2013 Fiscal Year Annual Research Report
大腸癌に対する血管新生阻害剤の新規作用機序の解明とこれに基づく効果予測法の開発
Project/Area Number |
25293292
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
北川 雄光 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (20204878)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 博俊 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (00218455)
岡林 剛史 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (00338063)
林田 哲 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (80327543)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 大腸癌 / HOXB9 / 血管新生 / ベバシズマブ |
Research Abstract |
転写因子Homeobox B9 (HOXB9)は上皮間葉転換(EMT)を誘導する因子であり、乳癌細胞においてはその浸潤能・転移能を亢進すると同時に、周囲微小環境における血管新生を誘導することを我々は示した。(Hayashida, PNAS 2010) さらに臨床検体の検討からHOXB9が乳癌患者の予後因子であること(Seki, Ann Surg Oncol 2012)、またHOXB9発現によるEMT誘導は放射線耐性を生じることを我々は示した。(Chiba, PNAS 2011) 大腸癌ではベバシズマブによる抗血管新生療法が有効であるが、組織に血管新生を強力に誘導するHOXB9の発現が、大腸癌の進展とベバシズマブによる抗腫瘍効果に与える影響についての知見は無いため、これについて研究を進めている。。 HOXB9低発現細胞株HT29, HCT116にHOXB9を導入し、高発現株SW480, WiDrにおいて発現抑制を行ったところ、VEGF・bFGF・IL-8を含む血管新生促進因子の発現がHOXB9発現と正の相関を示した。HOXB9発現誘導細胞では、MTT法によりin vitroでは細胞増殖能力の低下を認めたにも関わらず、免疫不全マウス背部へ異種移植を行ったところ、新生血管に富んだ増大速度の極めて早い腫瘍を形成し、腫瘍径・重量・微小血管密度は有意に亢進していた。これに対して、ベバシズマブの投与を行ったところHOXB9発現誘導腫瘍ではコントロールと比較して劇的な腫瘍縮小効果を認めた。(腫瘍縮小率; 93% vs. 42%, HT29, 83% vs. 27%, HCT116) 微小環境を擬似的に再現した、大腸癌細胞とHUVECs・繊維芽細胞の共培養モデルでは、HOXB9陽性大腸癌細胞からVEGFを含む血管新生促進因子が著明に分泌され、活性化された間質細胞との間にポジティブフィードバックを形成することで、大腸癌細胞増殖を促進したが、ベバシズマブはこれを遮断することで、効率的に細胞増殖抑制を行っていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既に確立されたベバシズマブ高感受性腫瘍を用いて、微小環境を擬似的に再現したin vitroの環境で基礎的な知見を得ると同時に、in vivoにおけるこれら結果の傍証を得ることを目的とし、研究を進めてきた。特にIL-6がベバシズマブの効果予測因子として、有用であるか、否かを検証している。昨年度は我々のモデルを繰り返し用いることで、IL-6以外に間質から分泌されるもしくは、分泌が抑制される因子の推定が可能であルと考え、方法を検討して網羅的解析を行ってきたが、現時点ではIL-6以上に癌細胞と間質細胞の間の正のフィードバックに関わるサイトカインは認められていない。よって、今後は研究の方向性として、IL-6をより深く掘り下げ、この現象にかかわっていることを示していく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の実験手順として、次に述べる事項を解析していく。 ① 癌細胞のみの単培養および間質細胞との共培養の両環境で、HOXB9発現によりVEGFおよびIL-6の培養上清における発現をELISAにて検証、② HOXB9発現による癌細胞株の増殖を単培養・共培養下で検証、③ベバシズマブ投与により培養上清中の濃度および細胞増殖能が変化するかを検証、④ IL-6の中和抗体の投与により、上清中のIL-6濃度と細胞増殖能を検討、⑤ IL-6の分泌が癌細胞もしくは間質細胞のどちらに由来するか。 また、上記基礎的検討に加え、IL-6について、臨床検体から定量PCRを行い、HOXB9発現と相関を認めるか否かを検証する。我々の仮説が正しければ、HOXB9高発現大腸癌ではIL-6発現が上昇することが予想される。昨年度に、前実験として行ったPCRの結果では、この予想に即した結果が得られており、今後複数回行っていくことで、確固としたデータにしていく。
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