2015 Fiscal Year Annual Research Report
長期療養施設における慢性痛ケアの質向上のための教育プログラム開発
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25293462
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 則子 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90280924)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高井 ゆかり 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00404921)
五十嵐 歩 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20595011)
阿部 吉樹 筑波大学, 医学医療系, 助教 (30630785)
齋藤 繁 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40251110)
鈴木 みずえ 浜松医科大学, 医学部, 教授 (40283361)
中山 和弘 聖路加国際大学, 看護学部, 教授 (50222170)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 長期療養施設 / ケアの質 / 質向上 / 痛みのケア |
Outline of Annual Research Achievements |
全国の医療療養病床を持つ病院の看護管理者・看護師・看護助手(介護士)を対象に、ケアの質(慢性痛のケア及びケアの質全般)と、労働価値観・ワークエンゲージメント・バーンアウトに関する調査を実施した。調査協力施設269施設から、257名の看護師長、3,279名の看護師、252名の看護助手(介護士)の回答を得た。看護師は痛みを持つ入院患者は全体の約3割と評価した一方で、介護士は半数以上の患者に痛みがあると評価した。慢性痛のケアに関しては、看護師は半数以上が痛みのアセスメントを実施していると回答したが、表現できない患者に対してもアセスメントするという回答は2割弱、疼痛の種類に応じたアセスメントを実施するというは1割強にとどまった。薬物の使用に関し、アセトアミノフェンを第一選択に検討すると回答した看護師は5割弱、NSAIDの服薬に際し副作用をアセスメントする看護師は4割弱にとどまった。ケアの質全般に関しては、保清や食事介助、合併症予防などに関するケアはできていると考えている回答割合が高かったが、レクリエーションや自立度の維持・回復に関するケアは出来ていると考えている回答割合が低かった。調査結果をもとに、長期ケアの質指標の作成を進めている。看護師のワークエンゲージメントやバーンアウトは労働価値観との関連が見られたが、価値観の内容(内的vs.外的労働価値等)により関連にばらつきがあった。療養病床のケアの質を向上し、合わせて看護師・介護士等ケアスタッフのワークエンゲージメントやQOLを高める働きかけの例として、ケアスタッフを対象とした事例検討会(退院カンファレンス)の試行を開始し、月に一づずつ実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目は長期療養施設におけるケアの質評価・改善に関する文献検討を中心に実施した。米国・英国で多くの研究が実施されている一方、日本ではほとんど実施されていないことが明らかになった。2年目はケアの質の現状とケアの質管理の現状に関するインタビュー及び海外における長期療養施設のケアの質管理に関する視察を行い、長期療養施設の制度変更とともにケアの労働量に困難を感じている看護師・介護士と、それを理解し支援しようとするリハビリスタッフや事務部門、管理部門の様子が明らかになった。海外での視察では、長期療養施設のケアの質に関するシステムの現状と、いずれの国でも高齢者の長期ケアに関し困難を経験している様子が窺われた。合わせて、日本のケアの現状との対比として、高齢者への共感性や丁寧なケアを提供する日本の長期療養施設のケアの質の高さが感じられた。3年目はケアの質及びケアスタッフのQOLに関する全国調査を行い、そこからケアプロセスの評価や質指標を開発し、その関連要因を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
全国調査の分析を更に進め、長期ケアの質指標を開発する。その指標とケアスタッフのQOLの関連を検討する。その上で、ケアの質改善のための試みを実施して評価する予定である。長期療養施設で労働量の多いケアスタッフに対しては、外部からの教育的介入による質改善を試みるよりも、日本人的な患者への共感力を涵養することを重視し、患者の置かれた状況や実施したケアの有効性を確認できる事例検討会を開催し、ケアの質をケアスタッフのQOLとともに高める支援プログラムとすることを企図している。
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Causes of Carryover |
データ入力のために人件費を確保していたが、調査に関して業者委託を利用し、「その他」の費目で計上した。この結果、予測よりも費用がかからなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の介入計画は、当初教育的プログラムを予定していたが事例検討会に変更の予定であり、この実施と評価のための費用が当初の予定よりもかかるため、その部分で使用したい。
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Research Products
(6 results)