2015 Fiscal Year Annual Research Report
臓器再生・移植医療を目指したiPS腸管を用いた機能的膵臓の臓器分化誘導法の開発
Project/Area Number |
25293277
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
山田 高嗣 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (20316061)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 祥介 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (00142381)
植田 剛 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (40526810)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | iPS細胞 / 再生医療 / 移植医療 / 膵臓 / 臓器再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスiPS 細胞から、管腔状構造の蠕動運動する機能的なiPS 腸管(iGut)の臓器分化誘導に成功した研究実績を基盤に、iGutから機能的な膵臓(iPanc)を臓器として分化誘導し移植するという新しい臓器再生・移植医療を実現することを目的として本研究を計画した。これまでの研究成果で、マウスES細胞から作成したES腸管に分化増殖因子を加えると、腸管に隣接して膵臓様組織が出現し、インスリン産生細胞が誘導されることがわかったため、ヒトiPS細胞を用いてiPancを作製する研究を行ってきた。従来の方法では、ヒトiGutは構造的には管腔状の腸管様組織であるものの、蠕動運動能を有さなかった。また、ヒトiGutはマウスiGutに比べて、分化誘導効率が低く、不安定なうえ、分化誘導まで有意に長期間かかることがわかった。そこで、今年度は、ヒトiPS細胞の維持培養条件およびiGut作製に関する培養環境を改善した。細胞分散時に細胞死を抑制する因子を用いて均一な単細胞でiPS細胞を培養した上で、新たな三次元培養方法を用いることにより、安定したiPS胚葉体を作製することが可能になった。これらの改善点を基盤に、分化増殖因子および低分子薬剤を多段階的に添加することにより、ヒトiGutからiPancを高効率に作製し、本計画を遂行したいと考えている。一方で、iPS細胞の作製技術である細胞のリプログラミング技術を用いて、膵島の発生に関与する3つの転写因子(Ngn3、Pdx1、Mafa)を同時に発現させるベクターを、マウスから単離した膵管細胞に遺伝子導入することによりin vitroで膵β細胞に分化誘導することができた。本研究は、iPS細胞を用いずに、特定の遺伝子を用いて体細胞を膵β細胞に直接リプログラミングするという膵臓の再生医療の新しいアプローチであると考えられる。このリプログラミング技術に関する研究成果は、iGutからiPancを作製する本研究において、新たなブレークスルーになるものと期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の最終目標は、糖尿病患者の皮膚生検により得られた線維芽細胞から iPS 細胞を樹立し、ヒトiGutおよびヒトiPancを作製することであることから、マウスiPS細胞およびiGutの研究実績を基盤に、ヒトiPS細胞から安定してヒトiGut/iPancを誘導できる培養条件・環境を見出すことが最優先の課題であると考え、本研究に取り組んできた。そこで、ヒトiPS細胞の維持培養条件およびiGut作製に関する培養環境を改善した。現在まで、細胞分散時に細胞死を抑制する因子を用いて均一な単細胞でiPS細胞を培養した上で、新たな三次元培養方法を用いることにより、安定したiPS胚葉体を作製することが可能になり、iGutからiPancを高効率に分化誘導できる基盤が整った。さらに、マウスiPS細胞とヒトiPS細胞における細胞の性質や培養条件・環境などの特異性についても多くの知見を得ることができた。このことは、動物実験で得た成果を臨床応用する上で大いに役立つものと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度、これまでの研究成果を基盤に、研究計画に記載している通り、分化増殖因子および低分子薬剤を多段階的に添加することにより、ヒトiGutからiPancを高効率に作製し、in vitroならびにin vivoでグルコース応答性などを評価する予定である。また、リプログラミング技術による膵β細胞の分化誘導に関する研究成果を本研究に応用することも視野にいれ、ヒトiPancを分化誘導するという研究課題を推進していきたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
計画は概ね進んでいるが、今年度購入予定していた試薬および機器類を次年度に購入する予定としたため、残額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度の残額を用いて、計画通り試薬や機器類を購入する予定である。
|
-
[Journal Article] Hyperglycaemia attenuates in vivo reprogramming of pancreatic exocrine cells to beta cells in mice.2016
Author(s)
Cavelti-Weder C, Li W, Zumsteg A, Stemman-Andersen M, Zhang Y, Yamada T, Wang M, Lu J, Jermendy A, Bee YM, Bonner-Weir, S, Weir GC, Zhou Q.
-
Journal Title
Diabetologia
Volume: 59
Pages: 522-532
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-
-
-