2016 Fiscal Year Annual Research Report
医療関連感染バーデン減少のための患者手指衛生推進戦略の構築
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25293438
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
岡田 淳子 県立広島大学, 保健福祉学部, 教授 (40353114)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深井 喜代子 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (70104809)
前田 ひとみ 熊本大学, その他の研究科, 教授 (90183607)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 環境表面 / 液相輸送用培地 / 菌保持能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
ふき取り法は特定の細菌による感染が多発もしくは検出頻度が急増した場合には,原因を特定するうえで必要不可欠な検査の一つである。ところが,同等の商品と判断していた異なる市販の液相輸送用培地で,検出菌の種類と集菌量に格差が生じた。市販の液相輸送用培地は,①培地成分,②表面をふき取るスワブの性状が若干異なり,輸送時間も影響することが考えられた。そこで,市販培地のAとBにおける菌の保持能力について,培地成分,保存時間およびスワブの違いをin vitro比較実験によって検討した。 提供株は臨床から分離されたグラム陽性球菌とグラム陰性桿菌の10種類とした。各菌株は3~7×10^5CFU/mL程度の濃度に菌液調整し,AとBの保存液を添加した。添加直後と,4℃で48時間冷蔵保存したそれぞれの保存液を培養し,生菌数を測定した。 48時間保存後の生菌数は,グラム陽性球菌はすべてにおいて増加がみられた。グラム陰性桿菌は, 2菌種で48時間後の生菌数が減少したものの,他の4菌種は増加した。培地成分による生菌数は,添加直後と48時間後とも5菌種でBのほうが多く,CNSとS.maltophiliaはAで生菌数が多かった。 異なる4種(A,B,C,D)のスワブ集菌量は調整した5種類の菌液5µLずつを設定した模擬環境(アクリル板,スチール板,ステンレス板)へ塗布し1時間乾燥させた。その後,模擬環境を隙間なくそれぞれのスワブでふき取り,ヒツジ血液寒天培地に接種し,48時間培養後,生菌数を測定した。生菌数はスワブBが最も多かった。 これらのことから,AとBの培地成分の保持能力はほぼ同等と考えられるが,輸送時間を要する場合は集菌率の高いBが適していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では医療環境におけるふき取り法による環境調査によって患者や看護師の手指から環境表面に伝播する状況を複数の施設をフィールドにして検討している。2施設を対象に細菌採取を実施したところ,施設間で菌種および収菌量にばらつきが大きく生じ,2施設の結果を比較できない事態が生じた。その要因は施設間差であると判断したが,異なる市販の液相輸送用培地で検体採取を実施したことによる可能性を否定できなかった。市販の液相輸送用培地はほぼ同等の商品と判断していたが,①培地成分,②表面をふき取るスワブの性状が若干異なり,輸送時間も影響することが考えられたが推測に留まっている。 本研究の目的を達成するためには,信頼性の高い菌種および菌量が検出できる液相輸送用培地を使用する必要がある。そこで,優れた菌保持能力を有する液相輸送用培地を決定する予備実験を行ったため,進捗が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の結果から,患者の手指や環境表面から看護師の手指に病原微生物が伝播する過程は,看護ケアに要する時間が長いほど患者や環境表面への接触回数は多くなり細菌を伝播しやすくなることが明らかになった。同時に,看護師が速乾性手指消毒剤を用いて適切に手指衛生を遵守すれば,看護師の手指付着した細菌は容易に除去することが可能になり,伝播される菌量も減少することができていた。しかしながら,看護師の手指衛生が徹底されても,患者自身に付着している細菌量は減少できないことから内因感染や,多床室の場合,患者間で伝播する可能性は否定できなかった。 そこで,患者の手指衛生が感染症発症率に影響を及ぼす可能性を確認するために,病原菌の存在を確認した病棟の患者を対象に,手指衛生を徹底的に実施する。そして,通常の看護ケアを実施した時期と患者の手指衛生を強化した時期で,検出菌・菌量と感染症発生率を比較する。その際,専従の感染管理認定看護師の協力を得て実施する。
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Causes of Carryover |
環境調査を実施するにあたり,平成28年度は市販の液相輸送用培地における菌の保持能力について,AとBの培地成分,保存時間,スワブをin vitro実験によって比較検討した。そのため,28年度実施予定であった計画を遂行できず,検査費用や人件費が予定通り拠出できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は平成28年実施予定であった患者の手指衛生を強化して感染症発症率について検討する。そのため,患者に手指衛生を実施してもらう介入補助者への報酬が必要になる。さらに,患者の手指衛生強化期間前後で,患者の手指汚染の程度を比較する。 方法は平成27年度同様に,看護師が患者にケア提供した前後の看護師の手指と,患者の手指および環境表面から検体採取を行うため検体検査に係る経費が必要となる。 そして,患者の手指衛生を重視してもらうために,ポスター掲示や研修会の開催などの啓蒙活動のために助成金を使用する。
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