2014 Fiscal Year Annual Research Report
メカノバイオロジーと分子医学を基軸とした口腔乾燥症の新規治療戦略
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25293397
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
中本 哲自 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (30514989)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 祐介 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (00611287)
向坊 太郎 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (50635117)
細川 隆司 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (60211546)
正木 千尋 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (60397940)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 口腔乾燥 / 唾液腺 / 水分泌 / 糖尿病 / 陰イオンチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成17、23年度の歯科疾患実態調査から高齢者における平均残存歯数は調査を重ねるごとに増加している。歯が多く残ることは喜ぶべきことであるが同時に衛生管理の徹底が難しくなることを意味する。そこで口腔環境を良好に保つために重要な湿潤因子である唾液腺水分泌について、平成25年度に引き続きマウスモデルを用いて検討した。唾液産生は腺房細胞における分泌シグナルの受容、それに伴う細胞内カルシウム上昇、それが引き起こすカルシウム依存性陰イオンチャネル(TMEM16A/ANO1)の活性化により分泌が開始するが、そのTMEM16A/ANO1を阻害すると報告されているタンニン酸を含む赤ワイン、緑茶、ウーロン茶などを飲用の1/1000以下の濃度で灌流唾液腺に投与し、飲料摂取と唾液分泌との関係について検証したところ、各飲料のタンニン酸濃度とある程度の関連で分泌が抑制されていた。各飲料に含まれるタンニン酸の血中移行度について検証していないため生体での反応とは必ずしも一致しないものの、タンニン酸を含む飲食物が唾液分泌機能に負の影響を及ぼしている可能性が示唆された。また、全身疾患と唾液腺との関係では前年度に引き続き2型糖尿病モデルマウスの解析を行い、コントロールマウスと比較して唾液分泌能の低下を観察した。その根底にあるメカニズムとして、多尿による循環血液からの水分の喪失に伴う他臓器での水分枯渇が一因として考えられているが、水分泌の要諦である腺房細胞の割合の減少も要因の一つである可能性が示唆された。しかしながら、腺房細胞に明らかな炎症の兆候を認めないことから、その変性メカニズムについて今後解明していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物実験については概ね順調に推移しており、ヒトサンプルを検討するうえで十分な知見を得た。研究成果のうち、タンニン酸に関する成果はすでにOpen Journal of Stomatologyに掲載され、国際的な評価も受けている。糖尿病関連の解析も生理学的、組織学的、両アプローチともこれまでのところ順調に推移している。しかしながら、研究代表者移動に伴い、当該年度の後半に実験規模を縮小せざるを得ず、そのため「おおむね順調」との判断に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者が福岡県から長野県へ異動となり、研究設備・研究組織の再構築が必要となった。そのため当初予定していたヒトサンプルの解析は平成27年度に実施せず、引き続き動物実験にて臨床に直結する知見を得るように解析を進める。具体的には陰イオン輸送担体であるNa+-K+-2Cl-共輸送担体がどのように体液コントロールに関与しているか、糖尿病の病態とどのような関連があるのか、灌流腺組織実験と組織学的検討により詳細を解明する予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者の平成26年度末での所属機関異動が決定し、当該年度後半の研究規模を縮小せざるをえなくなり、膜タンパクのリン酸化解析の実験を次年度に繰り越さざるをえなくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
抗リン酸化抗体を用いた生化学的な機能解析に充当する予定である。
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