2014 Fiscal Year Annual Research Report
悪性黒色腫における腫瘍免疫の破綻を解明する!~マウスリンパ浮腫モデルを用いて~
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25293361
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 有平 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70271674)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 洋志 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00399924)
小山 明彦 北海道大学, 大学病院, 講師 (70374486)
舟山 恵美 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10533630)
林 利彦 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (00432146)
村尾 尚規 北海道大学, 大学病院, 助教 (90706558)
七戸 龍司 北海道大学, 大学病院, 医員 (30640346)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 組織培養・移植学 / 悪性黒色腫 / リンパ浮腫 / 腫瘍免疫 / 転移 / リンパ管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス後肢リンパ浮腫モデルにおいて、in transit 転移が成立する機序を解明するために、マウス後肢におけるリンパ浮腫の基本病態の解析を行うことにした。浮腫やリンパ流鬱滞が持続することで生じる皮膚・皮下組織の変化を長期間観察できるように、リンパ浮腫モデルの改良を試みた。従来のリンパ浮腫モデルでは術前に放射線照射を行っていたが、放射線照射による免疫系への影響を考え、放射線照射を必要としないモデル作成の可能性について検討した。 マウス後肢の鼠径領域と膝窩領域のリンパ節と周囲の脂肪組織を外科的に十分切除し、更に後肢皮膚に存在する浅リンパ管を焼却処理したモデルにおいて、浮腫とリンパ流鬱滞が長期間持続することを確認した。また、鼠径部に線維化を生じさせることは、浮腫の持続を促進することが判明した。リンパ節と周囲脂肪組織を徹底的に郭清することによって、浮腫とリンパ流鬱滞が長期間持続することを確認した。 浮腫とリンパ流鬱滞が高度である後肢に悪性黒色腫を移植すると、浮腫や鬱滞が軽度である群と比較して腫瘍の大きさや進展の度合いに差異があることを確認できた。また、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した悪性黒色腫細胞を用いて、腫瘍の肺への移行性について検討した。リンパ浮腫群の後足皮下に悪性黒色腫を移植すると肺転移が生じることを確認できた。In transit転移の発生を予防する上で、リンパ浮腫を制御することの重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射線照射を施行しなくても、外科的にリンパ管、リンパ節、脂肪組織を十分に切除することでリンパ浮腫、リンパ流鬱滞が長期間持続するマウス後肢リンパ浮腫モデルを安定的に作成することが可能となった。リンパ浮腫後肢に悪性黒色腫を移植すると、浮腫の程度によって腫瘍の増大・進展が異なることが確認された。以上から、腫瘍が存在する部位のリンパ浮腫を制御する事で、悪性黒色腫の特徴的な転移様式であるin transit転移を予防できる可能性が示唆されている。また、マウスリンパ浮腫モデルあるいはin transit転移モデルより組織を採取しRNAレベル、タンパク質レベルで解析できる分子生物学的手法が確立されつつある。よって、研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスリンパ浮腫モデルにおけるリンパ管新生因子の発現に関する検討を行う。in transit転移の進行において、リンパ行性の腫瘍の進展は重要である。リンパ浮腫モデルにおけるVEGF-C、VEGFR-3などのリンパ管新生に関連する因子の発現をreal time PCRとウエスタンブロッティングで解析し、正常組織と比較・検討していく。リンパ浮腫組織におけるVEGF-Cの発現を調節するメカニズムを解明して、リンパ行性の転移を抑制する因子を同定する。 次にin transit転移の成立における免疫寛容の有無、制御性T細胞(regulatory T cells,Treg)の病態への関与についても引き続き検証を行う。マウスリンパ浮腫モデルとin transit転移を生じたマウスから、それぞれ皮膚組織、腫瘍組織、脾臓を採取しフローサイトメトリーと免疫組織学的染色によってCD4リンパ球内のTregの比率を測定し、検討する。リンパ浮腫組織にin transit転移が生じる際のTregの変動を詳細に解析していく。 以上の知見をもとにin transit転移を予防あるいは進展を抑制することが期待できる遺伝子治療薬、分子標的治療薬をin transit転移モデルに投与する。治療効果の判定は、安定的にホタル発光遺伝子(ルシフェラーゼ)を発現する悪性黒色腫細胞株(B16-F10-Luc2)をリンパ浮腫モデルに移植し、生体内イメージング技術を用いて生物発光を検出することによって腫瘍の動態を追跡し評価する。
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Causes of Carryover |
本研究を進捗・遂行させる上で必要な試薬、抗体(real time PCR、ウエスタンブロッティング、フローサイトメトリーなどに使用)はまだ揃っていないが、本年度の予算のみでは最終調整ができず次年度の予算と合わせて調整し購入することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の予算と合わせて、研究の遂行に必要な機器または試薬、抗体(real time PCR、ウエスタンブロッティング、フローサイトメトリー、免疫組織化学染色などに使用)を購入する予定である。 また、動物実験に必要なマウスの購入を適宜予定しており、動物の維持・管理費にも使用する予定である。
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