険組合では2009年2月からレセプト電子請求を開始したため、調査開始時の糖尿病受療状況については2009年度のインスリン注射又は血糖を下げる薬の使用の有無で分類する。2010年度のレセプト情報から、チャールソン併存疾患指数を計算し、重症度を調整した後に、医療費及び診療日数を比較する。さらにプロペンシティスコアマッチングを行う。統計解析としては、まず、継続受診群、非継続受診群、未受診群の患者の属性の違いを明らかにする。次に、継続受診群の診療内容を明らかにする。最後に、継続受診群を基準として非継続受診群、未受診群とHbA1cの改善度、糖尿病関連疾患による入院リスクの比較、医療費・医療サービス利用状況を比較し、受診状況がこれらの指標に与える影響を定量的に明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
継続受診群、非継続受診群、未受診群間で、HbA1c の改善度、医療費・医療サービス利用状況を比較し、受診状況がこれらの指標に与える影響を定量的に明らかにするためには、これらの3群が比較可能になるためのデータベースを作成しなければならない。平成26年度に、学生アルバイトを雇用して、さまざまなモデルを用いて3群の比較可能性を検討するために、予算を繰り越した。また、旅費についても分析方法の指導を受ける等の目的で予算を計上していたが、データベースの構築に時間を要したため、その業務を26年度に変更したため、次年度使用額が生じた理由となった。 統計解析に強い学生をアルバイトとして雇用して、さまざまなモデルを用いて3群の比較可能性を検討し、継続受診群、非継続受診群、未受診群間で比較可能なデータベースを構築する。 また、分析方法の指導を受けたり情報収集等の業務を行うため、旅費の支出を予定している。
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