2013 Fiscal Year Annual Research Report
末梢神経障害性の痛みのある患者の組織的アセスメント技法の開発
Project/Area Number |
25293432
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
深井 喜代子 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (70104809)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新見 明子 川崎医療短期大学, 看護科, 教授 (50171153)
肥後 すみ子 群馬県立県民健康科学大学, 看護学部, 教授 (90320770)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 末梢神経障害性疼痛 / 慢性痛 / 痛みの多次元的評価 |
Research Abstract |
予備的測定・観察の試行:岡山大学病院で開室している「痛みの相談室」の来談者に同意を得て、種々の原因による難治性の末梢神経障害性疼痛患者(痛みの種類は抜歯後三叉神経痛、腰痛(坐骨神経痛)、肩凝りなど)にペインビジョンによる痛み度測定、5つの疼痛アセスメントツール(VAS、MPQ、BRTP、Face Scale、7角形プロフィール(いずれも既成の標準化ツール))による主観的痛み評価を行った。1年間で計5名(男性2名、女性3名)延べ18件の相談を実施した。その結果、末梢神経障害性疼痛患者の痛みは長期間持続する慢性痛であること、原因が特定しにくく鎮痛薬が必ずしも有効でないこと、長時間・長期に渡り系統的・継続的行う痛みに関する問診、疼痛質問票と痛み関連の生体観察と測定によって、対象の痛みの包括的理解の可能性が示唆された。さらに、それによって5名の患者全員が痛みを洞察するようになり不安の軽減がみられた。以上の予備試行から、量的研究の遂行に当たっては、疼痛質問票を改変(項目を精選してより一般化・効率化へ)してデータ収集時間を短縮すべきことが分かった。そして、今後、研究は少人数の対象の継続的観察と、多数の対象の横断的調査・観察を平行して行うべきことを確認した。 予備調査結果:平成24年度に実施した中国・四国地区239の訪問看護ステーションの調査で(回収率15%)、痛みの留置調査には限界があった経験から、本研究では在宅疼痛患者が集まる患者会や関連施設に研究者が出向く方法を採用することにした。 機器調整:アクティブトレーサーによる心拍変動測定の試行を行い、測定手技を検討した。既存の機器から本学工学系教員の協力を得て重心動揺計を作成、立位姿勢での筋緊張バランス観察が可能になった。これらの客観指標が及び痛み反応の評価に有効であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、難治性の慢性の末梢神経障害性の痛みを持つ患者の痛みを多次元的に観察し、適切なアセスメントの方法を開発することである。 初年度は少数例ではあったが、種々の神経障害性疼痛患者の継続的観察により、疼痛アセスメントツールの改変(より一般化できる短縮版を採用すること)という重要なヒントを得ることができた。また、生理指標計測機器が揃わなかったことから系統的データ収集手順作成には至らなかったが、入念な文献検討により、その準備は整った。また、痛みの病態や原因疾患を絞った対象でデータ収集することにより、研究の効率化(対象の拘束時間を短縮する)がはかれることも分かったので、単年度にはできるだけ少数種の痛みを扱う方針を決定できた。 以上の理由から、本研究は最終目標に向けておおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は対象を実現可能な範囲に絞り、以下の研究を遂行する。 生体測定機器調整:昨年度購入のアクティブトレーサー(GMS)をもう1台購入するとともに、筋電計(追坂電子機器)2台を購入する。これらに、過去の科研助成研究で獲得したペインビジョン(ニプロ)と重心動揺計(Wiiのバランスボードを利用し重心同様の2次元データを解析する自前装置)を加え、神経障害性疼痛患者の痛みと痛み反応を、生理学的手法を用いた4種類の指標で観察する(心拍変動解析による自律神経活性、四肢・躯幹の筋緊張度、痛み度、身体バランス変動(重心動揺))。今年度は本試験に先立って上半期までに機器調整と健康者によるコントロール実験を遂行する。 痛みのアセスメントツールの改変と標準化:本研究で使用予定の5つの疼痛評価尺度(VAS、MPQ、BRTP、Face Scale、7角形プロフィール)のうち、MPQ(マックギル疼痛質問票)は既成の短縮版を使用し、BRTP(痛み行動評価尺度)については万人が回答できる短縮版を新たに作成、標準化したものを使用する。これによって、年齢や性別、文化的背景に影響されない痛み評価を目指す。 神経障害性疼痛患者の痛みの観察:倫理審査委員会の承認を得て、種々の原因による神経障害性疼痛患者の痛みを上記の生理学的・主観的評価指標を用いて測定・観察する。データ収集は分担者(新見)、訓練した臨時雇用者(学生を含む)とで2組平行して行い、例数を積む。データ解析には肥後も参加する。 タイと日本の糖尿病性末梢神経障害による痛みの国際比較:倫理審査委員会の承認を得て(タイと日本双方)、代表者の深井が所属する研究科と姉妹校がある東北タイの保健医療施設には多くの四肢痛のある糖尿病患者(近年のタイで急増)が通院している。そこで、我が国の同様の患者の痛みを夏期に計測・観察し、タイの患者の痛み(2015年3月を予定)と比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年度使用額が生じたのは、過去の科研費補助金で設置・継続して運営しているホームページ(疼痛ケアネットワークhttp://www.totucare.com)のデータ更新が年度内に終了しなかったためである。 ホームページのコンテンツは準備できているので平成26年度上半期の早いうちに更新し、年度中には26年度に得た新たな情報も掲載する予定である(ホームページの更新を2回実施予定)。 痛みの多次元的評価のために、平成26年度は昨年度購入のアクティブトレーサー(GMS)をもう1台購入するとともに、筋電計(追坂電子機器)2台を購入する。対象の生理指標と姿勢(動作)との関連を見るためにビデオカメラを設置してデータ収集場面の同時撮影も実施する。また、近年タイで急増している糖尿病の痛みを我が国のそれと比較する国際比較研究を遂行するため、3名のチーム(深井と通訳、訓練したアルバイト)で渡航する(2015年3月を予定)。
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