2013 Fiscal Year Annual Research Report
密林に覆われた古代水利都市アンコール遺跡群の実像解明・保全・修復研究
Project/Area Number |
25300004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
原口 強 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70372852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 洋 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 部長 (50150066)
内田 悦生 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40185020)
下田 一太 筑波大学, 芸術系, 助教 (40386719)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アンコール遺跡群 / 古代水利都市 / 埋蔵遺構 / 洪水シミュレーション / 年代測定 |
Research Abstract |
本研究では、密林に覆われた古代水利都市アンコール遺跡群の実像を解明し、その保全・修復の提言を行うことを目的としている。本年度はライダー地形データを用いた赤色立体図による対象地域の解析を行った結果,熱帯雨林の深い森の下から未発見の無数の古代都市の遺構群を明瞭に映し出すことに成功した。この詳細な地形データをもとに,遺跡群の中心に位置する王都アンコール・トムから遺跡群全域にかけて埋蔵遺構調査,遺物・堆積物年代調査等を進めた。特に,アンコール遺跡群全域を網羅する水路・貯水池・寺院環濠等の水管理施設や溜池の復元に努めた。加えて,世界遺産である当遺跡群は毎年のように水害を被っており,取得した詳細現地形データによる洪水シミュレーションの予察的な検討も実施した。 王都アンコール・トムに関するフランス極東学院を中心とした研究の未公開資料を含む既往研究の収集と,それらの結果をGISデータ上に蓄積する作業を行った。微細地形をイメージングするため,赤色立体図の最適化を図り、赤色立体画像をナビゲーションマップとして現地踏査を行い,遺物の表採調査,地上への露出遺構,埋設遺構を示す起伏状態等を行った。既往の研究で記録されている都城内約200件の遺構を整理し,遺構に見られる建築・美術様式上の年代的特徴を整理する作業を実施した。さらに、特にこれまで調査が皆無であったアンコール・トムの環濠周縁部での実査も実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由は以下のとおり。 ①予定したフランス極東学院を中心とした研究の蓄積があり,未公開資料を含むそれらの既往研究の収集と,それらの結果をGISデータ上に蓄積する作業を進めたこと。 ②微細地形をイメージングするため,赤色立体図の最適化ができたこと。 ③赤色立体画像をナビゲーションマップとして現地踏査を行うことができたこと。 ④既往の研究では都城内に約200件の遺構が記録されているが,それらを整理したが,遺構に見られる建築・美術様式上の年代的特徴を整理が残っていること。 ⑤アンコール・トムの環濠周縁部での調査が皆無であったが,それらの地域での実査ができたこと。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年の成果を受け、今後は以下のように研究をすすめる。 古代都市全域の配置の復元:現地踏査により表採遺物の記録と分析,確認遺構の記録と目録化等を進める。地下探査による埋蔵遺構の検出、ボーリング調査と試料分析・年代測定・古環境復元を行い,古代都市全域の分析を行う。 遺跡群全体の遺構を網羅する造営尺度の完結:アンコール遺跡の寺院建築設計技法の研究から,当時の造営尺度412mmが推察され、この造営尺度の上位単位により,都市全域が寺院設計を包括して同一の設計計画の上に構築された可能性が窺われ,高精度GPSによる測位にもとづく研究がこれまでに試みられてきたが,遺跡群全体の遺構を網羅することができずにこうした研究は完結するに到っていないため、その完結を目指す。 都市施設築造の設計方法の研究:アンコール遺跡群は往時ヤショダラプラと呼ばれ,四次にわたる大きな改変・拡張があったものと推察,これらの改変により都市計画に修正が加えられた可能性も推察され都市施設築造の歴史考察を踏まえ,地形データにもとづき設計方法の研究に取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現地調査結果を踏まえた赤色立体図の詳細部分の作成等が今年度未消化であったため、次年度使用額が生じた。 次年度は現地調査に基づく赤色立体図の詳細部分の作成に、この費用を充填する計画とする。
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Research Products
(3 results)