2014 Fiscal Year Annual Research Report
動物モデルを用いた先天性心臓流出路異常の予防と新たな治療への基礎的研究
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25293238
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山岸 敬幸 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (40255500)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土橋 隆俊 慶應義塾大学, 医学部, 研究員 (10286528)
牧野 伸司 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (20306707)
内田 敬子 慶應義塾大学, 医学部, 研究員 (50286522)
湯浅 慎介 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (90398628)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 発生分化 / 発現制御 / 遺伝子 / 循環器・高血圧 / 再生医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請書に記載した研究の目的に基づき、心臓流出路発生およびその異常に関与する新たな分子機序を解明するために、VISTAデータベースを利用してSema3Cのゲノム遺伝子制御領域に存在する、種を越えて保存された転写因子結合配列を検索した。この情報を元に、luciferase assayとChIP assayを用いてFoxc1およびFoxc2が制御するFox結合配列を特定した。この配列にLacZレポーターを挿入したトランスジェニック(Sema3C-LacZ)マウスを作製した。次にin vivoの検討で、Foxc1、Foxc2のノックアウトマウスの心臓流出路における発現低下、およびTbx1発現低下(Tbx1 neo/neo)マウスにおけるSema3C-LacZ発現の異所性亢進を確認した。培養マウス胚を用いた検討により、Tbx1 neo/neoにおけるSema3C-LacZの異常発現は、Tbx1の下流の分泌性増殖因子Fgf8の発現低下を介していることが明らかになった。 また、心臓流出路異常を呈する動物モデルにおいて、しばしば心臓流出路異常の致命的な合併症となる肺動脈の異常について検討した。IP3R2型の発現部位を標識するLacZマーカー遺伝子が導入された(IP3R2-LacZ)マウスでは、IP3R2-LacZマーカーが肺動脈平滑筋に特異的に発現する。このマウスの胎生10.5日~18.5日のIP3R2-LacZマーカーの発現パターンを経時的に観察すると、発生初期には中枢肺動脈が標識され、発生が進むにつれて徐々に枝分かれする末梢肺動脈まで標識され、肺動脈の発生過程を可視化できることがわかった。次にIP3R2-LacZマウスをTbx1 neo/neoマウスと交配して、このマウスにみられる心臓流出路異常における肺動脈発生の可視化を試みた結果、中枢から末梢に向かう枝分かれした肺動脈の発生・構築は正常に見えたが、肺自体がやや小さく、透過性が低下し、肺動脈末梢の伸展が乏しかった。組織学的には肺胞壁形成細胞が多く、肺胞腔が小さいことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記研究実績概要に記載した結果より、以下に示す心臓流出路発生の新たなメカニズムを解明し、肺動脈発生を可視化するツールを確立し、心臓流出路発生に合併する肺動脈発生異常の解析を可能とし、肺動脈発生に特異的に発現する分子マーカーの解析を始め、本研究課題の2年間の到達目標に概ね達している:1)二次心臓領域ないし心臓流出路遠位では、Tbx1が発現してSema3Cの発現を抑制し、周辺の心臓神経堤細胞ではTbx1の下流因子であるFgf8がSema3Cの発現を抑制する。一方、流出路近位から肺動脈円錐分では、Foxc1およびc2とGata6によりSema3Cの発現が活性化される。この時間的空間的なSema3C発現の制御により、心臓流出路の正常発生が誘導される。2)IP3R2型は、肺発生において肺動脈平滑筋に特異的に発現する。そのため、IP3R2の遺伝子座にLacZマーカーを挿入したトランスジェニック(IP3R2-LacZ)マウスでは、胎生期の肺動脈が中枢から末梢まで標識され、肺動脈の発生過程を可視化するツールとして利用することができる。3)IP3R2-LacZマーカーによる総動脈幹症を合併するTbx1発現低下マウス(22q11.2欠失モデルマウス)における肺動脈発生の検討により、末梢肺動脈の異常が明らかになった。4)上記の結果を受け、IP3R2型 のゲノム上流に種を越えた保存性の高い領域をVISTA 解析により特定した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25, 26年度に得られた成果をさらに発展させるために、平成27年度はまず、IP3R2型の肺動脈平滑筋特異的制御機構を解析する。これまで、肺動脈の細胞を特異的に標識するマーカーはなかった。上記、IP3R2型が肺発生において肺動脈平滑筋細胞に特異的に発現するマーカーになるという結果から、その発現制御機構を解析することにより、肺動脈発生のメカニズムを明らかにすることができる可能性がある。そこで、平成26年度にVISTA 解析により特定したIP3R2型 のゲノム上流に種を越えた保存性の高い領域の中で、in vitroの発現実験でさらに有力な候補となる領域を絞り込み、これらの領域を細分化しlacZ 遺伝子の上流に連結して、トランスジェニックマウスを作製して解析する。 また、平成25、26年度に得られた結果を基にして、ダイレクトリプログラミングによる線維芽細胞から心臓流出路心筋細胞の誘導するためのツールを作製する。これまでの研究より、成熟分化した流出路心筋細胞として、Tbx1 陽性、Sema3C陽性の細胞を抽出することが有用と考えられ、Tbx1-GFP マウス、Sema3C-YFP マウスを作製する。培養皿上で線維芽細胞から流出路心筋細胞へのリプログラミングが成功するとGFP およびYFP を発現するようになり、FACS で定量解析できる。これに、小型魚類を用いた心臓流出路細胞の挙動の解析を加える。小型魚類の、1) 胚が透明なため、発生過程をそのまま観察できる、2) 生活環が短いため、迅速な解析および結果の評価ができる、3) 遺伝子変異の導入等の遺伝子操作が可能である等の利点を応用し、sema3c、tbx1、の発現をISH法で追跡し、発現細胞の挙動を直視的に解析し、マウスと比較検討する。 さらに、上記、平成25~27年度の研究により得られた結果を先天性心臓流出路異常の予防と新たな治療への基礎的知見を取りまとめ、成果の発表を行う。
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Causes of Carryover |
未使用額の発生は、効率的な物品調達をおこなった結果である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の消耗品購入に充当し、予定の研究計画と合わせて実施する。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Myocardium-derived angiopoietin-1 is essential for coronary vein formation in the developing heart.2014
Author(s)
Arita Y, Nakaoka Y, Matsunaga T, Kidoya H, Yamamizu K, Arima Y, Kataoka-Hashimoto T, Ikeoka K, Yasui T, Masaki T, Yamamoto K, Higuchi K, Park JS, Shirai M, Nishiyama K, Yamagishi H, Otsu K, Kurihara H, Minami T, Yamauchi-Takihara K, Koh GY, Mochizuki N, Takakura N, Sakata Y, Yamashita JK, Komuro I.
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Journal Title
Nat Commun
Volume: 5
Pages: 4552
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Acute rupture of chordae tendineae of the mitral valve in infants: a nationwide survey in Japan exploring a new syndrome.2014
Author(s)
Shiraishi I, Nishimura K, Sakaguchi H, Abe T, Kitano M, Kurosaki K, Kato H, Nakanishi T, Yamagishi H, Sagawa K, Ikeda Y, Morisaki T, Hoashi T, Kagisaki K, Ichikawa H
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Journal Title
Circulation
Volume: 130
Pages: 1053-1061
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] MiR-133 promotes cardiac reprogramming by directly repressing Snai1 and silencing fibroblast signatures.2014
Author(s)
Muraoka N, Yamakawa H, Miyamoto K, Sadahiro T, Umei T, Isomi M, Nakashima H, Akiyama M, Wada R, Inagawa K, Nishiyama T, Kaneda R, Fukuda T, Takeda S, Tohyama S, Hashimoto H, Kawamura Y, Goshima N, Aeba R, Yamagishi H, Fukuda K, Ieda M.
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Journal Title
EMBO J
Volume: 33
Pages: 1565-1581
DOI
Peer Reviewed