2013 Fiscal Year Annual Research Report
急性心筋梗塞あるいはMDMA中毒のミトコンドリア障害に関する研究
Project/Area Number |
25293162
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新谷 香 (石田 香) 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50345047)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
乾 誠 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70223237)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 心臓突然死 / カルパイン / ミトコンドリア / オートファジー / MDMA / 心筋梗塞 |
Research Abstract |
【急性心筋梗塞におけるミトコンドリア障害について】 細胞質内に存在するCa2+依存性proteaseであるcalpainは虚血再灌流後の細胞質Ca2+過剰により活性化し、細胞骨格タンパク質を分解することによりnecrosisに寄与するが、本研究で私達は、calpainが心筋細胞のミトコンドリア(Mt)マトリクスにも存在することを初めて見出した。Mt-calpainは虚血再灌流後のMt内Ca2+過剰により活性化し、Mt呼吸鎖のComplex Iのサブユニットを限定分解してComplex Iを不活性化する結果、mitochondria permeability transition pore(mPTP)を開口して、心筋梗塞進展に関与することを明らかにした。Calpain阻害剤の心筋梗塞抑制効果はよく知られているが、本研究の結果はcalpainが虚血再灌流後の細胞骨格破綻だけでなく、ミトコンドリア障害を引き起こし、心筋梗塞進展に貢献することを示唆している。(投稿準備中) 【MDMA急性投与後の心収縮低下におけるMtとlysosomeのクロストーク】 最近、MDMA代謝の際に産生される活性酸素種(ROS)がlysosome膜を傷害する結果、漏出したlysosome消化酵素がMtを傷害し、MtのROS産生を加速させ、さらにlysosome膜傷害を引き起こすというクロストーク説が示された。本研究で私達は、MDMAはautophagyを誘導し、増加したautolysosomeがMDMAにより産生されたROSにより不安定化し、内部の消化酵素が漏出する結果、Mtや心筋繊維を傷害し、心収縮能低下を引き起こすことを明らかにした。(Shintani-Ishida K et al. Biochim Biophys Acta. 2014; 1842, 691-700.)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
急性心筋梗塞に関する研究における本年度の計画は、Mt-calpainの同定と虚血再灌流時のmPTP開口への関与を検討することである。私達はcalpainがMtのマトリクスに存在し、虚血再灌流により活性化し、mPTP開口に関与していることを見出した。この成果は心筋梗塞進展の新しい機序の存在を示唆しており、専門誌への投稿準備中である。一方、MDMA投与後の急性心収縮低下については、計画通りMDMAによるautophagy誘導とlysosome膜傷害、心機能低下の因果関係を明らかにし、専門誌に発表した。以上のように本年度の研究は概ね当初の計画通りに進行し、論文発表等の研究成果を出したことから、「(2)おおむね順調に進展している。」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
Mt-calpainの存在と心筋梗塞進展への関与を明らかにできたので、さらに心筋梗塞進展への関与の分子機序を解析する。具体的にはmPTP開口を引き起こすMt-calpainの基質の検索や、心筋梗塞進展における細胞質内calpainとMt-calpainの相互作用等について検討する。MDMAの研究では、本年度の実験で細胞毒性を惹起するMDMA代謝物の分析方法を独自に開発したので、MDMA乱用時に多い飲酒がMDMA代謝にどのような影響を及ぼすのかについて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度途中に他大学への転任が決定したため、当初計画していた物品費の一部を来年度に持ち越すことにした。 申請時の使用計画に加えて、転任先機関にない動物手術器具、生化学的実験器具等の購入に充てる。
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Research Products
(8 results)